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ゲーム業界についてこれまでとこれから
ゲーム業界の市場規模は世界中で加速していて、今後も拡大していく見込みの成長産業です。とはいえ歴史も浅く、技術の進歩や世の中のトレンドに大きく左右される業界でもありますね。
日本においてコンピューターゲームはクールジャパンにも取り上げられるほど文化的に根付いたもので、多くの人がゲームを遊んだことがあるでしょう。
私自身ゲーム業界に身を置いていたこともあり、今この業界では何が起こっているのか、そして今後この業界がどうなっていくのか考察をしてみたいと思います。
これまでの歴史
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まずこれまでのゲーム業界の歴史を振り返ってみましょう。ここではチェスや将棋などのアナログゲームを除き、コンピューターゲームという括りで考えます。
なお、各年代の詳細については割愛して、大まかな事柄がわかる程度でまとめています。
1970年〜
この頃のゲームはショッピングセンターなどに設置されているアーケードゲームが一般的でした。
1972年、アメリカのアタリ社からコンピュータゲームの元祖とも言える、卓球ゲームの「PONG」が発売されました。
70年代後半にはブラウン管(テレビ画面)を用いたゲーム機「ビデオゲーム」が登場し、78年~「スペースインベーダー」「パックマン」「ドンキーコング」などのヒット作が生まれました。
1980年〜
80年代に入ると家庭用ゲーム(コンシューマーゲーム)が台頭してきました。83年には任天堂から「ファミリーコンピューター」が発売されました。既にアーケードで人気のあった「ドンキーコング」が遊べたことやハードの性能、価格から大ヒットを記録しました。
この頃には「スーパーマリオブラザーズ」、「ファイナルファンタジー」、「ドラゴンクエスト」など、今現在でも人気のナンバリングタイトルが登場しました。
1990年〜
89年に発売された携帯型ゲーム機の「ゲームボーイ」がヒットし、据え置き型ゲームとともに携帯型ゲーム機も普及しました。96年に発売された「ポケットモンスター」はIPを活用したメディアミックス戦略により今日に至るまで人気の作品となりました。
94年にはソニー・コンピュータエンタテイメント(SCE)から「プレイステーション」が発売。人気タイトルのファイナルファンタジーがプレイステーションから発売されることもあり、シェアを獲得していきました。
2000年〜
2000年、ソニーからプレステの後続機となる「プレイステーション2」が発売、ファイナルファンタジーに加え、「ドラゴンクエスト」、「バイオハザード」などの人気ラインナップによって世界でも売上を伸ばしました。
そんな中、任天堂から04年に「ニンテンドーDS」、06年に「Wii」とこれまでのゲーム体験とは異なる革命的ハードが発売され、爆発的な売上を記録しました。
2010年〜
10年代では携帯電話でゲームをプレイするソーシャルゲーム市場が台頭してきます。08年にiPhoneが登場し、アプリでゲームを遊ぶことができるようになりました。
ハード、ソフト面の進歩により携帯で充実したゲームが遊ぶことができるようになり、これまでゲームに触れてこなかった一般層もユーザーに取り込むことができたことで、スマートフォンゲーム市場が家庭用ゲーム市場を上回るようになりました。
79~80年代にはアーケード中心から家庭用ゲームが登場し、ソフトでは対戦型、ステージクリア形式のゲームが主流の中、キャラクターや物語性のあるゲームの流行、近年では人々に普及したスマートフォンで遊べるアプリゲームなど、ゲーム業界では黎明期から定期的にそれまでのメインストリームを塗り替えるような革命的発明が多く生まれてきたように思えます。
海外のゲームが競技性の高いゲームが主流であるのに対して、日本はキャラクターやナラティブをゲームの世界に持ち込んで成功を収めました。漫画やアニメのカルチャーを持つ日本ならではの強さだったと言えます。
