日進月歩 ~Road to MBA~#136
2021/6/25:デザイン経営④
金曜日は、公益財団法人日本デザイン振興会の寄付講座であり、新しい経営といわれている「デザイン経営」を職員でもあります秋元氏から学ばせていただいており、4回目の講義です(前講義#131)。
本講義は、ゲストスピーカーとして株式会社アイシン(野々山氏)とNPO法人おてらおやつクラブ(福井氏)をお招きし、講演をいただきました。
■株式会社アイシン(野々山茂男さん)
健康増進のための乗り合い送迎サービス「チョイソコ」についてお話をいただきました。当時の社長メッセージの中で、「新しい価値を提案できる会社になる」という想いを目指している中で、ライドシェアビジネスにフォーカスして企画検討を始めたのがきっかけでした。当初は、介護領域において施設送迎を提供してターゲットしていましたが、実際に取組みをしてみて分かる大きなハードルがあったため、中止をせざる負えなかったようです。
・非健常者の安全性担保が難しい(乗降補助等、ひとりひとり異なる)
・介護保険制度の基でビジネス性が見えにくい
・高齢者や家族に利便性や嬉しさなどが伝わりにくく、さらに感じにくい
実証をもとに発想を転換し、「乗る人」からお金をもらうビジネスモデルではなく「降りる場所」からお金を生み出すビジネスモデルを考え、地域の商業施設などと提携するライドシェアを企画したことが始まりとなる。移動というものに特化した地域密着型のエコシステム(乗り合い送迎サービス)の提供を目指し、自治体や薬局(スギ薬局HD)と連携しながら実証における試験運転を重ねながらサービス提供まで実施していた。
このように実証実験をすることによって、ブランディングやマーケティングも兼ねていることから、サービスを提供しながらブラッシュアップすることが可能となる。また、変更される法対応や連携企業との共通目的を確認しながら、サービス提供までを進めることができる仕組み(循環)を”デザイン”している事例となる。
実証実験を通じて事業性・安全性・ビジネスモデルの妥当性を検証することができ、今後はエリアや提携先を増やして事業拡大を目指していくとのことである。地域課題を解決したい(理想的な社会にしたい)という目的を可視化し、そこに連携企業が加わったことで実証を可能とし、実証を通してブラッシュアップをしている事例であるとご講演いただいた。
■NPO法人おてらおやつクラブ(福井 良應さん)
「貧困」という切実な社会課題を解決するための仕組みとして、新しい福祉支援のオペレーションを実現した事例となっている。余ったものを「貧困」の方々に届く仕組みを構築しており、子供たちに食事を与えるために親が食事を制限することを止めさせたい背景がある(過去の事件など)。
このような社会課題をどうにか解決できないか、民間での就業経験やMBAなどの経験を活かせないか。コンビニより数が多い寺院(コンビニ数:約55,000、寺院数:約77,000)を社会のインフラとして活用できないか、また、寺院のように昔から地域の人々が支えあっているコミュニティを活かした上で、課題解決に向けたデザインを思考したのがきっかけとなる。
こどもの「貧困」という問題の解決を目指し、寺院への「おそなえもの」を経済的に困難な家庭へお裾分けする活動をビジネスモデルとし、ユニークな取り組みをしている。貧困問題は複雑に要因が絡んでおり、解決の難しい社会問題に対しての継続できる仕組みとして、寺院は後方支援に回ることで保っている。お寺に「ある」ものを社会へ提供しているのである。
この事例での特徴としてもう一つあげられるのは、寺院とは「僧侶による慈悲の活動をする」という概念から、「非営利組織としてのソーシャルデザイン活動を実施する」ことへの概念を変えるという取組みである。地域の皆様にも共感いただくよう”デザイン”されており、活動の意義だけでなく、既存の組織・人・もの・習慣をつなぎ直して機能させるように”デザイン”されていることが特徴であり、評価されている。
寄付や寄贈にて活動を広まって認知が広がっていった経緯から、認定NPO法人にすることで自治体と連携が可能(寺と自治体の連携は困難:政教分離の前提)にもなり、コロナ禍においても支援してほしい人から直接問い合わせ(ニーズの集約)をいただけるまでに至った。「利他主義」の文化からアプローチし、人と人との関わりにおいて「デザイン(社会を良くする)」をした事例としてご講演いただいた。
■この事例に関わる”デザイン経営”のポイント
どちらのプロジェクトにおいても、理想指向型の事業における「実証」の意義と、それによる「可視化」について、”デザイン”を活用して仕組み化している事例だと感じています。既に存在するデータや手法を前提にするのではなく、それらは目標達成に向けた基礎情報として活用し、あくまでも「実証」を重視するデザインをとっているのも特徴としてあげられます。
◉事例:株式会社アイシン
-仮説の構築:「四方良し」の発想
-実証:自治体やスギ薬局との連携(連携が実証に効果的)
-可視化:社会の課題・制約・障壁などの存在を可視化(定性の定量化)
◉事例:NPO法人おてらおやつクラブ
-仮説の構築:お寺の『ある』と社会の『ない』を結びつけたい
-実証:福祉団体や賛同企業との連携(連携が実証に効果的)
-可視化:社会の課題・制約・障壁などの存在を可視化(定性の定量化)
また、事例における特徴の1つでもあるのは、複数の異なるメンバーにおいて共通の課題意識や目的意識を保ちながら、それぞれの役割を適切に果たしていく仕組みが構築できている部分である。デザインのプロセス「構想⇒リサーチ⇒プロトタイピング⇒フィードバック」を取り入れることで、ユーザーの実態をリアルに把握できるとともに、可視化によってメンバー間にある種の「共通言語」を形成できるという意味においても、デザイン思考を活用した経営は効果的と言える、それを気づかせてくれる事例であると認識することができました。
平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】春日井JFC/FC.FERVOR/中京大中京高校/駒澤大学/横河武蔵野FC(JFL)/エリースFC東京(関東)/ラスタサッカーファミリー(埼玉)
※U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合(通算115試合1得点)
※https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%B2%A9%E5%AE%97
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?