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【クリエイターインタビュー】スタイリッシュなグラフィックが魅力の『ONI - 空と風の哀歌』の最新情報を聞いてみた
桃から生まれた赤ちゃんが旅の仲間を募って鬼退治クエストをスタートする「桃太郎」。誰もが知る超定番のおとぎ話ですけど、成敗される側の“鬼”については謎が多め。
そんな鬼をフィーチャーしてしまったのが、集英社ゲームクリエイターズCAMPが支援する3Dアクションゲーム『ONI - 空と風の哀歌』だ。
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今回は『ONI - 空と風の哀歌』を制作するKENEI DESIGNの代表でありディレクターの葉山賢英さんと、集英社ゲームズのプロデューサー、山本正美氏に、『ONI - 空と風の哀歌』の推しポイントから進捗情報までみっちり聞いてみます!
――まず、桃太郎をテーマにした理由とは?
葉山
ゲームってどうしても“洋風ファンタジー”というスタイルが多いですが、ボクは和風をテーマにした作品をずっと作りたいと思っていました。
桃太郎は最近でもCMでモチーフにされ、なにより日本人にとって一番身近なおとぎ話です。
そんな桃太郎をテーマにして、和風だけどスタイリッシュな作品を作りたいと思ったのが、『ONI - 空と風の哀歌』のプロジェクトを開始したきっかけです。
――本家の桃太郎のストーリー的に葉山さんが気になっていた部分とは?
葉山
鬼に対しての扱いが、もの凄くざっくりしていること。【悪い鬼がいるから退治する】という(笑)。
どうして鬼は悪さをするのか? といった基本的な部分から鬼側の世界観を構築してみたくなったのです。
なので『ONI - 空と風の哀歌』で描かれるストーリーは、桃太郎に一回成敗された鬼の空太が鬼世島に逃れる。そこで出会った風丸を相棒に修行を重ね、桃太郎へ再戦を挑む物語となります。
――まさかの鬼側によるリベンジストーリー! しかし、そのハードなストーリーを感じさせない、空太や風丸といったスタイリッシュなキャラクターたちが印象的。そんなキャラクターたちが生息する鬼世島で展開される「スモールワールド・3Dアクション」とは?
山本
近年のAAAタイトルは“自由度の高い広大なマップ”をウリにすることが多いですが、プレイヤー的にはその広大なマップのすべてを体験し切ることは難しいと思うんです。
その一方、『ONI - 空と風の哀歌』で葉山君が表現したかった世界観はコンパクトで、隅々まで想いがこもっている。これによりグラフィック、サウンド、そしてアクションをあますところなく楽しめるゲームに仕上げたいと思っています。
――ティザー動画では、空太と風丸を同時に操作されていますが、このアクション部分はどうなっているんですか?
山本
空太と風丸はふたつのスティックで同時に操作します。敵の「肉体」に対する攻撃を空太が担当し、敵の「心玉」を抜き出す攻撃は風丸が担当することになります。肉体と心の両方を破壊しないと敵を倒せません。
攻撃の一例をあげると、左スティックで空太を操作しながら敵を打撃しつつ、同時に右スティックで風丸を操作し、別の敵の心玉を抜き出す…といった感じです。
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また、「幽体離脱」という技を使い、敵と距離を取りながら背後にまわりこんで敵を討つ、というようなアクションも可能です。
――ティザー動画をチェックしますと、キャラクターの切り替えもがシームレス、かつ攻撃のバリエーションが豊富。同時操作によって爽快感が倍増! さらに、ふたりのキャラクターがいることで操作が複雑にならず、むしろユニークなゲーム性を際立たせていますよね。
山本
はい。例えば、コンボを出すのも簡単です。必殺技を使って複数の敵を連続で攻撃し、出現した複数の心玉を連続吸収することで「心通連撃」というコンボ技が発動します。
――これも爽快感が高め、しかも簡単コンボだし!
山本
『ONI - 空と風の哀歌』には、まずスタイリッシュなグラフィックの魅力があり、それをお子さんや女性といった、それほどアクションゲームが得意ではないプレイヤーにも遊んでほしいという想いがあります。なので、コンボなどは簡単に出せて、誰でも爽快感を楽しめるようにしています。
ボス戦や味方キャラクターを守るミッションであったり、完全トップビューのステージなども要素として入っています。
――アクションゲームとしての新要素が全部入りの『ONI - 空と風の哀歌』。そんなゲームを制作する、おふたりが出会ったきっかけとは?
