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【無料】仏教入門ノート05 お釈迦さまのご生涯① お釈迦さまの誕生

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さて、前回までは宗教全般についてのことやお釈迦さまがお生まれになる前のインドの話など、仏教入門と銘打っておきながら全然お釈迦さまが登場しませんでした。
今回からはちゃんとお釈迦さまが登場されます。

お釈迦さまの誕生年

お釈迦さまがお生まれになったのは紀元前5世紀頃です。
しかし、具体的に何年にお生まれになったかということはわかっていません。
いくつかの説がありますが決め手はなく、正確な数字は今でもわかっていません。
とにかく相当な昔ですから、良くわからないことが沢山あるのです。

かつては、
「お釈迦さまって、伝説上・空想上の人物で、本当は居なかったんじゃないの?」
とさえ言われていました。

しかし、ルンビニーという場所でアショーカ王が立てた石の柱が見されたことによって、実在の人物であったことが証明されました。

その石柱に、
「ここはお釈迦さまが生まれた場所だから特別に税金を免除するよ」
と彫られていたからです。

この発見によって、
「ほらやっぱりお釈迦いたんじゃん!!」
となったわけです。

まあ、存在を怪しむ人が居ても、仏教徒は「お釈迦さまは居た」もしくは、「もし歴史上存在しなかったとしても、仏教の教え的には何の問題もない」と考えていたでしょうけどね。

そんなお釈迦さまは、シャカ族という民族の国に王族として誕生されました。
シャカ国は大きな国ではありませんでしたが、農業国として豊かな国であったようです。

お父さんは、スッドーダナ王(浄飯王)、お母さんはマーヤー夫人(摩耶夫人)という方でした。

さて

ここからは釈迦八相(しゃかはっそう)という、お釈迦さまの人生のそれぞれの場面をあらわす八つの相に基づいてお話します。

はじまり はじまり~~
※物語調で書きますので多分にフィクションを含みます。

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釈迦八相①降兜率(ごうとそつ)

インドの北、ヒマラヤ山脈の南側に、シャカ族という民族が住む小さな国がありました。
国民はみんな真面目で働き者でした。

王さまとお后さまは二人とも優しいお方で、国民からも愛されていました。
二人は世継ぎを切望していましたが、なかなかその予兆はありませんでした。

その二人の様子を兜率天(とそつてん)という世界で修行していた菩薩さまが見ていました。
「あの二人は子どもを望んでいるようだ。そして、とても優しい人たちだ。
私は、もうすぐ菩薩としての命を終えようとしている。そうだ、次の生はあの二人の子として生まれることにしよう。」
そう言うと、菩薩は六本の牙をもった白象のすがたに変わりました。

白象は天界からお后さまのところへと降りていきました。


釈迦八相②托胎(たくたい)

その時、お后さまのマーヤー夫人はお城で不思議な夢を見ていました。

お妃さまは夢の中で、黄金の宮殿の寝室に横たわって天井を眺めていました。
すると、寝室にモヤモヤとした真っ白な霧が立ち込め始めたのです。

「どうしたことだろう?」

と思っていると、その霧は一箇所に集まり、何かの形を作っていきました。

そこには六本のキバを持った白い象が立っていました。
象はシッカリとした足取りで寝室の中を右回りに三度回りました。
そして、マーヤー夫人を見つめて言いました。

「マーヤーよ。わたしはあなたの子どもとして生まれましょう。」

そう言い終わるやいなや、象はまた霧のように形を無くして、今度は夫人の右脇から身体の中にスーッと入っていきました。

そこでお妃さまは目を覚ましました。

王さまに夢の話を聞かせると、王さまは、
「その夢は、もうすぐ世継ぎが生まれるというお告げに違いない!」
と大変に喜びました。

そして、その夢の通り、夫人は懐妊していたのでした。


釈迦八相③出胎(しゅったい)