そもそも人類史にコンピューターが登場したのが20世紀からからなので、この半世紀の間でデジタル革命の波に乗り、ゲーム業界は飛躍的な進歩を遂げてきました。デジタルネイティブと呼ばれる世代では、ゲームは当たり前の娯楽として親しまれてきましたが、その歴史の中で日本がカルチャーの中心だったことはぜひ知っておきたいです。
業界のトレンド
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さてこれまでの業界を振り返ってみると半世紀ほどの歴史の中で飛躍的な技術進歩を遂げてきたことがわかります。2024年現在、私が感じるトレンドをまとめます。
多様化するビジネスモデル
ゲームシステムやプラットフォーム、マネタイズに至るまで昨今のゲームをとりまく環境は様々なビジネスで溢れています。
ゲームコンテンツが中心にありながらも、時代に合わせた形で多様化している産業と言えます。今後ゲーム会社は単純なゲーム開発だけでなく、これら複合的な産業構造の中での競争を余儀なくされることと思います。
eスポーツ
electronic sports(エレクトロニック・スポーツ)の略称で、コンピュータゲームを競技スポーツとしたものです。2000年代ごろからプロゲーマーズリーグの設立やeスポーツの国際化が始まり、2015年には日本eスポーツ連合(JeUS)が設立しました。
ゲーム人口の増加や動画視聴による注目度の高さからスポンサーとして様々な企業が参入しており、ゲームコンテンツの拡大手段や広告媒体としても活用できる市場となっています。
一部のゲーム会社では自社で販売しているゲームを使って大会を開催したり、eスポーツ事業を展開してコミュニティの活性化や販売戦略としてのビジネスにもなっています。
サブスクリプション
Apple Arcade、PlayStation Plus、Nintendo Switch Onlineなど多くのプラットフォーマーが提供しているゲームのサブスクリプションです。
SaaSではAmazon PrimeやNetflixなど主要なマネタイズとなっている昨今では当然の流れと言えますが、ゲームはコンテンツの性質上、消費に対する費用対効果から動画サービスなどと比較して伸び悩んでいるように見えます。開発側からすると莫大な開発費を回収できないため、AAA級のタイトルをサブスクに提供するメリットも薄いと言えます。
一方で運用型タイトルではゲーム内部でシーズンパスのように直接ゲームに課金させる形のサブスクのシステムもあったりします。
コンシューマータイトルでは売上予測から予算を組む開発体制も多いので、業界構造上すぐにサブスクが主流になることはないでしょう。
しかしながら短尺の動画が流行したように、インディーゲームのような短いゲームの流行や、安定したコンテンツ供給のパイプラインが確立できれば可能性のあるマネタイズ方式であるとも思えます。
AR/VR
2016年に発表されたPSVR、Oculusなどのヘッドマウントデバイスの登場により、VRコンテンツが一般化されたことで2016年はVR元年と呼ばれました。また同年には、スマートフォンゲームの「Pokémon GO」が配信され、ARゲームとしてヒットしています。
2021年にFacebookが社名をMetaに変更し、メタバースの事業展開を示しました。その後2023年にはAppleからヘッドマウントデバイスのApple Visionが発表され、同時にUnityからVision OS向けの開発環境が提供されています。
近年、巨大テック企業がAR/VRの事業領域に踏み出しており、トレンドの潮流を作り出しており、その流れからもAR/VRと相性が良いゲームは注目されています。
まだ世間的に浸透しているとは言えませんが、AR/VRゲーム専門の開発会社も出てきているように、次世代の体験を提供できるものとしてゲームの可能性の広がりを見せています。今後のゲーム開発で伸びる可能性のある市場とも言えます。
NFT
NFT(非代替トークン)とはブロックチェーン技術を基盤に画像、音楽、動画などのデジタルアセットを唯一無二の資産として活用することのできる仕組みです。
NFT自体は仮想通貨やNFTアートのように他の分野でも利用されているものですが、NFTゲームではゲーム内でプレイヤーが所有するキャラクターやアイテムをNFTとして保有することができます。
