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薪割り!
しらべ荘は薪ストーブを中心にデザインした。オシャレを洒落込んだ訳ではない。標高1,150mの冬はFFとかオール電化とか床暖房とか、そういう暖房では歯が立たないのである。北米やカナダ製の薪ストーブは巧みな構造で圧倒的なパワーを持っている。
またコスト面を検討した結果でもある。
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これである。近くにサントリーの白州工場があって、ウィスキーの樽の蓋を廃棄物として二足三文で売ってくれた。レンタカーの2tトラックを借りて行っても十分に元が取れた。蓋をバラした薪は固く重く、点火してストーブのダンパーを閉じるとトロトロと数時間燃え続ける。うってつけの廃材であった。
ところがあてが外れた。ガーデニングブームが来てウイスキーの樽は看板や柵、鉢植えや細工物として人気となり、値段が10倍くらいになった。やがて直接業者に卸されるようになり一般に売られることすらなくなってしまった。さらにそこに昨今の薪ストーブブームである。樽ばかりか普通の薪の値段も跳ね上がり、石油や電気とランニングコストで変わらなくなってしまった。
だから今ここに残っているのは30年前のウイスキー樽蓋である。材はミズナラ。欧米で使われるホワイトオークに代えて黎明期のサントリーが国産の樹木から調達したそうだ。好みにもよるが日本製のウィスキーは舶来よりもずっと森の香りが芳しい。そしてどういう職人芸であろうか、30年を経ても蓋には一滴の水すら通る隙間はない。さらに驚くことには、平均15cm幅の材が並行に継がれているがそれを留めているのは、直径1cm弱の円柱形をした木釘である。釘穴と木釘は位置もサイズもピタリと合っている。薪にするためにバラすときは、強く丸太の角に継ぎ目をぶつけたり、槌を振るったりすれば木釘がポキリと折れて外れる。
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踏み板などに使って雨曝しになっていた樽はアリにやられたり腐食したりしているので焼却炉に入れて燃やそうとした。だが他の廃材が白い灰になってしまっても樽は燃え残ってしまう。
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仕方ないので丁寧に腐食部分やアリの巣を除去して水洗い、さらに天日干しで消毒し、薪の戦列に加えることにした。
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かかりきりではないので、そう…100枚ほども残っていた樽を全て割って薪小屋に積むのに春から初夏までを要した。現在、しらべ荘の暖房は大型FF1台と3台の石油ファンヒーター、エアコン2台、小型電気ストーブ2台、カセットガスストーブ1台、そしてエースに薪ストーブという布陣である。本当に寒さが厳しい夜にだけ夕方から薪ストーブに火を入れる。それほどの使い方だとしてもこの薪の量では今シーズン中に使い果たすだろう。
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ストーブに使う薪は割ってもすぐには使えない。樹液で湿っているため点火しにくいばかりか煤が多くなってストーブや煙突を傷めてしまうからだ。来シーズンの分を1年前に割る必要がある。秋になってとりあえず試しにウチにある丸太を割ってみることにした。もらった広葉樹の丸太と庭で伐採した白樺である。白樺を割るのはわけないことだが軽くてすぐに燃え尽きてしまって薪としてはあまり役立たない。
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そうこうするうちに早くもストーブ屋さんが今シーズンのメンテナンスに来た。我が家のエースはアンコール。アメリカバーモント州で製造され、30年前に世界中で大ヒットした人気の型である。メンテナンスできる業者は限られる。9月末のこと。東京あたりではまだ猛暑の中であったが、山ではこうして冬支度が始まる。
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ストーブと煙突の清掃、整備費用は国産の石油ファンヒーターが1台買えるほどの金額である。これはいよいよ薪ストーブを使わないわけにはいかない。
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大上段に斧を振り上げること剣豪の如し。あまり知られてはいないが中学から高校まで剣道部だったボクは二段持ち。一回戦敗退ながら中3時には渋谷区大会に大将として出場経験がある。
たとえ筋力は衰えようとも太刀筋というものがある。えいや!と渾身の一刀を丸太に振り下ろしたが刃は2cmほどしか入らない。そればかりか簡単には抜けない。ままよと斧が刺さったままの丸太ごと宙に舞い上げ、台に叩きつけること10振り。気合いをためてモーションから振り下ろし、衝撃に耐えて、休息数分…のローテーションで30分はゆうにかかる。足が絡れ、もんどりうって大地に大の字、ふと見上げた丸太に原因を発見した。
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何だ、固い節に食い込んで割れなかったのか。木槌で一旦刃を外した。45度回転した向きに再び斧を振り下ろし、そのまま振り上げずにトントンと刃を進めるとスカッと丸太は真っ二つになった。しかし元剣豪をもってしてもこの調子である。2日に1個がやっとのペースだろう。
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だがもちろん対策に漏れはない!!
マナとユータくんが子どもたちを連れて紅葉狩りに来るのだ。春にも来た。そしてもらったまま森に放置してあった丸太を夫婦で全部運んでくれた。2時間ほどでボクの2日分の仕事をこなす。まばゆいほどの若さとパワーである。
LINEのやり取り↓
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やる気満々。助かるなあ。
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ん?どうした?
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え!えー!?
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ちゃりちゃーん( ̄▽ ̄;)
当てが外れた。どうしよう。
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11月になってウチの木を2本伐採することになった。強風や着雪で家に倒れるおそれのあるハンノキとアカマツである。業界では「サル」と異名を取る専門家がスルスルと木に登り上の方から伐っていく。「落とし伐り」という方法だそうだ。
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玉切り(丸太に切り分けること)はサービス。
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強力な電鋸で、薪にできる長さに切ってくれる。
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ハンノキの未体験の太さ。そして助っ人のあてはなし。
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そこへその倍も太いアカマツも落とし伐りされた。
ど、どーするシュウ( ̄▽ ̄;)
だいたい、しらべ荘に顔を出すのはマナとリリ、リョーコだけ。調子のいいこと言ってたチャラTやユースケは何をしているのか。とんと連絡すらよこさない。バカモン!…た、助けてくれない?