お妃さまのお腹は順調に育ち大きくなっていきました。

臨月に入り、出産のためにお妃さまはお付きの人たちとともに故郷へ帰ることにしました。
その道中にはルンビニーという場所がありました。

ルンビニーには花園があり、花々が美しく咲き誇っていました。
一行は花園で少し休憩することにしました。

たくさんの花の中で、特にアショーカ(ムユウジュ)の赤い花が見事に咲いていました。
マーヤー夫人はその花を良くみようとその木に歩み寄り、右の手を伸ばし木に触れました。

その瞬間のことです。
夫人の右脇から、眩いばかりの光が溢れ出しました。
そして、その光の中から一人の赤ん坊が生まれ落ちたのです。

その途端、雲一つない晴天から雨が降りそそぎました。その雨はただの雨ではなく、蜜のように甘い甘露の雨でした。
雨はまるで天が用意した産湯のように、赤ん坊の身体を流し清めました。

そして、咲き誇る花々が申し合わせたように一斉に花びらを散らし、あたり一面が様々な花びらの色で一杯になりました。それはまるで、極彩色の吹雪のようでした。

眩い光の中、花びらと甘露の雨が入り乱れ舞い散るその不思議で美しい光景に、マーヤー夫人をはじめとしてその場に居た人々はただただ驚き立ち尽くしていました。

花びらはまるで金襴の煌びやかな布のように集まり、柔らかく赤ん坊を包み込みました。
赤ん坊はそのまま、ゆっくりと地上に降り立ちました。

そして、シッカリとした足取りで東西南北の方向に七歩歩いたかと思うと、右手で天を、左手で地を指さしました。
その時、そこにいる全員の頭の中に大きな声が鳴り響いたのです。

「私は、この世界でただ一人、尊い教えを説き示す人となる。
必ずや、この世界の全ての生きとし生けるものの苦しみを安んずる教えを説くことになるであろう。」

いつの間にか、その場に居た誰もがその神々しい姿に跪いて合掌していました。

しばらくすると、その神々しい光景はスッとおさまり、今まで通りの普通の花園に変わっていました。
あたりは静まり返り、皆が呆気に取られて立ち尽くしていると、そこに元気な赤ん坊の鳴き声が鳴り響きました。

お妃さまはそれを聞くと我に返り、泣き叫ぶ我が子に駆け寄り抱きあげました。

赤ん坊は先ほどの神々しい光景が嘘のであったかのように、普通の赤ん坊になっていました。玉のように美しい男の子でした。
お妃さまが乳を飲ませると、赤ん坊はすぐにスヤスヤと眠ってしまいました。

お妃さまの一行は王宮に戻り、一部始終を王さまに話しました。
それを聞いた王様は狂喜乱舞して喜びました。


しばらくすると、王宮にアシタ仙人という徳の高い有名な仙人が訪れて来ました。
王さまが理由を聞くと、
「尊い人が生まれたという知らせを感じたので会いに来ました」
とアシタ仙人が言うではありませんか。

王さまは、
「なるほど、有名なあなたが言うならそれは嬉しいことだ。どれ、我が後継ぎとなるこの王子の未来を占ってはくれないか?」
とアシタ仙人にたのみました。

その申し出を快諾したアシタ仙人は、複雑な儀式で王子の将来を占いはじめました。

すると、どうしたことでしょう。年老いたアシタ仙人の目から大粒の涙がボロボロとこぼれおち、まるで子どものように声をあげて泣き出したではありませんか。

それを見た王さまは驚き、
「どうした? 何か悪い結果が出たのか?」
と心配して尋ねると、アシタ仙人は、

「とんでもない。
王さま、このお方は尊いお方です。この世の中で最も素晴らしいお方です。
このお方は、世界の全てを支配する王さまになられるか、もしくは、悟りを開き人々の苦しみを安んずるブッダとなられるお方です。」

「では、なぜあなたはそのように泣いているのだ?」

「このお方があまりにも尊いからです。
私はもう年老いてしまいました。
このお方が立派になられる日を、この目で見ることは叶わないでしょう。
これほどまでに尊いお方が生まれたのに、私はこのお方が大人に成られる日には会えないのだと知って、私は悲しくて泣いているのです。」

