会社の組織開発・組織デザインの話と、コーポレートサイトをリニューアルした話。
先日、弊社デザイン会社デスケル(DSCL Inc.)のコーポレートサイトをリニューアルしました。
デスケルは、チームビルディングやプロジェクト推進などに「デザインメソッド」を活用したファシリテーションを提供するデザイン会社です。
また、WEBやUI / UXなどのデジタル領域のデザインも提供しています。
今回は、デスケルのコーポレートサイトをリニューアルするにあたり、社員みんなで会社の定義をまとめ、リブランディングを行いました。
リブランディングの過程で、デスケルの価値観を全体で再確認し、新しく目指す会社の役割を定義し、今後のビジネス展開に向けた方向性をまとめることができました。今回はその過程をお伝えしながら、新しいサイトの紹介ができればと思います。
そもそも僕がデスケルにいる経緯を改めて書くと、以前、僕は小さなデザイン会社、SUPERPOSITION Inc.を運営していました。その後、大学の同級生が経営するTRIAND Inc.と合併し、現在のデスケルが誕生しました。合併と言っても実態はTRIAND Inc.の方に乗っかる形での合併だったので、コンテクストはほぼTRIAND Inc.と言えます。
その合併時にデスケルのコーポレートサイトを制作し、それから今年で5年が経ち、会社の姿も変わりつつあったのでリブランディングをし、今回のリニューアルに至りました。
デスケルのリブランディングの背景。
2018年に合併した際に、役員で社名、ミッション、事業戦略を設定し、それらを「ありたい姿」として当時のサイトにまとめました。
しかしながら、当時は役員がプレイヤーであり(今もバリバリプレイヤーですが)、経営のマインドになかなか移れないことで、浸透施策などがうまくできずに設定した目指すべき方向性は形骸化し、やがて不明瞭になっていきました。
そして、そのまま社内の目指す方向、スキルや思考がバラバラの状態が続きました。実際に僕は当時デスケルが何の会社かという説明がしづらい状況にあり、会社全体でもデスケルの説明はバラバラだったかと思います。
それでも一緒にやってこれた不思議な連帯感がデスケルにはあります。
デスケルの多くは同じ大学に関連した関係性もあり、会社で生むシナジーとは違う繋がりを持っているという強みがあります。
逆にそれゆえにドメスティックになりすぎて、曖昧な状態でも済んでいたところがあったので、今回は再び会社を定義し直し、リブランディングを行うことで社員が一体性を持ちながら、会社の方向性を明確にする必要がありました。
2021年度「人から組み立てる経営企画」をスタート。
まずは会社の方向性を定義する基準についてですが、会社の資産である「ヒト・モノ・カネ」の中で、デスケルにとって最も重要なのは社員である「ヒト」です。
そこで、過去に全社員で実施していたストレングスファインダーの結果を参考にし、更にみんなの意見を集めるアンケートや1on1を行うことで意見を集約し、2021年度は「人から組み立てる経営企画2021」を策定しました。
この経営企画は、全社員の資質調査であるストレングスファインダーを起点に、会社全体で目指すべき方向性をまとめたものです。
当時デスケルは小さな会社であるにも関わらず、橋本と東京で事務所が別々にあったため、シナジー合わせが非常に難しい状況にありました。
現に橋本と東京で思想がバラバラになりつつあったので、このままでは会社としての目標を履行できず、思想の統合もできないと考え、まずは垣根を無くして一緒にやる合理性を示すことが必要だと判断しました。
全社員が受けたストレングスファインダーの結果を見ると、資質グループが各事務所で面白いようにバラバラだったのですが、逆にそれは多様性に溢れているとも言え、それぞれの強みを活かしてお互いが補い合うことができるという考え方が生まれました。
当時コロナ禍ということもありデスケルではリモートワークが進んでいました。それによりますます場所という概念は希薄になったので、場所に縛られず、みんなで一緒にやっていくぞ!という所からスタートしました。
デスケルの組織開発・組織デザインで、実行したことの大まかな順番ですが、
会社システムのアップデート。
会社の「内面」である法人格の定義(インナーブランディング)。
会社の「外見」であるブランドの定義。
です。ここからは、その順番に従って実行した内容を大まかに書かせて頂きます。
まずは会社のシステムをアップデート。
会社の「内面」である法人格を定義する前に、最初に会社のシステムをアップデートすることから始めました。
社員が増えたり、役員が辞めるなど、会社の状況が変わると、それに応じて経営者は都度会社のシステムを見直さなくてはなりません。
しかし、それを部分的に数年怠ったことで様々な問題を引き起こしました。
そのため組織開発の面では、全社員が納得できる会社システムを構築し、明確にすることに注力しました。
評価・給与制度も含め、全体的な取り組みを通して、会社全体の方針を明確にしました。
ブラックボックス化をせずに、全社員が理解できるようにしました。
業務プロセスの改善、提供サービスの向上、OKRの導入、社員の適性に合わせたDiv.(部署)の設置、売上目標や中長期目標の設定、評価・給与制度や人材開発、経費削減についてなど、さまざまな項目について明文化していきました。
