天冥の標1,2を読んでみて
現在早川書房で天冥の標1「メニ―・メニー・シープ」2「救世群」の電子版無料配信を行っています。そして読んでみました。
結論を言うと、やや性的描写が多いがSFというジャンルの自由さを生かした面白い作品。だと感じました。そして「救世群」まで読んでなぜ、早川が1巻無料公開ではなく、1,2巻の無料公開を決めたのかが分かったような気がしました。1,2巻で両極端に振れる世界観と軸となる要素の片鱗を見せるための1,2巻無料公開だったのでしょう。
1巻の舞台設定は西暦2800年代の植民地メニ―・メニー・シープ。
技術後退した社会で領主の弾圧に抵抗するストーリーです。さまざまな不思議な性質をもった種族など謎を多く振りまくストーリーでした。
そして、2巻では時代設定が1巻の800年前に戻る。部隊は現代の地球。
1巻で振りまいた謎のほとんどを無視してパンデミック物のストーリーが始まります。
しかも、(というより当然)作風が全然違う。時々見る、作家が一つの世界観を複数のシリーズ作品で非明示的に共有させるという手法がありますが、そのような作品群のほうがシリーズっぽいと思うほど共通部分の少ない2作品でした。そして数少ない共通の要素が今後の作品でどう広がっていくのか期待が広がっていきます。
読む上では性的描写がやや多い点とキャラクターへの過度な感情移入はお勧めしないという点を心にとどめておくといい気がします。
性的描写に関しては多いといっても抑制的でストーリー進行に必要な要素として組み込まれているように感じました。これを理由に読むのを控えるのはもったいないと思います。
キャラクターの過度な感情移入に関してはシリーズ各巻のあらすじを読んでもらえばわかるようにとても1人のキャラクターにフォーカスするタイプの作品ではありません。つまり、メインのキャラが難局を切り抜ける保証なんてどこにもないわけです。少なくとも1,2巻はそうでした。
まだ10巻17冊のうちの2巻3冊しか読んでいないので書けるのはこの程度ですが、残りも必ず読みます。特に2巻は今だからこそ読むべき話です。