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予算・販売価格・完成度は? パブリッシャーの採用傾向をアンケート調査しました!

デベロッパーやパブリッシャーの皆さん、こんにちは。
日頃より「ゲームクリエイターズCAMP」および「Game Pitch Base」をご利用いただきありがとうございます。

「Game Pitch Base」のベータ版が開始してから、もうすぐ一年となります。
嬉しいことに「パブリッシャーとマッチングできた」というご報告も徐々にいただけるようになってきました。しかし全体としては、まだまだマッチングの事例が多いとは言えない状況です。

今年から不定期開催しております「CAMPなんでも相談会」は、パブリッシャーとのマッチングを目指す方もよくいらっしゃるのですが、以下のようなご質問をよくいただきます。

  • どのくらいの完成度でパブリッシャーに見せれば良い?

  • 販売価格はどのくらいが良い?

  • この予算で出資してくれるパブリッシャーはいる?

一方でパブリッシャーの方からは、以下のようなお話もよく聞かれます。

  • パブリッシングの相談をいただいても、まだ判断可能な段階まで制作が進んでいないことが多い。

  • 収益を考えると、価格は最低でも◯◯円くらいにする必要がある。

  • 予算が◯◯円くらいの規模じゃないと投資しづらい。

ゲームの内容が良くても、上記のような観点で支援しづらいケースは多々ありますが、パブリッシャーの方と話す機会がないと、なかなか見えづらいものだと思います。

そこで今回は、「Game Pitch Base」および「GPB: Connect@BitSummit」にご参加いただいたパブリッシャーの皆さまにご協力いただき、アンケート調査を行いました。
デベロッパーの皆さまがマッチングを目指される上での参考に、そしてパブリッシャーの皆さまにおかれましては、業界研究の糧にしていただければ幸いです。


本アンケートの集計方法

本アンケートは、「Game Pitch Base」および「GPB: Connect@BitSummit」にご参加いただいたパブリッシャーの方を対象に、匿名で行いました。

なるべく回答にかかるお手間を減らすため、設問や選択肢は、正確な数値を把握されていなくても大まかな感覚値で回答できる形を取っています。

全体としては8名の方からご回答いただくことができました。
回答数としては少なく感じるかもしれませんが、担当されてきたタイトル数で見ると100本以上になるため、ある程度は実績を伴ったデータと言えるのではないかと思います。

パブリッシングしたタイトル数は?

まず最初に、過去にパブリッシングを担当されたタイトル数を伺いました。これは会社全体ではなく、回答者個人が担当された数となっております。
また契約を締結していれば、回答時点で未発売のタイトルも含まれます。

結果を見ると、「まだ5本未満」という方が3名で最多でした。
一方で「50本以上100本未満」と、かなりの数を担当されてきた方も1名いらっしゃいました。

契約締結時点での完成度は?

続いて、パブリッシング契約を締結した時点で、それらのタイトルの制作がどこまで進んでいたかを伺いました。

制作進度は以下の6フェーズに分類しています。

①:アイデアだけがある
②:企画書やピッチデッキといった資料だけがある
③:プロトタイプや短い試遊版が遊べる
④:アルファ版(バーティカルスライス)が遊べる
⑤:ベータ版が遊べる
⑥:完成版が遊べる

※開発フェーズに関する補足
「アルファ版」「バーティカルスライス」とは、製品版と同じクオリティで、ゲームの主要パートの一部(1ステージなど)が遊べる状態を指します。
「ベータ版」とは、主要な機能やコンテンツのほとんどが製品版と同じクオリティで実装されており、あとはバグ取りなどのブラッシュアップを残すのみという状態を指します。

それぞれのフェーズに対して、契約を締結したタイトルがどの程度あったかを以下5段階から選択していただきました。まずは各段階にポイント付けして集計してみます。

  • ほぼない:0ポイント

  • 少しある:1ポイント

  • 半分くらい:2ポイント

  • わりと多い:3ポイント

  • ほとんど:4ポイント

上記のポイントでは、「回答者が何本のタイトルをリリースしたのか」を考慮していないため、今度は各フェーズに該当するタイトル数を概算します。
今回は、各回答者の担当タイトルを最低値(例えば「50本以上100本未満」なら50本)で考え、そこに以下の値を乗算して算出しました。

  • ほぼない:0

  • 少しある:1/4

  • 半分くらい:2/4

  • わりと多い:3/4

  • ほとんど:4/4

いずれの結果からも、まず「プレイアブルなビルドが無い状態で契約した例は少ない」ということがわかります。
タイトル数で見た場合はさらに顕著で、「アルファ版(バーティカルスライス)以降まで制作が進んでいたケースがほとんど」と言えます。

個人や少人数の制作に限らず、ゲーム制作の現場全般において、ゲームが完成せずにプロジェクトが終わってしまうケースは多く存在します。
「そのプロジェクトは完遂可能なのか?」を判断するためには、やはりゲームの主要部分が製品版のクオリティで動いているところを見る必要がある、ということなのだと思われます。

販売価格は?

