書籍「平成都市計画史:転換期の30年間が残したもの・受け継ぐもの」を読んで感じる、平成という時代の変化とジレンマ。
饗庭先生より頂いた一冊を今朝拝読。平成を舞台にしつつも、その前の時代からの都市計画骨子について時系列で整理していくというかなり超大作な一冊になっています。平成も31年ありましたしね。そして日本経済にとっては戦後昭和の成功、そして熱狂という中から、バブル崩壊後の低迷という長いトンネルを潜ることになる平成。ただ考えてみると、昭和の負の遺産処理に明け暮れて失われてしまったという点も多くあります。
都市計画についても、時代の変化に追いつくのが必死という感はあります。そもそも線引と容積率という2つの呪いという基本的な都市計画における枠組みがありながらも、特に日本における戦後土地神話に翻弄された土地利用のあり方、東京と地方との産業力格差是正のために行われた工場分散などの政策など複雑に絡み合い、また我々個々人の社会における民主的アプローチ(平成におけるコミュニティやNPO推進というもの)に至るまでのフレーム整理をされているので、読みつつ色々と考えさせられるところです。
特にバブル崩壊によってある意味、金融システム立て直しが最優先されたことによって失われた時間というものは都市経営の成熟にも大いなる問題を投げかけているのだと考えると、本当に経済、産業分野の視点が大いに都市経営にも影響を与えている一方で、そのあたりの横断的な研究が未だ少ない印象も持ちます。経済学者による都市経済分析、経営学における産業研究、人々の生活などの社会文化的な研究、そこに都市計画というものが重なるよう学際的なものが改めて視点として必要になっていますね。そういう研究プロジェクトとか走っているのかな。
ただ2010年前後の欧州での都市調査をしている時とかには、都市再生法については非常に海外の都市計画、ディべの関係者にはよく聞かれましたね。あれだけ経済低迷と言われる日本において、なぜ東京はあれだけのリニューアルが図られるのか。その秘密の一つが都市再生法などの枠組みなのか、みたいな話が言われました。まぁこれもまた容積率という都市計画の基本的なところの緩和措置、特に東京などは工場三法などの時代からの開発規制、そしてバブル経済でのあがりすぎた土地代みたいなものが崩れて底打つなど時代としての流れが合って圧力が一気に開放されたのが都市再生の文脈だったと言えるでしょう。土地の高度利用が中長期でどのようになるのか、は開発施設の老朽化などと共に向き合うことになり、再々開発、再々再開発などがどこまで可能か、そのあたりに依存するように思います。
本書は各章で参考文献も細かく書かれ、元国交省の佐々木さん等も本書について出す前にレビューもされているようでそういう意味では平成を制度設計の現場でみてきた人たちのダイアログ的にも頭に入れてとく上で損のない一冊です。あれ!あの頃あれってどういう制度?みたいなのがわかります。
急激な開発、バブル崩壊、大震災、地方の急激な衰退など戦後の昭和にはなかったような描けない問題が次々とでてきたのが平成でもあり、多くの方が苦心の中で向き合いつつ、なかなか成果が見えない苦しい時代だったようにも思われます。
令和の都市計画はどのような発展を果たすのか、最後は考えを巡らせることになりました。
今回の本書より先に出ているこちらの「都市をたたむ」は著者も書かれているように提案的な内容でした。それを補強する意味で歴史的な制度変化などについてまとめているのが今回の一冊という位置づけでもあり、併せて読むとよりここでの提言の著者の意図をつかみやすいと思います。
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