そういうとアシタ仙人は、また大粒の涙を流し、泣き叫んだのでした。

その夜、王さまは宮殿の寝室でマーヤー夫人に話をしました。

「マーヤーよ。お前は素晴らしい子を産んでくれた。これ以上にない喜びだ。
しかし、私は不安なのだ。
あの子がいつか世界を支配する人物になってくれるなら、私は王としてそれ以上に嬉しいことはない。
このシャカ族の国が世界の支配者になるのだから。
しかし、アシタ仙人が言うように、あの子が出家し、いつかブッダになってしまったならどうだろうか。
あの子がブッダになり、このシャカ族の王に成らないと言い出したらと思うと私は不安でたまらないのだ。」

それを聞き、お妃さまは言いました。

「王さま、お気持ちはお察しいたします。
でも、私は母として、とにかくあの子を元気に育てたいと思います。
あの子が幸せていてくれるなら、私はそれ以上求めません。」

そう言うと、マーヤー夫人は王さまの不安気な頬に手を添え、そっと王さまを抱き寄せました。

しかし、その時、王はハッと気付きました。
「マーヤーよ!お前の身体はまるで燃えているようではないか!
何という熱さだ!
何故今までだまっていたのだ!?」

「王さま、私は大丈夫です。
少し疲れただけですから…。」

そう言った途端に、お妃さまは力なくその場に倒れてしまいました。

宮殿中から人々が集まり、国中の医者が病状が少しでも良くなるように手を尽しました。
しかし、それからほんの数日後にお妃さまはあっけなく息を引き取ってしまいました。

王さまは嘆き悲しみ、シャカ族の全ての人がお后さまの死を悼みました。

赤ん坊は乳母たちに抱かれながら、母の葬列をジッと見つめていました。

悲しいことでしたが、シッダールタと名付けられた赤ん坊はすくすくと育ちました。
シッダールタはやがて少年となり、青年となりました。

大変に賢く武道にも秀でた立派な王子様でした。
シャカ族の人々は、立派に育っていく王子様を見てシャカ族の繁栄を確信していました。

しかし、その中で王さまだけはいつも心配していたのでした。

申し分なく立派に育っていくシッダールタでしたが、幼い頃に母をなくしたせいか、物思いにふける内向的な一面を持っていたのです。
王さまはそれにただ一人気付いていました。

ある日、シャカ族の人々が田畑を耕しているのを、シッダールタは見つめていました。
すると、耕された土の中から一匹の虫が這い出てきました。
その虫がほんの少しうごめいていると、そこに小さな鳥がやってきて、あっという間に虫は食べられてしまったのです。

シッダールタが驚いていると、今度は大きな鳥が凄いスピードで舞い降りてきて、小さな鳥をカギ爪で捉え、天高く連れ去っていってしまいました。

ほんのわずかな時間に、凄まじい命の奪い合いを見てしまったシッダールタは、
「生き物は食べあっている…。殺し合って生きているのだ。」
とつぶやくと、憂いに沈んで自室へと帰っていきました。

その後ろ姿を見ていた王さまは、シッダールタが王にならずに、出家してブッダに成ってしまうのではないかと、とても心配しました。

王族は贅沢な暮らしをすることができますが、もし戦争が起これば兵隊たちを統率して敵国の兵隊に打ち勝たなくてはないのです。
王さまになるということは、命のやりとりをしなければならないということでもあります。

「はたして、あの優しいシッダールタが、王になれるのだろうか…。
兵たちに、敵を殺せと命令することができるだろうか…。」

不安に駆られた王さまは、大臣たちを集めて相談することにしました。

つづく

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今回はお釈迦さまの人生について、物語風に話してみました。
多分にフィクションが入っていますので、正確ではありませんが、楽しんでいただければ幸いです。

荒唐無稽な場面が多いのですが、それについてもちゃんと理由があります。
それについては次回以降に説明していこうと思います。

次回もまたよろしければ読んでみてくださいね。

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