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美容師として生計を立てるということ
日本において「美容師になる」ということはお金の面でどういうことなのか、若手美容師さんや美容学生さんに知っておいて欲しいことがある。
就活するときに色々サロン選びの要素があるものの、お金に関してそこまでしっかり調べないのでは。
アシスタントの時って手取りで給料いくらぐらい?社会保険は?年金は?
実家暮らし?一人暮らしする?
トップスタイリストになって月○○万円売り上げたときの給料は?
一生美容師?副業も?転職は?
自分で店を持つ?雇われ続ける?・・・
もちろん就活で面接時は、お金のことよりメンタル的なところが採用に響くので、美容に対するやる気や姿勢を前面に出す。そしてお金はそこまで大事ではないアピールをする。
だけれども仕事として美容師をする以上、お金のことは常に意識した方がいい。
大事だ。
美容業界は実際の所、食べていけずに辞めていく人が多い。悲しい現実だ。
美容をちゃんと楽しむためにはお金も多少余裕がないと無理だ。
経験上お金の苦労は精神面にとても響く。
心身ともに削られていく。
正しいお金の知識を身につけてないと病んでいく。
アシスタント時初任給
意気揚々とヘアサロンに就職し、サロンワークに励む。
毎日毎晩レッスンをする。
接客の難しさを知る。
数々の新しい経験をして切磋琢磨していくのだが、スタイリストになるまでに問題が起こる。
就職とともに初めて1人暮らしをしている人は特にだが、金銭的に辛い時期が続き疲弊していくのだ。
もちろん全員がそうというわけでは無い。
だが多くの人は周りと自分を比べてしまう。
そうなるとしんどい。
日本人の悪いところだが周りとの格差を以上に気にする傾向がある。
自分は月30万稼いでいて同期が月25万稼いでる場合と、自分が月40万稼いでいて同期が月80万稼いでいたらとすると皆さんはどう感じるだろうか。
同じ生活水準だとすると後者の方が余裕があるが、満足度は前者の方が高い傾向にある。
海外だとそんなことはないらしく自分がどうかという事が大事で他者と比べたりはしない。
比べても仕方がない。
成功例として参考にするのはいいが比べたところで給料は上がらない。
さて初任給についてだが、皆さんは自分が働いている場所での最低時給を知っているだろうか。
ここでは僕が働いている大阪府を例にしよう。ちなみに最低時給は都道府県ごとに決められる。
大阪府の最低時給は2019年10月1日以降964円となった。
つまり週休2日(ここでは月22日で仮計算する)、1日8時間労働(10時オープン18:00受付終了)、前後に開店準備や閉店業務についてはややこしくなるので省く。(みなし残業などや各種手当が上乗せされる)
964円×22日×8時間= 169,664円
これが基本給となる。
給料明細を見たときに基本給がこれを下回っていると経営者側がアウトだ。
ここから残業代や休日出勤などの各種手当が上乗せされ、保険料や年金、所得税などが引かれる。
そうして残ったものが支給額となる。足して引かれて結局は基本給ぐらいが総支給額だろうか。
さあ、皆さんはこの額を見てどう思うだろうか。少ないと感じる人もいれば十分という人もいるだろう。
ちなみにヘアサロンでは、職能給を設定しているの場合が多いので、技術を習得すればするほど給料が上がる。
シャンプー出来るようになったらプラス1000円、カラー塗れるようになったら1000円というような感じだ。(もちろん額はサロンによってまちまちだ)
あとは僕が働いているサロンではアシスタントでもカラーのお客さんを自分で連れてきて担当できるようになっている。
その場合、売上の50%が給料にプラスされる。
もちろん仕上げの技術が、ある程度出来るようになってからだ。
だが頑張った分だけ給料が増えるという分かりやすさはとてもいい。モチベーションを向上・キープするとてもいい要因になる。
スタイリストデビュー後
さてスタイリストとしてようやくスタートに立ってからはさらなる試練がある。
最初はなかなかうまく接客できないだろう。
アシスタントの時と違って責任の重さが変わってくる。
僕もデビュー直後は中々大変だった。
スタイリストになってお客さんを担当するようになると多くの場合、役職手当、歩合給といったものが付加される。
ここで今日1番話をしたいのが歩合給についてだ。
基本給+歩合給だったり、完全歩合だったりいろいろなパターンがあるが、ここでは計算しやすいので以降は完全歩合で話をしていく。
そもそも美容師はお客さんに活かしてもらっている職業だ。
上手い、人気のある、指名客の多い美容師が稼げて優遇されるのは当然だ。
なので美容師の中でも給料はピンキリだ。
歩合率の話
実際にどれぐらい稼げるのかが一番気になるところだが、各サロンによって歩合率は異なるだろう。
最近よく耳にするシェアサロンなどでは歩合率50%など謳っているところもあるが、典型的なごく普通のサロンではおそらくスタイリストの歩合は10%~40%ぐらいだろう。一般的に人件費は40%までに納めないと経費等もあり店が潰れる。
知識がある方は色々な意見があるだろうが、一つの指標としてとりあえずはこの数字をボーダーラインとして覚えておいて欲しい
ちなみにこの10~40%という数字。なぜこんなにも開きがあるのだろうと疑問に思う人もいるだろう。
これはアシスタントの数で決まってくる。
スタイリストがアシスタントを使わずに一人でこなせる人数は決まっている。1日5人×24日勤務=120人と仮定する。
技術力がありスピードがある人はもっと多く担当できるし、下手で遅い人はもちろん少なくなる。
