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帯留は江戸時代からあったのではない
時代物の漫画を描かれる方にご注意です!明治時代より前の漫画に帯留はNGです。お洒落な感じで、振袖などに合わせてみたい衝動にかられるかもしれませんが、帯留ができたのは明治維新以降です.あったとしても、それは一部の好事家の趣味で、ファッションの主役を担うという立ち位置ではありませんでした。そもそも、江戸時代って、帯留はおろか、帯締めも使わない着付けが普及していました。帯締めを使う帯結びがすくなかったのです。帯留が入り込む余地がありませんでした。
これは画家の幸野楳嶺が描いた花街の女性の帯部分です。明治時代の帯留はこのようなものでした。着物の装飾品としての帯留の歴史は比較的新しいものです。
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明治時代になっての廃刀令の発布や武士階級の没落に伴い、刀の装飾にかかわってた職人たちの仕事がなくなり、その技術をいかして女性向けの装飾品を作ったのが始まりと言われています。
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最初の帯留は、刀の鍔や目抜の錺をそのまま応用して、紐を通せるようにしたものでした。
時代が下るにしたがって、女性好みの意匠が作られるようになりました。
真珠・珊瑚などの貴石が使用された帯留も登場しました。その後、ダイヤモンドやルビーなどの宝石を使った帯留も出現し、昭和期にはいると、着物の装飾品の一部として定着しました。
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明治後期からは、根付や櫛、かんざしなど各種の装飾品を作っていた職人も帯留に参入し、まさに帯留の黄金時代が到来します。作者の銘を入れた素晴らしい作品が、象牙・陶器でも制作されました。まさに「手のひらの芸術」と呼べる名作が多く見られます。 名匠の作品でなくとも、昭和50年頃まで着物を着る人が多かった時代には、各地の土産物には必ず帯留がありました。素材もその土地の産品を活かし、竹や貝殻、べっ甲などが求めやすい価格で販売されていました。 しかし、この帯留も文化、着物を着る人々の数が少なくなるとともに、衰退の傾向を見せ始めます。
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特定非営利活動法人京都古布保存会は、この帯留文化の再興を目指し、2013年から美術工芸系の学生を対象としたコンテストを開催してまいりました。
残念なことに9年続いたこのコンテストも、コロナウイルス感染症の流行などで中止を余儀なくされました。
この度、主宰を「一般社団法人昭和きもの愛好会」に委ね、作家を対象とした公募展を開催させていただく運びとなりました。
一般社団法人昭和きもの愛好会は着物文化の振興に加え、着物にかかわる作家の支援を目的としております。
できるだけ多くの作家の方々にご応募をいただき、皆さまに帯留のすばらしさを再認識していただければと思っております。まだ準備の段階ですが、新しい帯留を公募して、皆さまにみていただく日も遠くないと思っております。
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【参考文献】
遠藤武「近世帯留考」『遠藤武著作集』(第一巻)服飾編文化出版局、一九八五年
鷹司綸子「装身具」『服飾近代史』雄山閣、一九七〇年
高橋雅夫編著『守貞謾稿図版集成』雄山閣、二〇〇二年〔本稿は平成十三年(二〇〇匸刊『美しいキモノ(春号)』(アシェット婦人画報社)収載「帯留誕生物語」に加筆し、再構成したものである〕
似内惠子(一般社団法人昭和きもの愛好会理事)
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