ゲームのサービスが終了しても、そのゲーム内で手に入れたNFTアイテムは個人の資産として活用できるという、従来のゲームとは異なる特徴があります。
単純な娯楽としてのゲームではなく、FinTechの一例としての側面を持ちます。ブロックチェーンの知識や仮想通貨の口座開設など、プレイハードルが高く、まだ認知自体が少ない分野ですが、テクノロジー×ゲームの流れで広がりを見せる可能性があります。
実況文化の浸透
YouTube、Twitch、ニコニコ動画などの動画プラットフォームの台頭によりゲーム実況という文化が確立しました。ゲームを実況プレイしながら配信するという活動に一定の需要が生まれ、プレイ実況者として生計を立てることも可能になりました。
他人がプレイする様子を見てその反応を楽しんだり、飽和したゲームを自らの時間と労力を使ってプレイするよりも、動画視聴という形で受動的に取り入れる方が、多忙な現代人にとっては易いコンテンツになったという背景があるかもしれません。
YouTuberなどの配信者は人々への強い影響力を持つインフルエンサーと呼ばれ、企業は広告塔として協業しています。近年ではVTuberのようにゲームやエンタメコンテンツとの相性が良い実況者カテゴリも登場し、ゲームは動画で配信されることを前提にした環境になったといえます。
一方で、著作権の問題やストーリーゲームにおけるネタバレなどの問題もあり、企業や開発者は配信ガイドラインを制定しています。
ソーシャルゲームや運用型ゲームの場合は、コンテンツの盛り上げや継続的なユーザーの流入を呼び込むためにマーケティングの一貫として実況者に配信を依頼することも多いです。
市場の拡大
2024年、世界でのゲーム市場は37兆円ほどで、2019年の20兆円と比較しても倍近く伸びていることがわかります。2030年には更に80兆円まで拡大する見込みです。日本国内では2020年に2兆円を突破して右肩上がりに拡大しています。
コロナパンデミックによる巣ごもり需要やスマートフォンの普及を背景に、ゲーム人口、年齢層の増加しています。
このように、ゲーム業界はアメリカ、アジアを中心に拡大している成長産業と言えるでしょう。アメリカではアクション、シューティング、ストラテジーなどのジャンルが人気で、インディーゲーム文化も活発です。
中国・韓国はモバイルゲーム・オンラインゲームが主流でしたが、近年になってハイクオリティのアニメ調グラフィックのゲームや、重厚なハイエンドゲームも発売しています。ゲームの特色は日本同様、キャラクターやRPG色が強く、アメリカとは異なる特徴があります。
一方で日本は任天堂IPやドラクエ、FFといったファン向けのナンバリングタイトルやリメイクを展開してきましたが、開発費や人件費の高騰により新規IPの創出が振るわず、イノベーションが起こらない状態が続いています。結果的に世界市場での存在感が薄まってきてる感もあります。
グローバル化したゲーム市場においては今後、世界市場で売り上げていくことが至上命題になるでしょう。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2024/c105db2626683d20/2024-07.pdf
ポリコレへの対応
ポリコレとは社会における制度や表現を差別、偏見のないものに変え、人種や性別、障害の有無などによるマイノリティ守るための運動の事です。もともとは政治的思想から生まれたリベラリズムの思想でしたが、近年では映画やゲームなどのエンタメ産業にも影響が及んでいます。
映画ではポリコレへの配慮から「白雪姫」や「リトル・マーメイド」で、ヒロインにアフリカ系アメリカ人やラテン系アメリカ人をキャストしており、表現の自由が制限されているという風潮があります。
同様にゲームでは「Horizon」や「アサシンクリードシャドウズ」など、ポリコレによる影響で炎上する事態も起こるようになりました。
特にアメリカではこうしたポリコレ団体の活動が活発で、企業との癒着や不買運動なども起こってきます。
こうした背景からゲーム会社は開発するゲームがゲームとして純粋に面白いかではなく、ポリコレに配慮しているかという観点を取り入れるようになりました。しかしこれが結果的にユーザーにとって満足なゲームにならないという指摘もあります。