そして全国のヘアサロンの平均客単価が6000円前後だ。
つまり
6000円×120人=720,000円
これが月にアシスタントなしでスタイリスト一人が売り上げる「平均」だとしよう。
これが単純計算で歩合40%なら給料は288,000円になる。
ではアシスタントがいる場合はどうだろう。
アシスタントがいるということは人件費が増える。
一人で120人担当できるところを、アシスタントが一人増えると200人担当できるかもしれない。(アシスタントの技量により変動する)
つまりこうだ。
6000円×200人=1,200,000円(月120万の売り上げ)
この120万円。そのまま40%歩合ならうれしい。480,000円の給料になる。
だがこの中からアシスタントの給料を作らなければならない。
最低自給換算で出した給料は169,664円だった。
つまりこの120万の売り上げに対する人件費計算はこうだ
(本当はもっと複雑だがざっと計算する)
480,000円+169,664円=649,664円
649,664円÷1,200,000円=0.54
なので人件費54%になる、これでは店の経営が成り立っていかない。
そして経営を成り立たせるために歩合率が下がるのだ。
歩合率25%だとどうだろう。
120万×25%=30万円
300,000円+169,664円=469,664円
469,664円÷1,200,000円=0.39
これで人件費39%だ。
やっと経営が成り立つ数字だ。
しかし例えばだがこのアシスタント、かなり優秀でもう少しでスタイリストデビューかもしれない。
とするとアシスタントの給料はもっとあがる。
仮に25万の給料で同じ計算をしてみよう
300,000円(スタイリスト給料)+250,000円(アシスタント給料)=550,000円(人件費)
55万円÷120万=0.458
これで人件費49%だ。
皆さんはこの数字を見てどう思うだろうか。本当はもっと複雑だがこんな感じでヘアサロンの給料は計算されている。
一人のスタイリストが自分一人サロンで月100万売り上げているのと、大規模サロンでアシスタントに手伝ってもらいながら、月500万売り上げているのではどちらが優秀な美容師だろう。
正直これは分からない。
スタイリストとアシスタントの関係性
さて色々計算してみたがスタイリストにとってアシスタントは重要な存在ということがわかっただろう。
ある一定までは自分の努力だけで大丈夫だがそれ以上売り上げを伸ばすためには助けが必要だ。
またアシスタントは基本的に自分で売り上げを作れないため、スタイリストに給料を作ってもらう形になる。
スタイリストの働きやすい状況を作るのが仕事になる。
本来持ちつ持たれつの関係のはずだ。だが変に縦社会の文化が残っているサロンもあるだろう。
たまに耳にするが、スタッフが辞めて人が足りない、店が回らないといったことが、多くのサロンで起こっている。
何も美容業界に限ったことでは無い。
人が辞める原因は殆どが金銭面か人間関係だ。
人の上に立つ人間は部下に対して働いてもらっているという意識を持たなければならない。
ハッキリ言って技術者の意識が強すぎるのだ。上手い稼いでる美容師が偉いという感覚は古い。
さらに経営者に関してはいかにして労働者の働きやすい環境を整えるかがポイントになる。
これは私見だが美容師にとってサロン経営は非常に難しいと思う。
スポーツで名プレーヤーが必ずしも名監督になれるとは限らないのと一緒だ。
この辺りはまた別のノートで詳しく書く予定だ。
技術者としての限界
さて、ここまで読んでいただいた方はもしかしたら美容師になる・続けることを迷ってしまうかもしれない。
だが美容師として稼ぐという事は、お客さんを満足させる事、客単価を上げる事、多くの客数を担当する事が必要だ。
中途半端な技術とコミニュケーション能力では駄目だ。
安売りしてもいけない。
ちゃんとしていれば安定して食べていける収入は得られる。
だがその先を見るならば、経営者にならなければならない。
だが経営については、また美容師のスキルとは別の勉強が必要だ。
恐らく殆どが理想の形にはならず成功しない。
そこで僕は別の提案をしたい。
それはヘアサロンの外で働くことを意識するべきだ。
サロンから離れて出張での背術や、副業的に別のスキルを身につけたりする事をお勧めする。
もちろん美容師として、スキルをしっかり磨いて、中途半端にしてはいけない。
美容師としての収入だけでそれなりに生活に余裕が出てきてからの話にはなる。
そして出来ればクリエイターである事をお勧めする。
僕は美容師の他にカメラマン、ヘアメイク、専門学校講師、など色々な仕事をしている。
美容師だけをしていた時より収入は上がった。
働き方もサロンは月半分の出勤で、もう半分はフリーランスとして講師やカメラマンを中心に活動している。
サロン外での仕事はハイクオリティで高単価なサービスを提供する事を目指し、多くの時間とお金を生み出す事を目的としている。
そしてその時間とお金でまた新しい価値を生み出すのだ。
僕は今美容師としての限界を超える準備を着々と進めている。
行動力がポイント
さぁ皆さん、どうか美容師として成功してください。そしてサロンの外で働ける美容師になってより豊かな生活を送ってください。
サロンの外で働ける美容師は全体の1%です。
どうやったらその1%になれるのかよく考えて下さい。
「働き方改革」は国やシステム的な事ではありません。
自分から動いて下さい。
フリーランスになるなんて雇ってる側からするといい迷惑ですからね。
誰もあなたの生活を豊かにはしてくれません。
自分で行動するしかないです。
どうか稼げない美容師が1人でも減りますように。