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「やり続けることはいいこと?」の話をしよう

 私には子がいません。望んではいますがまだいません。その代わり、夫婦でいざ子育てする際の方針について意見を交流することができています。子育てを目の前にしたとき、本当にそうできるかは分かりませんが(笑)貴重な時間なのには間違いありません。

 その時、話題になったことがあります。

 「習い事、子どもに何をやってほしいか」
 です。
 健康、身体の基礎をつくるのために、
 「半分強制でも水泳はやらせたい。」
 という私の考えに概ね同意し、そうしようと言ってくれてる以外は2人ともが
 「うーん。まあ我が子がやりたいものをやればいいか。」
 というなんとも面白くないゴールに着地です。(笑)

 そういう御家庭は意外に多いのでしょうか。でも、息子さんならお父さんがやっていたスポーツをやっていたり、娘さんならお母さんがピアノをやっていたのでピアノを習ったりする、というのもよく聞きますし目にします。

 さて問題提起はここからです。お子さんが、始めた習い事を「やりたくない。」という態度になった時、どう考えるでしょうか。

●子育てタレントの考えに違和感

 私は、お笑いやTVが好きなので、タレントさんやお笑い芸人さんが子育てや教育系の発信をしているとついつい観てしまいます。
 それらのタレントさんが、視聴者さんのお悩みに答えながらまさに上のような問題についての考えを話していました。どのタレントさんの子育て方針にも共通して私が感じたことは、
 「すぐ習い事を辞めることを良しとしない」
 ということでした。「すぐ辞めることがないように事前に最低限続けることを話す」「何度かは無理やりでも連れて行って、それでも嫌がるようなら考える」等、「辞めることを絶対許さない」というわけではないですが、やっぱりできる限り続けて欲しいという願いがあるようです。

●「やり切ること」の美しさ

 日本は「やり切ること」に過度な美しさを求める傾向があると思います。それは、終身雇用が超主流だったひと昔前の影響が大きいという識者もいるようですが、他にも日本特有の倫理、道徳、美徳みたいな雰囲気がそこにあるからではないかと、個人の肌感覚ではしています。
 私自身は、小学校入学時からたまたま武道を習いました。しかし、小学校半ばには楽しさを感じなくなり、行くのが億劫になっていました。その時に親から提示されたのは、「小学校卒業までは行くように」です。まだ小学生、特に過保護な方ではありましたから、結局、それに対して疑問は抱かず、卒業まで習ってから辞めました。なぜ、親がそう言ったのかは分かりません。きっとタレントさんのそれらのように、「中途半端で辞める」ことに美しさを感じなかったのでしょう。
 そして私は中学校入学後、マイナーなスポーツに出会い、それがとても楽しく大学まで続けます。年数にすると10年間、区切りも良かったため、個人的にはやり切ったと思っています。
 逆に、私には外国籍の友人がいます。日本生まれ日本育ちで、通った学校も公立です。彼は、家庭が裕福だったということもありますが、様々なスポーツ、文化的な習い事を幼少期からやっていたようでした。親御さんが、日本ならではの「やりきる」に特にこだわっていないのだと改めて思いました。その友人は、私がそのマイナースポーツを10年間やったことに、「すごいね。」と言ってくれることはありましたが、彼こそ、器用に様々なことを平均点くらいにこなすことができるため、私は羨ましかったです。
 だから「やり切る」ことが美しいかどうかは別にして、教育においてそれはさほど重要なことではないのではないか、と考えます。

●「やり切る」なんて人によって違う

 私は「マイナースポーツに出あい、大学まで10年間続け、やり切ったと思う」と言いました。しかし、社会人になってもまだ続けている友人がいます。また、その道のプロも世界にはいます。そのような人から見ればどうなのでしょう。私はやり切ったのでしょうか。
 結局、やり切るかどうかなんて人によってとらえ方が違います。野球ならば、プロになり引退まで続けることでしょうか。また、プロになっても挫折した、プロに入れなかった、等はやり切っていないのでしょうか。悔しさ滲ませながら「やり切った」と言う選手もいれば、「もう少しやりたかった」と思いを吐露する選手もいるでしょう。
 「やり切る」なんてそもそも人によって違うし、捉え方と考え方の違いです。特段、大切なことではありません。親であっても教師であっても、教育においてそれを一方的に子どもに求めるのは、違うと考えます。

●大切なのは対話&自己理解

 話は習い事に戻ります。「やり切る」ことが大切でないならば、習い事を辞めたいという子にどう関われば良いでしょうか。
 キーワードは、子どもの"自己理解"です。
 子どもが、「習い事が嫌」の壁に直面したとき、自己理解のチャンスです。大人がどうしても「まだ続けて欲しい。諦めて欲しくない。」という価値観なのであれば、それをちゃんと子供に伝えて欲しいです。
 「どういうところが苦手なの?」
 「他にやりたこと、好きなことはなに?」
 「私は、今諦めて欲しくはないんだけど、どうする?」
 「君が自分に合っている習い事を見つけて極めていく姿を見たいんだけど、一緒に見つけない?」
 タレントさんや友人の子育ての話を聞いていると、このような子ども自身の自己理解を促す対話が少し足りないと感じます。人生を幸せにしていくためには、"合わないことをやり切ること"よりも、"自分の好きや得意を見つける"ことのほうが優位です。

●まとめ

 成人年齢は現在18歳。政治参加をはじめ、社会人として成熟することが2年早く求められる時代です。また、人口減少は進み、どの業界も働き手不足です。自分の強み弱みをちゃんと理解し、強みを生かしていくスキルがなければ、心と体を壊してしまいかねませんし、甘い言葉に騙されるやもしれません。自分軸でいることが、これまで以上に幸せの鍵になります。
 子育てだけでなく、学校も、このような課題に真摯に向き合い子どもを育んでいかなければなりません。「やり切る」ことを美しいと感じても、それを目的にしてはいけません。子どもと対話をし、子どもが子どもなりに考えていることに耳を傾けたいです。子どもが主体的に生きていくためにもっと大切なことを学ぶ。『習い事』をそのためのチャンスにして欲しいと思います。



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