Drone Accessibility Project その2
テクノツールの島田です。東京都稲城市を拠点にアシスティブ・テクノロジー(AT)を提供しています。
前回書いたドローンプロジェクトについて、どんなチームで、いまどこまで進んでいるのかを書きます。プロジェクトの経緯や背景にある私たちの考えはこちらをご覧ください。
プロジェクトチームの紹介
このプロジェクトは3者(社)のチームで進めています。
梶山さん
言い出しっぺでありパイロットを目指す梶山さん。「筋ジストロフィー」という、運動機能低下を主症状とする筋疾患(指定難病)の患者でもあります。アシスティブ・テクノロジーを駆使して動画や音楽を制作したり、アクションゲームに興じている梶山さんが、その”AT力”を活かしてドローンを飛ばし仕事を手に入れる。これがプロジェクトのゴールです。
株式会社シアン
ドローンスクールや「空力車」というバーチャルツアーサービスを展開している株式会社シアンさん。チームで唯一のドローン専門家として機体やテスト場の提供、航空法対応やパイロット目線からのアドバイスなどを担当しています。代表の岩井さんとは2020年に一度お会いして意気投合し、2年を経てこのプロジェクトにつながっています。
テクノツール株式会社
そして僕たちテクノツール。上肢機能に制限のある方たちの入力機器を提供しており、そのノウハウを応用してコントロールシステムを開発しています。近いうちに広報noteでユニークな開発メンバー紹介をする予定なのでフォローしていただけると嬉しいです。
こんな感じで3者3様の特技を持ち寄り、実現に向けてがんばっています。
テストフライトのテストをしました
がんばっていたらなんと、2022年2月7日に初飛行に成功しました。
といってもこれはテストのテスト。梶山さんによるテストフライトに向けた動作確認という位置づけです。DJI Phantom 4のシミュレーターを使って開発してきたコントロールシステムが果たして実機で動作するのか、その確認が目的でした。
飛行場所はシアンさんが入居する湘南アイパークという施設にある広々とした前庭です。ピクニックに最適。
ドローンの飛行は航空法に則って行う必要があります。今回のテストではコントロールシステムにエラーが起きた場合に暴走や墜落の可能性があるので、機体を係留(ワイヤーでつなぐ)し、無人エリアで飛ばしました。このあたりの対策はシアンさんが担当してくれています。
結論としてはコントロールシステムで無事飛ばせましたし、非常に収穫のあるテストフライトのテストでした。何せ私たちテクノツールはトイドローンしか飛ばしたことのないド素人ですから、専門家であるシアンさんと何度も飛ばしてみるうちに、シミュレーターではわからない実用面での課題がクリアになりました。たとえばコントロールシステムからの入力に対するドローンの反応(シミュレーターとぜんぜん違うんです!)が理解できたり、UIの改善点がわかったりしました。
ちょっとだけビデオもお見せしちゃいます。危なっかしく見えるかもしれませんが、今回はこれでいいんです。なぜこんな動きになるのか、スムーズに動かすにはどうすれば良いのか、それがわかったことが収穫なのです。
初フライトらしいちゃんとした失敗もありました。うまくコントロールできず地面に衝突し、プロペラが欠けてしまったりとか。シアンさんすみませんでした。
3月に梶山さんが飛ばします
さて、次のステップは梶山さんによるテストフライトです。コントロールシステムの修正はもちろん、場所の確保とかいろいろ準備があるのですが、3月にはやりたいと思っています。
梶山さんもただ待っているだけではありません。ドローンをよりうまく操縦するために、テレビゲームを通して入力環境の改善を進めています。これまで左頬を膨らませて押していたスイッチを右頬にも追加しました。さらに左手の親指で使っていたセンサー式スイッチを、連打と長押しがしやすいタイプのスイッチに変更しています。
梶山さんの入力環境はまたの機会に紹介しますが、瞬時に押す、連打する、押し続ける、ができる「スイッチ」と、眼球運動を使った「視線入力」との組み合わせがキモになります。
法制度へのアクション
最後に重い話をひとつ。実は世の中にある機材やリソースを活用すれば、梶山さんが限定的な環境でドローンを飛ばして楽しむことはそう難しい話ではありません。僕たちもまずはそこを目指しています。しかし最終的な目標は「ドローンを飛ばして仕事を手に入れる」こと。そのためには商用レベルの開発やビジネスモデルの構築などいくつか大きな課題があるのですが、うち一つがルールメイキングに関する対応です。
ドローンの飛行を管理する航空法はいま、大きな転換点を迎えています。というのも2022年、つまり今年中を目途に「レベル4飛行」と呼ばれる有人地帯での目視外飛行の解禁を目指したルールメイキングが進んでいます。これが解禁されると都市部での物流やインフラ点検、災害発生時の避難誘導や消火活動支援など、ドローンの利活用が一気に進みます。
このような大きな潮流のなかで、せっかく自動車や飛行機と違い遠隔操作するドローンなのだから、梶山さんのようなハンドルや操縦桿が使えない人、外出困難な人たちのチャンスを妨げない法律になってほしい。そのために僕たちプロジェクトチームは国土交通省航空局の方々とも意見交換を行っています。このあたりについてはいつか、出せる内容があれば書いてみたいなと思っています。
ではまた。
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