日本でも海外でファンの多いIP作品では、ポリコレの意識が随所にみられるようになりました。
ポリコレの風潮は大きいですが、その行き着く果てはすべてのマイノリティの救済になってしまい、それは不可能です。
ダイバーシティの取り組みとして尊重されるものだと思いますが、ゲームや映画はあくまでエンタメ産業です。積極的な差別表現は避けるべきですが、根本思想として自由な表現のもと作品が作られるべきです。
どこまでポリコレへの配慮を行うのか、業界として姿勢を示す必要があるかもしれません。
生成AIの是非
世間的にも騒がれているAIの話題があります。
2022年から急速に普及した、ChatGPTやMidjournesyなどの生成AIはクリエイターに大きなインパクトを与え、今なおその是非や運用についての議論が紛糾しています。
特に既存のイラストを学習して生み出される生成イラストは、著作権や知的財産の盗用という倫理的問題により、商業イラストレーターからの反感が大きいです。
一例として、Webポートフォリオサービス「Artstation」ではユーザーであるアーティストによって反AI運動が起こるなどの物議を醸しています。
こうした流れから世間の感覚として、ユーザーの目に触れるコンテンツそのものがAIで生成されたものは、人が生み出したものではないという心理的な嫌悪感や、知財の流用といった不信感から受けが悪いという印象です。
ゲームプラットフォームの「Steam」では当初、生成AIで制作されたゲームのSteamストアへの登録を認めていませんでした。しかし、2024年にその方針を変更し、条件付きで生成AIの使用を許可するようになりました。
また、ゲーム開発の現場ではAIが条件にあった最適なコードを提案するGitHub Copilotの活用や、企画段階のコンセプトアートに案出しで既にAIが利用されています。
しかし、まだAIに対する風当たりが芳しくない事から、ユーザーの目に触れるコンテンツに直接生成AIが使われることは少ないでしょう。特に大企業では著作権や風評被害のリスクを取ることは難しいと思います。
しかしながらこうした技術やツールは日進月歩で進化しており、数年後には当たり前のものとして浸透していてもおかしくありません。
いち早く新しい技術を取り入れるスタートアップやベンチャーがこの領域を牽引している印象もあり、今後どのようにAIを用いたゲームが登場するか注目しておきたいです。
スマートフォンゲームの終焉
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4~5年ほど前からじわじわとスマートフォンゲームの勢いが下火になってきていると感じます。
スマートフォンゲームの特徴であるのガチャ課金は、Free-to-Playというビジネスモデルで、ヒットすれば開発費を大幅に上回る利益を出せることが強みでしたが、ゲームの数が飽和してヒットを出すのが困難になり、かかった開発費が回収できないというリスクが高い状態になってしまいました。
さらに中国・韓国で開発されたハイクオリティなマルチプラットフォームゲームが台頭してきたことも一因だと思います。
ガチャモデルの問題
ガチャ課金は射幸心を煽ることで課金を促し、青少年が過剰に課金してしまうという問題や、運営が利益を出せる排出率にいつでも変えることができるシステムで、マネタイズとしてそもそもあまり印象が良くないです。
個人的にガチャモデルは支払った金額に対して正当な対価(ソシャゲの場合はゲーム内アイテム)が得られない可能性があることから、本質的にはギャンブルやくじとあまり変わらないと思っています。
ガチャモデルとは製品の価値ではなく、人間の射幸心や依存性を前提にしていて、健全なシステムとは言い難いと思います。
また、ガチャモデルのもう一つの問題はすべてのゲームが画一化されたゲームモデルになってしまうということです。
Free-to-Playで提供する以上、マネタイズのポイントを「ガチャを回す権利を購入する」ことでしか生み出すことができません。そのためゲーム全体が「ガチャに課金させる」という目的を持った機構として作られることになり、そこから逸脱することができません。
制作会社の影響
