日進月歩 ~Road to MBA~#131
2021/6/18:デザイン経営③
金曜日は、公益財団法人日本デザイン振興会の寄付講座であり、新しい経営といわれている「デザイン経営」を職員でもあります秋元氏から学ばせていただいており、3回目の講義です(前講義#126)。
本講義は、ゲストスピーカーとして株式会社グランドレベル(田中氏)と株式会社HAGI STUDIO(宮崎氏)をお招きし、講演をいただきました。
■デザイン経営が志向する3つのデザインとポイント
#121のnoteの再掲となりますが、「デザイン経営」という新しい経営の概念は、①エコシステムの構築(人を重視する姿勢)、②イノベーションの誕生(創造手的なアプローチ)、③ブランディングの達成(ぶれない企業姿勢)を軸として結実したものと考えられる。これからの講義は、ゲストスピーカーの講演を基に、事業を実践する上でどう”デザイン”が活用されているかを中心に紐解き、どう経営に活かされるのかを考えていこうと思う。
■株式会社グランドレベル(田中元子さん)
自身の様々な活動を通じて「私設公民館が必要である」と構想し、それによって達成される目的(個々人がそれぞれの”個性”を発揮できること)の実現に向けて「喫茶ランドリー」を開設した事例だと感じている。また、trial and errorを繰り返してブラッシュアップを進めている手法が、デザイン思考として提唱されるプロセスに相当していることを認識した。
事例(デンマークのオーフス)のような「ひとの姿が見えるまち」の世界観を目指して、物理的な環境で豊かなふるまいを誘発させ、人が能動性をもって発露することのできる私設公民館(ポートランド「Landoromat CaFe」の世界観)をスタートさせた。
※「喫茶ランドリー」で自由且つ多様なことを許容できる環境を整備
このように環境を整備して実施していることは、➀SOFTWARE(機能・サービス)、②HARDWRE(空間・環境、視覚・体験)、③ORGWARE(コミュニケーション・組織化)をつなぐ”補助線のデザイン”である。どのような”デザイン”をしていく必要があるのか、その考え方について「マハラジャのディスコ」における世界観から学ばせていただいた(どう個を活かすか)。
【例(世界観)】マハラジャのディスコ
⇒雰囲気は、最初に踊る「踊り子」で決まってしまう
※マハラジャ(ディスコ)は、踊り子が踊って初めて成立する
※踊りはださすぎても、かっこよすぎてもだめ(踊れる対象を制限する)
誰もが”個”として能動的に活動できる環境を、どう”デザイン”していけるか、それをどう日常に組み込んで普遍的なものにしていけるかが重要なポイントとなる。プライベートとパブリックの交差点である「グランドレベル」を活用してどう構築していくのか、地域×コミュニティというのに興味がある私にとってとても興味深い要素が含まれておりました。
また、企業名にもある「グランドレベル」の世界観(漠然としている構想)を、対象となる人々に対してどう見える化して伝えていくことができるのか(「喫茶ランドリー」という場を通して)、事業の充実と目的の達成に向けてどう”デザイン”して効果を出すことができるのか、についてヒントを学ばせていただいた講演でした。
※事例:マックスバリュおゆみ野店軒先リニューアル
※事例:TOKYO BENCH PROJECT
■株式会社HAGI STUDIO(宮崎晃吉さん)
偶然という世界観を大切にし、それを必然という計画に組み込んで”デザイン”している。さらに「空き家」という社会課題に対して、新しい価値を創造させている事例であると感じている。また、谷中という地域の魅力を伝えて活性化させるために様々な取組みをしており、デザインにおける「プロトタイピング」を通して活性化をはかっている。そうすることで、相手の実態を常に把握し、定常的な関係性を持つことで体験価値を高めていくことが可能となり、強固な信頼関係(ブランド)を生み出していると認識した。
事例では谷中の町全体を「谷中町=HOTEL」と捉え、谷中の魅力が伝わるように相手が見たり、触れたり、体験できたりする状態をスピーディー創り出している。また、それを指し示す世界(HANARE=宿泊施設をもつ)を構築し、実践から学ぶことができたところにポイントがあるように思います。
その後も「TAYORI」や「KLASS」、「西日暮里スクランブル」などをプロデュースし、谷中町とともに成長している企業である。こういった積み重ねがあることで、次の「空き家」があると声をかけてくれるなど、これまでに構築できている信頼関係から仕事が循環される仕組みが”デザイン”(偶然を必然に)されている部分こそ、デザイン経営の事例となっているポイントになっているように認識している。
地域と小さな接点をたくさん持つことで、積み重ねて多くの接点を持つことができているため、信頼関係が構築されていく。さらに、谷中にしかできないことを生み出す、ここにしかない場所との関係性を生み出すことができるのだと改めて認識させていただいた。
このような背景から、地域から「空き家」の相談をいただくことが多くあったそうだ。「空き家」がそこに存在していることを前提に事業やメニューを考えていく、これまでの進め方とは真逆の側面もあるということも特徴としてあげられる。昨年に谷中地区で”フードデリバリーサービス”を2日でローンチしたという事例もご説明いただき、実際の運用を通じて顧客などからのフォードバックを得て、サービス内容のブラッシュアップを図る手法をとっていると教えていただいた。
これはデザインによる目的達成のプロセスで特に重要となっている「プロトタイピング」(試行・試作)に相当されている。ここから生まれた”偶然”を”必然”に結び付けるための関係性構築の仕組みと、地域とともに成長しながら課題解決するための”デザイン”について学ばせていただきました。
平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】春日井JFC/FC.FERVOR/中京大中京高校/駒澤大学/横河武蔵野FC(JFL)/エリースFC東京(関東)/ラスタサッカーファミリー(埼玉)
※U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合(通算115試合1得点)
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科