山本
もともと僕がソニー・インタラクティブエンタテインメントでプロデューサーだったときに、クリエイターのオーディション企画「PlayStation C.A.M.P!」を開催して、そのときの合格者が葉山君でした。
アートワークのセンスが高く、一緒にゲームを作りたい仲間として満場一致の合格だったのですが、数本のプロジェクトを経たのちPlayStation C.A.M.P!は解散し、葉山君は別の道に進むこととなりました。
葉山
それが10年ぐらい前の話ですよね。そして僕はミストウォーカーでRPGを作っていたんですが、そこを退社してアクションゲームをやりたい!と思ったのが3年前。そこで山本さんに声をかけました。それが『ONI - 空と風の哀歌』です。
山本
葉山君が『ONI - 空と風の哀歌』のキャラクターや画面写真をTwitterにアップしていたのはチェックしていて、また面白そうなモノを作っているなと思っていました。なので声をかけてくれたとき、「だったら僕も手伝わせてよ」となったんです。
その一方で、のちに集英社ゲームズの執行役員となるである森通治からも『ONI - 空と風の哀歌』のことは聞いていて、不思議な縁もあり最終的には僕も集英社ゲームズのプロデューサーになる、と。「結局、『ONI - 空と風の哀歌』から逃げられない運命なのかな」と思いましたね。
――ずっとRPGを制作してきた葉山さんが、アクションを作りたい!と思った理由は?
葉山
RPGって物量から人員までめちゃくちゃ大変なんです。正直、小規模開発で制作するのは難しい。そんな理由でアクションをやろうとしたけど、僕にはアクションのノウハウがありませんでした。
アクションゲームって奥が深く、キャラクターの触り心地、ボタンを押したときのキャラクターが動くタイミングなど、細かい調整が大事だし、それがとても難しく、アドバイスしてくれる人が必要でした。
山本
そこで、もともと僕の同僚だった菅野有造さんを紹介しました。僕がプロデューサー的な役割、菅野さんにはゲームデザインの部分を担ってもらっています。菅野さんは『サルゲッチュ』シリーズにも関わっていた方なので、アクションの勘所をすべて抑えている人材です。
最初に、僕と葉山君と菅野さんの3人で会って、『ONI - 空と風の哀歌』のアートを見た瞬間「これはイケる!」と。インディーゲームでは“まず画で一本取る!”が必須です。すでに一本は取れていますから、後は僕と菅野さんでアクションを煮詰めれば勝てる!と思いました。それほど『ONI - 空と風の哀歌』のアートにはインパクトがありました。
そしてふたつのスティックで同時に操作するというユニークなアクションも完成しました。これは僕と菅野さんが入ったおかげです。あ、自分で褒めちゃいました(笑)。
――葉山さんのアートと、山本さんが自画自賛するアクションのシステム。そして、もうひとつ『ONI - 空と風の哀歌』で気になる要素がサウンドです。特に戦闘シーンでもヴォーカルが入るのが印象的ですけど?
葉山
映画だとシーンを盛り上げるためにヴォーカル曲が入るのは普通です。でも、ゲームではそれがあまりなくって、あえてそうしました。移動シーンでもエリアをまたぐごとにサウンドが変化し、場を盛り上げる演出を心がけました。
――でも、和風テイストのグラフィックなのに、ジャジーだったりエレクトロだったりと、良い意味でのギャップがありますよね。
葉山
そこはすべて自分で決められるので、とにかく自分の好きな音楽を詰め込もうと! なので、どんどん音楽の発注数が増えてしまいました(笑)。
僕、Apple MusicやTwitterで気になった曲があると、すぐ声をかけるんです。でも、もう事務所に所属しているミュージシャンの方もいて、残念ながらお断りされることも多かったです。
――これは『ONI - 空と風の哀歌』サントラにも期待ですね!
――ところで、山本さんから見て、葉山さんの凄いところとは?
