日本に必要なのは、東京の機能分散ではなく、強烈なライバル都市である理由【1】
地方創生でも語られるのは、東京一極集中問題ですが、日本に必要なのは東京vs地方ではないとおもうんですね。というのも、東京とそれ以外の地方という扱いがあまりに雑であり、むしろ東京の機能の一部を地方にまんべんなく分散させたとして、じゃ東京は弱くなるとしても、日本として良くなるかと言えば、おそらく「単に機能が分散して生産性がさらに落ち込んで、日本の国際競争力がさらに落ち込む」ことになり、さらにいえば、「地方を支えるだけの交付金負担などを東京が行えなくなっていく」ということになれば、東京も地方も共に没落していくだけという話になるというところでもあります。
以下は、一橋ビジネスレビューにも寄稿した内容をもとにして加筆修正した東京成長論です。でもってそこにあるのは、東京の自己改革を推進するためには、地方に機能分散させることではなく、東京が脅威に感じる第二の国内都市形成であるというお話です。ま、単刀直入にいえば「大阪しゃんとせい」という話であります。
大大阪があってこその、東京の革新があった。
そもそも戦前に目を向けると地方の多様な発展があったわけですが、その中でも東京と大阪の競争構造は非常に面白いものがあります。大阪(関西)はむしろ東京(京浜)より官民ともに先進的な地域でもありました。鉄道敷設などは関西からを端を発し、特に私鉄においては小林一三の業績などは私が言うまでもなく、また行政においても関一など名市長による大阪市域拡大や御堂筋などの先進的な都市開発は現代でも語り草になるほどです。
こちらの日本の都市人口推移の長期変化についての動画をみると、大阪が途中で一気に東京に追いつき追い越しという競争構造が分かります。その後に東京のみならず、首都圏の成長に凌駕されていってしまうわけですが、そのあたりが一極集中的な流れが決定的になってしまっているとも幹事されます。同時に、あとは、関西圏とその他の地方では全くのボリューム的な差は未だに大きいというのも明らかです。東京や首都圏の競争力のためには適切な競争環境が必要であり、それは関西に託されている点が明らかです。
関東が関東大震災によって焼け出された人たちが、大阪にも流れ込み、東京市を抜いて大阪市が日本一の都市になったこともあった、大大阪時代もあったわけです。で、これは単に東京と大阪だけの話ではなく、日本の二大都市が適切な都市競争をし、日本が先進的なイノベーションを官民ともに作り出していたという状況そのものが大変重要だったと言えます。
当然関東大震災からの帝都復興においても、大阪などが推進していた先進的なインフラ開発、民活などの方向性は強く意識され、東京市はさらに大胆な政策を打ち出すわけです。これは国際情勢の影響も当然ありましたが、国内においてもなお日本最大の都市というものが競争環境にあった時代のよいところです。
しかし今の東京はどうでしょうか。単に人が集まるから内需的なプラス、さらに言えば労働力もプラスということで人確保もしやすいという利点などがあるものの、それを超えるだけの革新的な都市政策があるか、といえば極めて乏しいです。従来は東京成長の一定の足かせとしていた容積率規制を緩和した都市再生法などによって、押さえつけられていた需要がさらに拡大する再開発はあるものの、供給そのものを拡大しているだけで、従来の「東京でなくてはならない需要」が国際的に作られているか、といえばそうでもありません。その結果としての、東京の成長率は微妙だし、古いインフラの更新もそれほど何か革新的なものになってもいません。だけど、余裕があるから、別にいい、そうなってしまっているわけです。東京に必要なのは機能分散だなんだではなく、適切な都市間競争の相手となるライバルなのです。
それでは、東京の低成長の問題から必要なライバル政策などについて整理していきましょう。
東京の低成長問題のリアル
長らく東京一極集中という議論がなされる一方で、「東京の低成長問題」についてはあまり議論されない。何か東京が人口を集めているので、日本一成長している都市が未だに東京のように思われがちであるが、昭和の時代のような高成長都市としての東京の役割は終わっている。
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