続いて、担当タイトルの販売価格について伺いました。

価格を以下6つの価格帯に分け、それぞれに該当するタイトル数を、さきほどの「契約時点での完成度」に関する設問と同様の手法で選択してもらいました。

①:0 ≦ n < 500 [円]
②:500 ≦ n < 1,000 [円]
③:1,500 ≦ n < 2,000 [円]
④:2,000 ≦ n < 2,500 [円]
⑤:2,500 ≦ n < 3,000 [円]
⑥:3,000 ≦ n [円]

※「1,000 ≦ n < 1,500 [円]」の範囲が抜けているのは、アンケート作成時からのミスです。申し訳ございません。

まずは、各回答者の担当タイトル数を考慮せずにポイント付けした場合の結果を示します。

続いて、該当するタイトル数を概算した結果を示します。

販売価格については、タイトル数で見ると「高価格帯ほど多い」という特徴が顕著に現れており、1,000円未満のタイトルは少なめになっています。
担当タイトル数を考慮しないポイントで見ても高価格帯がやや多いですが、それほど顕著ではありません。

タイトル数で見た場合、担当タイトルが多い回答者のデータが大きく影響しますので、「タイトルが多い老舗パブリッシャーは、高価格帯での販売を見込めるゲームをより多く採用している」とも言えます。
低価格帯のゲームでパブリッシャーを見つけるのはやや難しそうですが、まだ担当タイトルが少ない新しめのパブリッシャーをあたってみると、可能性は高まるかもしれません。

出資した開発費は?

続いて、出資した開発費を伺いました。

金額を以下6つの価格帯に分け、それぞれに該当するタイトル数をこれまで同様に選択してもらいました。

①:0 [円]
②:0 < n < 500 [万円]
③:500 ≦ n < 1,000 [万円]
④:1,000 ≦ n < 2,000 [万円]
⑤:2,000 ≦ n < 5,000 [万円]
⑥:5,000 ≦ n [万円]

まずは、各回答者の担当タイトル数を考慮せずにポイント付けした場合の結果を示します。

続いて、該当するタイトル数を概算した結果を示します。

傾向を見ると、2,000万円以上の出資は大分少なくなっていますが、2,000万円未満であれば出資を受けているケースは割とあるようです。

タイトル数で見ると、最多は「500万円以上1,000万円未満」となっており、まったく出資しない「0円」を上回る結果となりました。
販売価格のデータと合わせると、「タイトルが多い老舗パブリッシャーは、高価格帯での販売が見込めるゲームに資金出資するケースが多い」とも考えられます。

販売以外の担当業務は?

最後に、販売以外で担当した業務を伺いました。

業務を以下の6つに分け、それぞれを行ったタイトル数をこれまで同様に選択してもらいました。

①:宣伝・マーケティング
②:ローカライズ・LQA
③:デバッグ・QA
④:プラットフォーム移植
⑤:不足人員の斡旋
⑥:ゲーム内容に関する助言・要望

まずは、各回答者の担当タイトル数を考慮せずにポイント付けした場合の結果を示します。

続いて、該当するタイトル数を概算した結果を示します。

特筆すべき点として「不足人員の斡旋」を行う例は少数になっています。
これは前述の「契約時点で、それなりの完成度が求められる」という結果からも想像できます。そもそも制作のための人員を探している段階であれば、プロジェクトを完遂できる確証を得にくいため、なかなか契約の判断がしづらいものと考えられます。

また「プラットフォーム移植」を行う例も、あまり多くは見られません。
移植作業には、ゲームエンジンなどを扱える開発人員が必要になりますが、パブリッシャーの多くは自社開発を行っていないため、開発人員がいないことが要因かと思われます。
ただし開発人員を抱えていないパブリッシャーでも、外部の開発会社と連携して移植を行うことはありますので、要望を出すことは可能です。

まとめ

今回の調査結果から、以下のようなことがわかりました。

  • プレイアブルなビルドが無い状態で契約した例は少なく、バーティカルスライス以降まで制作が進んでいたケースが多い。

  • 高価格帯での販売が見込めるゲームほど、採用例が多く、開発費が出資されるケースも多い(特に老舗パブリッシャーにおいて顕著)。

  • 制作チームの不足人員をパブリッシャーが斡旋するケースは少ない。

  • プラットフォーム移植をパブリッシャーが担うケースも、それほど多くはない。

皆さんが制作中のゲームについて「パブリッシャーを付けるのに向いているか」を判断される際の一助にしていただければ幸いです。