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西郷隆盛「がんばったら誉めるよ、でも地位は与えないよ」

西郷隆盛の生前の言葉をまとめた『南洲翁遺訓』。冒頭を飾る最初の遺訓は「廟堂に立ちて大政をなすはー」ではじまる。天皇の政府の代表として政治を行う者の心構えと、官職を与えるにふさわしい者の条件について、一本太い筋の通った西郷の思想が述べられている。

西郷が考えるところのまっとうな政治と官職の条件とは次のようなものだ。

・私益を目的に政治を行ってはならない
・政府の職には賢人を選ぶべし
・官職はその任にふさわしい人を選ぶべし
・いくら功績があっても任せられぬ人に官職を与えてはならない
・功ある者に与えるべきは賞であり、地位ではない

実はこれ、明治政府への痛烈な批判と皮肉になっている。倒幕を果たして新しく打ち立てられた政権は、西郷の言葉とまるで真逆の政治と人事が行われていたのだ。

政府の要職は維新に功のあった薩長の人脈が牛耳った。出身が薩長というだけでやすやすと官位にありついた者が少なくなかったのだ。これでは政治の私物化は免れない。自分のことや出身藩の利益になることばかり考える政治が横行した。そのような「天道」の腐敗と堕落に嫌気がさして、西郷はさっさと身を引き郷里に引っ込んだ。

それにしても至極まっとうな政治論と人事論。とくに「功ある者に与えるべきは賞であり、地位ではない」は、刺さる。功績のある人やがんばった人には賞金や褒賞を与えるくらいがちょうどよく、その任にふさわしい能力も適性もないのに地位を与えてはならないのだ。この誤った人事はとりわけ政治の世界で横行している。どうりで国が傾くわけだ。

政治家になる条件として、南洲翁遺訓の1億回写経を希望する。





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