ちゃんと見さえすれば、思いもかけない場所に光を見出すこともある〜グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ
グレイトフル・デッドというと、日本の現代の若い世代ではあまりなじみがないかもしれないけれど、彼らがしたことは音楽表現にとどまらず、現代でも通用する(むしろ先取りしていた)ビジネス手法であった。
なんてことを解き明かし、解説してくれる本書はデッドヘッズ(熱烈なグレイトフル・デッドのファン)でもあるマーケティングのプロ二人による共著。(監修・解説は糸井重里さん)
たとえば、レコード(当時はそうだったんですよ、CDではなく円盤だったのです)の販売よりもライブ演奏で収益をあげるとか、そのライブの録音やシェアが自由とか、当時の常識に反した商売のやり方が現代でも通じる最良のビジネス手法だったと。
いわゆるメジャーレーベルと契約してデビューした友人たちから当時聞いていたのも「ライブは音源を買ってもらうための宣伝活動であって、ライブ自体では儲からない」ということだったので、彼ら(グレイトフル・デッド)がしていたことはやっぱり破天荒だったんだなぁと納得。
チケット販売も中間業者を間に入れず、自分たちで直接販売してたなんてのもびっくり。(中抜き排除、あくまでもファン、コミュニティを大切に)
今では当たり前のソーシャルメディアを活用した最先端の(なんか陳腐な表現だけど)マーケティングの多くを1960年代に実践していたっていうね。
彼らがそれらを今の感覚で理解して実践していたかはわからないけれど、本書を読むと、本質(表現における自分たちの軸)が明確であれば、おのずと手法は導かれていくのかなと思いました。(小手先でなく)
グレイトフル・デッドを知らない世代、人でも大変興味深く読め、楽しめる好著。(最近、文庫版が出たようだけど、装丁や紙面デザインもイカしてるのでデッカイほうがいいかな)
タイトルには「マーケティングを学ぶ」とあるけど(実際、そのように成功事例を分析、解説して現代における応用も説かれている)そのへんはあまり気にせずに(小手先に目がいきがちなので)彼らの本質のほうを感じられるといいと思います。
ちゃんと見さえすれば、思いもかけない場所に光を見出すこともある
(『スカーレット・ベゴニアズ』の歌詞の一部)
Once in a while you can get shown the light in the strangest of places, if you look at it right.