組織デザインの面では当時を振り返ると、事務所が2つ、かつコロナでリモートワークが続き、忘年会などの行事も中止にしていたので事務所間での交流は年に1回あるかどうかにまでに減っていた状況で、特にDiv.(部署)の設置によりそれぞれの事務所に関係なく社員間の交流が生まれたことは一番効果的だったなと思います。
具体的には、リモートワークだと業務コミュニケーションにのみ注力するスタイルになってしまうので、業務が発生しない社員同士ではコミュニケーションが活発になりづらく「個人化」が進んでしまいます。
そこでDiv.の設置により、目標設定やスキル交換などを通じたコミュニケーションが発生するようになり、会社内でチーム単位での結束が生まれるようになりました。
かつ、チームとなったDiv.同士で業務を行い、Div.単位から全社での結束に繋げるように連携させていきました。
この頃から人材開発を実行する「人材かいほつ部」が発足し、クオーターごとの「発見祭」ではDiv.単位でOKRの進捗などを発表する機会が作られました。社内で一体感を生み、盛り上がるイベントとしてとても有効であり、現在もやり方をアップデートしながら開催しています。
同じ方向に進むためにVMVを社内向けにアップデート。
「人から組み立てる経営企画2021」ではVMV(ビジョン、ミッション、バリュー)の見直しも実施しました。みんなで社内改革を進めるために、VMVを外に向けてだけではなく、社員向けのメッセージとして構築しました。
それまでMISSIONに掲げていた「EMPOWERED BY DESIGN」をVISIONに変えました。
「EMPOWERED BY DESIGN」とは、「社会や企業など、様々なモノにデザインで力づける」ことで、結果「デザインの可能性を広げ、ワクワクさせるクリエイティブを創出し、人の想像力を高める。」ことを目指しています。
大事なステートメントなので動かしようもないのですが、それでも「EMPOWERED BY DESIGN」をMISSIONからVISIONに変えた理由としは、デスケルのMISSIONとして実行するにはまだ行動と思考が社内でバラバラに思えたからです。
社会や企業に貢献するためにはまずは自社の力を強める必要があると考え、社員の行動に直結してわかりやすい指針をMISSIONとVALUEに持たせることにしました。
MISSIONには、後ほど詳しく書きますが、デスケルはデザイナーの「WHY=思考」を特に大事にしているため、それを改めて意識し、実行してもらうために「WHYとHOWを考え、実行し、価値を高める」とし、VALUEにはバラバラな状況から一体となっていくために「必要な時は一緒に考え、一緒に成長し、一緒に創る」としました。
MISSONでは「やって欲しいこと」を。VALUEには「大事にして欲しいこと」を意識してもらうステートメントにしました。
VMVは会社が目指すべき方向性やビジョン、企業理念、価値観を表す重要な要素ですが、ライトに捉えると方向性を示すための便利なツールであるとも言えます。
うちのように大きくない会社であれば、本来的な使い方ではないかもしれませんが、状況を見て必要に応じて変更していけると使い勝手が良く、実際に次の2022年度には全社の浸透状況を見てMISSION・VALUEを変更しました。
方向性を更に細かく合わせるために、2022年度にVMVを再度アップデート。
まず、大きく変えたのがMISSIONを「理念」に、VALUEを「行動指針」に変えたことです。理由としては、「VISION → MISION → VALUE」だとトップダウン型の序列の印象になり、MISIONとVALUEの浸透具合がVISIONよりは弱い印象を受けました。
そこでVISION以外のMISIONとVALUEも強く意識してもらうために「VISION」「理念」「行動指針」としてまとめることで、序列の印象を無くしました。
また、社内ワークショップを通じて、全社員が自分たちにとって重要な「理念」と「行動指針」についての意見を出し合いました。
そしてその内容を整理し、納得がいく形でまとめて共有することで、会社のステートメントをより自分ごととして捉えてもらいやすくしました。
役員だけで決めた「EMPOWERED BY DESIGN」よりも、「ACCOMPANY FOR VALUE」や12個の行動指針の方が理解度が高く見受けられます。
この頃から組織デザインでは会社ごとを自分ごととして意識してもらうために、社員も巻き込む形で課題やアイデアを「発散」させるワークショップの場を多く作りました。会社について様々なテーマでみんなと話せたことはとても有意義であり、「人から組み立てる経営企画」は全社員と一緒に協力しながら進めなければ成り立ちませんでした。
会社の「内面」である法人格と「外見」であるブランドを定義。
会社のシステムの整備を進めながら2022年度は会社の「内面」である法人格を定めるべく、全社にアンケートを実施して自社分析を進めて行きました。アンケート内容は主にいわゆる4Cや4Pを意識した設問にしました。
全社から上がってきた意見を並べ、グルーピングをし、更に意見をもらいながら収束をしていきました。
