AIと科学の進歩に翻弄されているように感じるけれども
2024年のノーベル賞では、物理学賞と化学賞がAI関連での受賞だったそうだ。化学賞では、AIを使ってタンパク質の構造を素早く予測できるようになり、新しいタンパク質を設計できるようになるとのことで、これからまた病気の解明や新しい薬の開発が、高速化していくとのこと。
何でも、今まで人の手で一つ一つアミノ酸の組み合わせを試行錯誤しながら探っていたのが、AIを使うことで、今までとは比べ物にならないほどのスピードで、高い精度でアミノ酸を組み合わせて、タンパク質を設計できるという。
なんだか、このニュースを見て、私は生来のあまのじゃくが頭をもたげてしまった。
「なんだよ、また新しい病気を作って病人を増やすのか?」
医学の進歩って、いろいろな病気の謎を解明して治療できるようにして着ているけれども、研究が進んでも進んでも、病気の種類の総量は変わらず、病人の数も実は減っていないそうだ。
医学の進歩で寿命が伸びて高齢者が増えたことが病人が減らない原因だともいえるけれども、今までは「気のせい」とか「神経過敏じゃん」って言われていたような症状にも、病名がつくようになり、薬などの治療法が開発されて、とにかく病気の種類は昔よりも増えているはずだ。
科学はどこまで進んでいけばいいのか?AIはシンギュラリティを起こしてやっぱり人類を席巻してしまうのか?遺伝子操作で人間は自由に生まれてくる子どもの命を操作できるようになってしまうのか?
あ~あ、恐ろしや恐ろしや、どこかで科学の暴走を止めなければ、この地球はやがて壊れてしまうだろう………
なんて方向に、相変わらず思考が流れていきそうになっている自分にふと気がつく。私自身はその科学の恩恵を受けていないのかと、医学の進化の恩恵を受けていないのかと。
いや、思い切り受けているじゃないかと。緑内障の薬も、更年期障害対策も、全部、科学や医学の進歩のおかげじゃないかと。
緑内障の薬は60年くらい前に登場したという。それまでは手術はあったようだが、眼圧を薬で調整しながら失明の時期を遅らせることはできなかったようだ。
体調に不安を感じて病院へ駆け込めば、大抵はあった薬を処方してもらうことで解決できる。神経からくる胃痛だと思っていても、市販薬では解決できないときには、胃腸専門クリニックで処方してもらうとたいていすぐに治ってしまう。
女性ホルモンの減少から変形性関節炎になりかけていると診断された時に、サプリのエクオールを勧められて飲み始めたら関節痛は進行はしなくなった。変形しかけた部分が治ることはなさそうだけど、痛みはひどくならないので早めにエクオールを始めたことでそれ以上の変形が進んでいないようだ。
エクオールってものが発見されたのはここ20年くらいのことで、サプリとして発売されたのも10年くらい前のことのようだけど、これがなければ、私は関節を温めたりストレッチしたり痛み止めを塗ったりする程度しか対処できなかったはずだ。
本来、身体の経年劣化で進んでいくべき症状を食い止めていられるのは、それこそ医学や科学の進歩のお陰だろう。
そう考えると、自分の思考の小ささ、狭量さから、ついうっかりと科学批判を始めてしまいそうになるけど、その恩恵を自分自身が受けているという矛盾に、やはり科学の最前線で戦い続けてくれている研究員の皆様には、深い感謝の念を抱かずにはいられないと感じるのであった。