着物リフォームの歴史 その6・どのように?(How)
着物リフォームが盛んになった経緯は、今までの原稿でおおよそ理解をしていただけたと思います。20年くらいかかって徐々に始まり、徐々に衰退したこのブーム、ここではどのように衰退に向かったかを解析したいと思います。
終わるリフォームブーム
筆者は着物リフォームブームが終わった理由の最たるものは、「テイストの変化」であると思います。リフォームの洋服を購入していた層は、徐々に高齢化して外を出歩けなくなってゆきます。そして後継者となるべき層が育ちませんでした。わかりやすく言えば、「お客さんがいなくなった」のが一番の理由です。
更に言えば、この層は広い意味で手作りや布に関心を持ちませんでした。いわゆる「団塊の世代」の方々は、あまりものを作ることに興味がありません。集団で行動することの方に関心があります。洋裁教育もこの人々が育った時代はもう下火になっていました。
彼らはまた、着物を着ることにも関心を示しません。「作るのも、買うのも興味がない世代」が出現したのです。こうしてブームは終わり、ガラパゴス的に遠隔地や離島で残る着物リフォームをたまに見かける程度となりました。
着物リフォームはもう再興しないのか?
下の画像は、先日百合庵で開催された「素材市」に出展された、木花咲楽さんの作品です。
久々にリフォーム作品を拝見しました。木花咲楽さんの作品はどれも手の届く価格です。一時のような「最低でも一着2万円」というようなことはありません。
「リフォームにも新しい波が来ている」ことを感じます。着物が自宅にある限り、リフォームの注文が全くなくなることがありません。木花咲楽さんはそのあたりをよく見極め、上手に注文を取られているように思います。
リフォームは楽しみのために
一方、本当に自分の楽しみのためにリフォームをする方もあります。最近はそうした方が増えているように思われます。
これはリフォームが本業でない方のコートです。売る意志がないので発想が自由です。これからはこうした作品が増えてくるのではないでしょうか。オリジナルの作品には、人のデザインをコピーしたり、真似したりしない品の良さがあります。
新しいリフォームの本も出ています。
特にこの銘仙リフォームの本が面白かったです。着物が新しい形をとって利用されるのは、銘仙コレクターとして嬉しい限りです。
SDGsとしての着物リフォーム
最近は大学の家政学科や生活文化を専攻する人々の間で、着物リフォームが一つのブームになっています。これは食品の廃棄を防ぐのと同じ視点で行われており、20代・30代の人々が主体になっています。リフォームの作品が利益をもたらすので制作するのではなく、モノの利用・資源の活用という観点から行われています。より高い立場から着物リフォームを見ている訳です。
筆者もこうした観点は素晴らしいと思います。食品に「エコマイル」という視点があるなら、衣服にもそれがあってよいと思います。石油からできた繊維は原料の搬送に多くのエネルギーを使っています。
お祖母さんの浴衣からできたシャツは、箪笥からミシン台へと、家庭の中を移動しているだけです。
今後、新しく参入する方々のセンスとパワーによるリフォームが、SDGsの実現に役立つことを願っています。
似内惠子(一般社団法人昭和きもの愛好会理事)
(この原稿の著作権は昭和きもの愛好会に属します。無断転載を禁じます)
一般社団法人昭和きもの愛好会
「昭和きもの愛好会」は2018年12月、様々なアイデアが出る中で設立されました。以降2年間、任意団体として活動して参りました。
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一般社団法人昭和きもの愛好会は昭和の戦後に着目し、その時代に制作生産された着物の技術力、デザイン性などを調査することで、その時代背景も考察しています。
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