近年の大きなトピックとして、2024年4月30日にスクウェア・エニックスが2024年3月期に約221億円の特別損失を計上すると発表しました。
「コンテンツ制作勘定の廃棄損」として、進めていたゲームの開発を中止するため、これまでに掛かった開発費などを損失として計上したことが主な理由となっているようです。
同社ではこれにより、開発体制の見直しとして内製での開発にシフトする方針のようです。業界最大手の企業がこうした方針を取れば、その影響は大きいです。
まず、これまで受託開発してきた中小の下請けは厳しい局面にあると言えます。特にソーシャルゲームの実績やノウハウしかない会社は生き残るため、今後増える見込みの薄いソーシャルゲーム案件を獲得するか、事業転換を図る必要に迫られることもあり得ます。
案件獲得がうまくいかず、自社でお金を生み出すことができなければ、結果的にM&Aや倒産といった道を辿る場合も少なくないと思います。
単純に競争力が高まり、制作実績や技術力による淘汰が起こるのではないでしょうか。
人材の動き
大手の内製化により優秀な人材が固定化して、人の流動性が薄くなる可能性もあります。ゲーム会社の中途採用は業界経験がほとんど必須で、年齢や状況にもよりますが、業界未経験はそれだけで足切りになることも多いです。
中でもコンシューマーゲームの採用は、コンシューマーの開発経験が求められることが多く、ソシャゲよりもハードルが高いです。
そのため、優秀な人材は引き抜きや紹介といった形で会社を移動することがよくあります。
一方でソシャゲバブルの影響で、ソーシャルゲームの経験のみでキャリアを積んだ人材は、ソシャゲが無くなったときに行き場が無いという事態にもなりかねません。
ゲーム業界では体力のある会社しか人材育成がされていない実態もあり、ミドルクラスまでに相応の経験が積めないと転職も厳しい現実があります。
優秀な人材の固定化、その他の人材が下請けの中で回り続けるという二分化した構造になる可能性もあるのではないでしょうか。
中国・韓国産ゲームの台頭
市場の拡大によって中国・韓国産のハイクオリティなゲームが多く登場するようになり、ユーザーの目も肥えてきました。
国産の雑なソシャゲでは単純にクオリティ面で太刀打ちできなくなってきたので、ユーザーの獲得ができずに採算が取れなくなってきました。
飽和したソーシャルゲームでユーザーの可処分時間の奪い合いが限界に達した上に、中国・韓国のゲームにユーザーの母数が持っていかれている状態になっています。
一方で、「パズドラ」、「Pokémon GO」、「LINE:ディズニー ツムツム」など老若男女が遊べるようなカジュアルゲームは好調で、じっくりゲームをプレイするというより暇つぶしで遊ぶという需要にマッチしています。
多くのライトユーザーにとってスマホで遊べるという利点は大きいので、すぐに衰退することはないと思いますが、これまでのようなペースではなくなるものと思います。
インディーゲームの隆盛
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インディーゲームというジャンルは古くから存在していますが、日本では2010年頃から認知が広がり始め、近年では大きな盛り上がりを見せています。
インディーゲームの定義が曖昧だという話はよく言われていることですが、
独立系ゲームというように、一般的には少人数・低予算で開発されていることや、大規模なパブリッシャーの資金援助を受けず、個人や小規模なチームによって開発されている、というような特徴を持ったゲームを指します。
個人的には開発規模や予算の多寡によらず、開発者のエゴが詰まった作品はインディーゲームと言って良いかとも思えます。
「Minecraft」、「UNDERTALE」などの伝説的なタイトルは、販売数や売上も大手パブリッシャーが発売するゲームにも引けを取らない人気があります。
近年ではゲーム市場の増加も相まって、ミリオンセラー級のインディータイトルも多く出ています。
こうした盛り上がりの背景にはいくつかの要因がありますが、個人的に感じていることをまとめます。
プラットフォームの普及
Steamの普及や、Switchのプラットフォームである「My Nintendo Store」によって個人開発者がゲームを販売できるプラットフォームが拡充したことは大きいでしょう。
