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映画感想文『オッペンハイマー 』量子論、将来人類を確実に滅ぼすであろうパンドラの箱を開けた男の話


2024 年 9 月 18 日
https://www.nature.com/articles/d41586-024-02982-6
欧州の素粒子物理学研究所 CERN は、ロシアの機関に所属する数百人の科学者を、国外の施設に移らない限り、11 月 30 日に追放する。この日付は、2022 年のウクライナ侵攻後にロシアとの関係を断つという CERN の決定を受けて、研究所とロシア連邦の協力関係が正式に終了する日となる。

スイスのジュネーブ郊外、フランスとの国境地帯にセルン(SERN:欧州原子核研究機構)と呼ばれる施設がある。地下には全周27Kmの円形加速器・大型ハドロン衝突型加速器(LHC)が国境を横断すして設置されている。LHCは先行実験機である大型電子陽電子加速器LEPに接続する形で建造されている。

CERNの大型ハドロン衝突型加速器(画像提供:CERN)

CERNは欧州の国際共同機関だが、ユーザーは世界中から受け入れている。
しかしウクライナ侵攻に伴いロシアとベラルーシはCERNから追放されることになった。CERNからのロシア追放は、プーチン大統領を利することになるとみる。プーチンはこれを、ロシア国民に周辺国を敵と認識させるための議論として利用するだろう。そうなれば、プーチンは科学予算を削って戦費を調達するという決断を自ら下す必要がなくなる。

SERNでおこなわている実験とは


前置きが長くなったが、以下オッペンハイマーの感想

監督・脚本 クリストファー・ノーラン

出演者
キリアン・マーフィー エミリー・ブラント マット・デイモン
ロバート・ダウニー・Jr. フローレンス・ピュー ジョシュ・ハートネット

あらすじ・ストーリー
第二次世界大戦下、アメリカで立ち上げられた極秘プロジェクト「マンハッタン計画」。これに参加した J・ロバート・オッペンハイマーは優秀な科学者たちを率いて世界で初となる原子爆弾の開発に成功する。 しかし原爆が実戦で投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。冷戦、赤狩り―激動の時代の波に、オッペンハイマーはのまれてゆくのだった。

https://filmarks.com/movies/99563

映画『オッペンハイマー』世界初の原子爆弾を開発した「原爆の父」として知られる理論物理学者ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた伝記映画である。オッペンハイマーは、第2次世界大戦中のアメリカで、原爆の開発計画「マンハッタン計画」の科学部門を指揮した理論物理学者だ。1945年7月に行われた人類初の核実験「トリニティ実験」を経て広島と長崎に原爆が投下され、アメリカでは戦争の終結を早めたとして脚光を浴びるが、その後、被爆地の惨状を知り苦悩を深めていく。

オッペンハイマーらが開発した原子爆弾、たった二発の爆弾は罪のない20数万人の日本人の命を奪うことになる。その悪魔の大量破壊兵器を生み出した男の半生を扱った非常に重たいテーマの戦争歴史映画。だが、やっぱりノーラン映画らしく時間軸が絡み合いシャッフルするエンタメ映画に仕上がってる。映画の中で拍手喝采で原爆投下の成功を祝ってるアメリカ国民。開発リーダーのオッペンハイマーの功績を讃えている。広島・長崎の惨状を伝えるようなシーンは一切ない。怒られるかもしれないし日本人としては不謹慎かもしれないが、映画は非常に面白かった。とは言ってもオッペンハイマーに感情移入できた訳ではない。ノーランには悪いが日本人はオッペンハイマーを理解するのは無理だ。

オッペンハイマーはアカデミックな世界でのキャリアしかなく学者以外は見下している。弟フランクの婚約者でウエイトレスのジャッキーの事は眼中になく全く興味すら示さない。ストローズの事も卑しい靴売りだと本人に言ってのける。自分の家族すらも愛せない頭は切れるが自分勝手で傲慢な科学者だ。愛人も自死に追いやっている。

マンハッタン計画
米国軍人グローヴスはナチスよりも早く原子爆弾を開発するためユダヤ人であるオッペンハイマーを巧みに利用し優秀な科学者をロスアラモスに集める。マンハッタン計画の軍の最高責任者であったグローヴスと、科学部門の責任者であったオッペンハイマーは、原爆を実戦で十分な信頼性を持って使用するためには、この起爆機構の実験を行なう必要があると考えた。しかし原爆の爆発によって、最悪、地球の全表面に及ぶ大気に大規模な破壊が生じる可能性があった。オッペンハイマーには制御不能に陥った核分裂は全人類を死に至らす可能性があるという躊躇があった。計算上限りなくゼロに近いが・・・実際オッペンハイマーはそのことでアインシュタインに相談している。結果はやってみないとわからないだ。

そして、トリニティ実験、1945年7月16日オッペンハイマーらは人類初の核実験を成功させる。

一番の悪人はレズリー・グローヴスなんだけどさ

レズリー・グローヴスが一番の悪人だ。
ノーラン作品においてマット・デイモンが出てきたら大体悪い奴w

現在、アメリカでは「原爆投下は大統領だったハリー・トルーマンが自らの意思で決断した」という考えが根強く残っている。ガー・アルペロビッツは、トルーマンと新任のバーンズ国務長官が多額の費用を要した原爆開発の正当化を国民にするため、ソ連に原爆の威力を示すため、元駐日大使のグルーやスチムソン陸軍長官の反対にもにもかかわらず原爆投下に積極的だったと解している。また、長らく、米国民の多くが、より多くの米兵の生命を救うべく戦争を長引かせないために必要なことだったと考えていたという。しかし、近年の研究には、実はトルーマンは誤解による決断をしたのではないか、そして原爆投下の主犯はグローブスらではないかとするものも現れている。実はトルーマンが大統領に就任する少なくとも5ヶ月も前からグローブスは、原爆投下のスケジュールを立てていた。その内容は、「最初の原爆は7月に準備、もう1つは8月1日頃に準備、1945年の暮れまでに、更に17発作る。」というもので、グローブスは原爆の大量投下も計画していた。

グローブスは、1942年から大規模の原爆計画であるマンハッタン計画の最高責任者に就任。この計画に22億ドルもの国家予算が注ぎ込まれ、各地に大規模な工場や研究所を建設し、原爆の完成を目指した。

https://ja.wikipedia.org/wiki/


ラストシーンは再びプリンストン高等研究所でのオッペンハイマーとアインシュタインの会話だ。(この時初対面のストローズに誤解をあたえた)


アルベルト、計算を見せて不安を伝えた 

爆発で連鎖反応が起きて全世界を破壊すると

覚えてるよ、それが何か?

我々は破壊した。


池の波紋が映り、その時オッペンハイマーの脳裏には大量の核弾頭ミサイルによって地球が焼き尽くされる瞬間が映し出された。

あの実験の成功は将来人類を滅ぼす、パンドラの箱を開けた事だと。



オッペンハイマーは昭和35年に来日したが、広島と長崎には訪れることはなかった。


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