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ICUの個室へ。~現実世界との解離~

自分が入院していたICUは基本的に、隣のベッドとの間をカーテンで仕切っただけの集団部屋であるが、その中に一部屋だけ個室がある。

集中治療が落ち着きつつあり、一般病棟に移れる目処が立った方が、その個室に入ることが多いらしい。

自分は、術後2日目の午後に、フォーレを抜いて間もなくその個室に移った。

6畳ほどの大きさの部屋で、ベッド周辺に備品(サイドテーブルやポータブルトイレなど)を置くとかなり狭くなってしまうが、ベッド頭上の壁には小窓があり、外からの暖かい光が入ってくる。そして、今まで隣のベッドから聞こえていた患者さんの声や、便臭などもしない為、だいぶ快適にはなった。

あと、ICUに1台しかないテレビを、自分の為に貸し出してくれた。
普段あまりテレビを見ないので、他の患者さんで見たいという人がいれば、そちらを優先してほしいと話したが、今はそういう人もいないとのことだったので、一時的に自分専用のテレビとなった。

2日ぶりにテレビをつけてみると、ここ数ヶ月で話題の中心となった、新型コロナウイルスのニュースがずっと流れている。2日経っても内容は大きく変わっていないようだった。
世界のコロナ関連死が10万人を超え、政府案の減収世帯を対象にした30万給付の基準が疑問だーとかの話題が中心だった(※2020年4月11日時点)。芸能界では、志村けんさんが亡くなってまだ間もない頃で、その話題がまだ続いていた。自分も大好きな芸能人だったので、こんなにあっさり無くなってしまうものなのかと、未だにぽっかりと穴が空いたような感じだった。

当時、まだ未知の部分も多かった新型コロナウイルスの脅威を、テレビで見ながら少なからず動揺はしていた。
しかし不思議なことに、病院のICUという(それも個室の)外とは無縁の世界にいると、生々しさを感じる機会が無くなるせいか、どことなくコロナが蔓延している世界とは、無縁に近いような感覚にはなってしまう。コロナのニュースを見ていても、映画の一部始終を見ているような感じ。。。

病院は、元々いた「現実世界」をも、自分とはかけ離れたものにしてしまう不思議な空間だ。


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