インディーゲームでは自ら販売経路の確保をしなければありませんが、こうしたプラットフォームが充実したことにより、個人開発のインディーゲームでも多くのユーザーに行き渡るようになりました。
開発環境の充実
ゲーム開発はデザイン、プログラム、サウンドなど、あらゆるリソースを組み合わせて作るので、必要な技能や開発環境を用意するハードルが高いものでした。
しかしUnityやUnrealEngineなどの無料で使えるゲームエンジンや開発ナレッジが充実してきて参入障壁が下がり、非エンジニアでもゲーム開発ができるようになりました。
今後はAIを使ったアートリソースの開発支援ツールも登場することが予想され、更に充実した環境が整ってくるでしょう。
イベントの開催
「デジゲー博」、「BitSummit」、「東京ゲームダンジョン」など、インディーゲームにフィーチャーした各種イベントが開催される様になりました。
ここでは開発中のゲームの試遊や告知が行われており、コンシューマーゲームにはないライブ感があり、開発者とユーザーを繋ぐリアルイベントとして盛り上がりを見せています。
イベントでは開発者同士の交流やパブリッシャーの勧誘なども行われており、インディーゲーム特有のコミュニティが出来ています。
SNS時代
個人開発のインディーゲームではプロモーション・マーケティングが課題の一つですが、Twitterなどを使えばお金をかけなくてもある程度の販促活動ができるようになりました。
また発売したタイトルがYoutuberやゲーム実況者に紹介されると、それが広告になり、SNS時代の恩恵を受けることができていると思います。
ナンバリング、リメイクへの飽き
近年の国産ゲームは売上が見込めるIP作品やナンバリング、リメイク作品が主流で、オリジナルタイトルが不調な傾向がありました。
ファン向けの作品として人気があっても体験や遊びの部分が刷新されたわけではありません。ゲーム体験そのものがマンネリ化して、段々と飽きている状態になっている気がしています。
その点、インディーゲームは開発者のエゴや個性が詰まった尖ったゲームの集まりです。停滞したゲーム体験を打破するゲームとして需要が高まっているのではないでしょうか。
インディーゲームについては盛り上がりを見せていると言っても、予算がかけられずに発売に至らなかったり、そもそも作り手が少ないという問題も多く、ゲーム市場の中心に来ることは難しいかもしれません。
しかし任天堂が配信するインディーゲームの紹介番組「indie world」や、インディーゲームに特化したバンダイナムコスタジオの「GYAAR Studio」など、大手企業もインディーゲームへの積極的な投資があり、好調な流れがあります。
今後の業界について考察
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ゲーム業界は次の時代へとシフトする過渡期にあると思います。
大きな潮流として、採算の取れなくなったソーシャルゲームビジネスが終わりかけていて、コンシューマーゲームへの原点回帰が始まっている感覚があります。
大手が開発を内製化し、安易なソシャゲ案件も少なくなると思うので、これまでソシャゲメインの下請けでやってきた中小の開発会社はM&A、倒産といった道を辿る場合も多いと思います。もしくは生き残るために別のビジネスを始めることもあるでしょう。
もともとクライアントとの信頼関係があったり、本当に開発力を持った会社が生き残る淘汰が起こるのではないでしょうか。
そして結果的に国内のゲーム業界は少し縮小するフェーズが訪れることになる気がしています。
ゲームは生活に必要不可欠なものを提供しているわけではないです。技術やトレンドにも左右され、競争も激しいです。そもそも経済的に豊かな時代でなければこうした産業は発展し辛いでしょう。
しかし、生活を豊かにする「遊び」はどの時代にも必要な人間の営みです。ゲーム業界はその遊びを提供できる夢のある業界だと思います。
時代の節目で不安定な時期だと思いますが、長期的には発展していく業界だと思っています。今起こっていることが今後の業界の流れを作ることにもなるので、引き続き見守って行こうと思います。