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シンガポールとベトナムで法人設立ー最初から知っておきたかった大きな罠
はじめに
東南アジアで起業したいけど、どこに本社を置くべきか?
僕はシンガポールに本社を構えることでメリットを感じた一方、設立後に想定外の苦労も多々ありました。本記事では、前半(無料部分)では、東南アジアでの企業体制の一般論を、後半(有料部分)では、ベトナムから出国できなくなるかもしれなかった、という僕自身のハラハラな実体験を交えながら、シンガポール&ベトナムの法人設立と資金フローの注意点を解説します。
東南アジアと言っても、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、など色々な国があります。当たり前ですが、東南アジアで事業をする場合は、まず事業を行いたい国を選定し、その国で(国ごとに)法人を設立することになります。
日本で事業をして大きくなったら海外展開を考える、と言う場合は、会社設立時に組織編成についてそこまで考える必要ありません。ところが、東南アジアの場合は、最初の会社設立の段階から、組織編成についてある程度計画する必要があります。
タイだけで事業を作って行きます!というのであれば、タイで法人を立てるだけで完結しますが、もし他国にも展開予定、となれば話は大きく変わってきます。タイで本社を構えてから、事業が上手くいったので、これから資金調達してベトナムに進出します、みたいなのはかなり大変です。言語的な障壁もありますが、各国特有の煩雑なプロセス等さまざまな要因があります。
4つの子会社の種類
とは言え、これに関して一般的なアプローチが確立されています。
それはシンガポールに本社を構えることです。シンガポールの本社が100%株主として東南アジアの各国に子会社を設立する手法です。日本に本社がある会社でもシンガポールに地域統括会社(Regional Head Quarter)を置くことも増えているようです。
子会社の中でも、下記のようにいくつか方法があります。
100%外資の有限責任会社(WFOE)
合弁会社(JV)
外国企業の支店
駐在員事務所
各国で事業を行う場合、WFOEが最も一般的ですが、国や規制の都合上、WFOEが難しい場合、現地のパートナーとJVを組成することもあります。支店は新しいスタートアップが満たすには厳しい設立条件があったりするので、非現実的かもしれません。駐在員事務所は市場調査等、現地で事業を行わない前提なのでここでは触れません。
僕たちは、シンガポール法人が一般的な法人格(Pte. Ltd.)でベトナム子会社はWFOE(Co. Ltd.)にしました。現地で100%子会社を作ることが事業上可能であれば、この建付けにするのが一般的かと思います。
本社・子会社間の資金フロー
この時、肝になったのが、どうやってシンガポール本社からベトナム子会社に資金を送るかでした。この課題はベトナムに限らず、東南アジアのどの国の子会社でも発生します。
僕たちの場合は、シンガポール本社はベンチャーキャピタルからの投資金を保持しており、ベトナムで必要な分だけ必要なタイミングで、シンガポールからベトナムに送金する必要がありました。この送金の建付けと税務処理を考慮しなければなりません。
本社・子会社間の資金フローに関しては、ざっくり以下のようなオプションがあります。
増資による出資:シンガポールから送金して、その分ベトナムの資本金を増やす。そもそも、増資の手続きは時間がかかり煩雑なうえ、資本金の回収(ベトナムからシンガポールへ送金)も当局許可が必要になるので、必要に応じて送金するには不向きです。少ない頻度で大きく資本を注入するのであればシンプルですが、資本を抜くのが手間なので、撤退リスクとの隣り合わせですね。
親子ローン:シンガポール本社からベトナム子会社にローンの貸付を行う。こちらもベトナムの当局に届け出が必要です。利息に関する税金の扱いも要確認です。
サービス提供による対価:ベトナム子会社がシンガポール本社のためにサービスを提供し、それに対する対価として送金する。子会社側では売上が立ってしまいますが、本社側では経費処理できます。
事業内容と、税務の観点から、いずれかのオプションを選ぶことになると思います。僕たちは某コンサル会社にコンサルティングをお願いして、そのアドバイスを参考に設計したのですが、ベトナム法人を閉じる際に、ここでのセットアップのミスが大きな焦点となり、法外な税金(本社のお金では払えないくらい)を払わないといけないかもしれない事態に陥りました。
もし、この税金が確定してしまい、払えない場合は、ベトナム法人の代表であった自分が、ベトナムから出国できなくなってしまうリスクがあり非常に不安でした。
自分たちは毎年税金も納めていたし、監査も入れており、悪いことは一切していません。にも関わらず、税金をもっと(法外な金額)払え、と言われていたのです。
そのミスとは…
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