山本
アート、サウンドのセンスも凄いんですが、人材集めの能力が突出していると思います。とにかく優秀な人を見つけるのが上手い。葉山君から選ばれた僕が言っちゃうのもアレですけど(笑)。
ゲーム開発は期間が長いこともあって、人間関係でモメることも多いですが、葉山君の選球眼で選ばれた人たちはすごく前向きな方が多くて、その心配がありません。メインのエンジニアやモーション担当も葉山君がセレクトして、できる人ばかり。
――で、実際に葉山さんはどうやって人を揃えるんですか?
葉山
まず、技術的な部分はTwitterで作品を確認します。そして人間性です。これはTwitterを過去までさかのぼってチェックします。ここで、けっこうな毒を吐いている人だったりすると「これは、ちょっとなー」と(笑)。
Twitterで毒がないと、ほぼ実際に会っても人間性は大丈夫です。
――これは絶対に敵に回したくないタイプ! そうやって集めた人材は、具体的にどんな部分が優秀なんですか?
葉山
僕が望むことをなんでもやってくれる。会社に勤めていたときは、何か頼むときに僕が気を使うことが多かった。でも、今回のメンバーはそういったことがまったくありません。嫌な態度もなく、僕のイメージした以上のことやってくれる。
山本
それこそ、集英社ゲームクリエイターズCAMPの人材募集機能が発足当初から実装されていれば、葉山君は大活用していたと思いますよ(笑)。
――葉山さん、そして葉山さんから選ばれし者である山本さん。おふたりのお仕事上での関係性はどうなっているんですか?
山本
アート、サウンド面に関しては僕が口を出すことはありません。葉山君のスタイルを貫くのが正しいと思っていますから。
特に葉山君のグラフィックって猛烈に好きな人がいる一方、極端に嫌う人がいない。これを達成できるのって、稀有な存在なんですよ。なので、葉山君の意見を最優先し、プロジェクトを進行しています。
葉山
そう言っていただけるのは、ありがたいです。でも、やっぱり制作を続けていると、僕自身が迷って決めかねる要素もあります。そんな時は山本さんや菅野さんに相談すると、しっかりとアイデアが膨らむ。
例えば、僕には「岩を浮かべたい!」「森の中に池が欲しい!」といったビジュアル的なイメージしかない。それを山本さんたちに相談すると、「だったら、そこでボスと戦ったらどう?」と、ゲーム性としての理由をきちっと見出してくれる。
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山本
いやー。僕、良い仕事しているよね(笑)。でも、葉山君は頑固なところがあって、あんま乗れないアイデアは優しく笑ってスルーするんですよ。「あー。これ、ぜんぜん刺さってないやー」と(笑)。
でも、ハマったアイデアは表情が一変して「良いですね、それ!」と盛り上がってくれる。このはっきりしている部分が、一緒に仕事していて気持ちいいです。
葉山
僕としては、山本さんや菅野さんとアイデアを煮詰めていて楽しいですよ。それがなによりです。
――例えば、何か新アイデアが浮かんだ場合は、お互いでどう伝えあったりするんですか?
葉山
基本的にはデザインとかひらめいたら、画にして定例会議のときに伝えますね。喋って伝えるのが苦手なんです(笑)。
山本
僕はなんでもパワポにしないと伝えられない人なんです(笑)。プレゼン向けの資料も、ベースは僕が作って葉山君にリファインしてもらったりしています。
葉山
思えば、PlayStation C.A.M.P!で企画書を作っていたときは、それを山本さんにチェックしてもらっていましたよね。
――では最後に、『ONI - 空と風の哀歌』への期待が高まっているユーザーさんに向けて、お願いします!
葉山
ビジュアルはもちろん、アクションやサウンドなどなど。今までになかったアイデアが詰まっています。新しいゲーム体験が必ずできるタイトルです!
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山本
本当に小規模のメンバーで作っていて、日々稼働している人数でいえば、葉山君、エンジニア、モーションデザイナーと、菅野さん、山本の5名で実質動いています。ですが、それを感じさせないクオリティーになっていると思います。この『ONI - 空と風の哀歌』を見てくれた若いクリエイターさんが、「5人でもこんなゲームが作れるんだ!」と、『ONI - 空と風の哀歌』の後に続く素敵なゲームを生み出してくれることを期待したいですね。
――愛すべき小さな世界の3Dアクションゲーム、『ONI - 空と風の哀歌』今後の新要素発表にも大期待ですよ!