これにより会社の「内面」である法人格が定まってきたことにより、会社の「外見」であるデスケルのブランドも定義されていきました。
社員との意見交換を進める中で、このフェーズでも更なる会社システムのアップデートが必要だと感じました。
よって2022年度の経営企画書では、会社のコアコンピタンスや理念、行動指針の他にもKGI、KPI、営業戦略、案件管理体制などが定義されました。
定義したこれらのステートメントの浸透や、実行していくべき運用の定着化はまだまだこれからですが、会社の方向性が更に明確になったことで、ようやく会社の基盤が固まっていきました。
デスケルではプロジェクトを進めて行く上で「一緒にやる」「伝える」を大事にしているのですが、弊社では、毎週金曜日の夕方に「勉強会」と呼ばれる時間を設け、全員でテーマを決め、一緒に取り組んでいます。
この時間を通じて、一緒に考え情報を共有することで、法人格やブランド、会社システムの浸透施策を進めています。
最近のテーマでは、「ビジョンに沿ったオフィスの在り方は?」や、「改めて行動指針について考える」といった内容で取り組んでいます。
毎週、社員全員が一緒に考える場を設けることで、会社に対する関心や理解が深まります。
こういった取り組みを2年間継続した結果、直近の勉強会で実施した「DSCLのブランドコア大喜利」では、全社員がほぼ同じ法人格とブランドについての認識を持っていることが確認されました。
これは個人的にとても嬉しかったです。
これにより、ようやくコーポレートサイトを通じて自社を紹介することができる状態になりました。
デザイナーには組織開発と組織デザインの適性がある。
デスケルでは会社システム・法人格・ブランドを2年間に渡り改めて構築し、現在もアップデート中です。
いわゆる「組織開発と組織デザイン」手法を使って進めてきましたが、昨今では社内でデザイン組織を立ち上げる会社も少なくないので、規模や業態は違えど同じような課題を抱えている会社は多いのではないかと思います。
これまで私たちは組織開発と組織デザインの知見もないし、今だに手探りで進めている状況ですが、それでも実行してみて言えることは、ディレクション領域ができる経験豊富なデザイナーであれば組織開発と組織デザインはできるのではないかと思いました。定義するにはまだ言葉が足りていないかもしれませんが、それでもデザイナーにはその資質があると思います。
それは何故かというと、実行してきた大まかなプロセスは以下のような流れだったのですが、
みんなで課題やアイデアを出し合って発散する。
収束させる。
収束したものをみんなで見て、チューニングする。
決める。
これを時間軸で見ると、いわゆる「ダブルダイヤモンド」のプロセスで実行していったことになります。かつ、デスケルにとって大事な「6Cモデル」のプロセスも取り入れて構築していきましたが、これらはいづれもデザイナーの思考をフレーム化したものです。
故に、その思考を持ったディレクション領域ができる経験豊富なデザイナーであれば組織開発と組織デザインはできると考えています。
そして、プロジェクトを進めるには「一緒にやる」が大事だと書きましたが、「発散」はその通りですが、「収束」は1人でやることがポイントです。
「発散」はなるべく広く、深く課題やアイデアを抽出した方が良いので、複数人でやった方がそれぞれの視点でそれらを多く出すことができます。
一方、「収束」を複数人でやるとゴールに向かうまでの考え方や組み立て方がそれぞれで違うので上手くいきません。
1人で収束させてからみんなに確認をしてチューニングしていく方が早いでしょう。
こうして「人から組み立てる経営企画」は2年かけてようやくコーポレートサイトのリニューアルという形で成果を出すことができました。
まだ今後もアップデートをかけていきますが、ここからは現時点でのデスケルの姿をサイトを通じて紹介していければと思います。
コーポレートサイトリニューアルの方向性に関して。
まず、コーポレートサイトは全世界から24時間いつでも見ることができる、いわば「会社の顔」です。サイトを見た人はそのデザインや、そこに掲載されているコンテンツから企業のイメージを読み取ります。サイトを通して会社のブランディングや、会社の人格をも感じ取ることができます。
故に、法人格が顕在化したデスケルの「あるべき姿」にリニューアルする必要がありました。
方向性の1つ目が「顧客目線」です。これまでのサイトは自社の説明をしていても「顧客に伝わるように」という意識が弱く、メニューが英語オンリーや、グラフィックの主張だけが強かったりと、作り手の自我が強いサイトとなっていました。今回のサイトではデスケルがやって来たことを、「顧客目線」に立ってデスケルをどう伝えていけば良いのかを踏まえたサイトを目指しました。
2つ目が「運用意識」です。小さい会社にありがちですがコーポレートサイトは公開した後の運用が大事なのにも関わらず、デスケルの旧サイトでは「作って終わり」の状態になってしまい、「お知らせ」や「事例」などの発信コンテンツはあるのに、肝心の運用怠っていました。
リニューアルしたサイトでは、コンテンツ企画を組み立て、運用フローをしっかりと構築して発信をしていきたいと考えています(やるぞ!!)。
1.顧客に対してどんなサービスを展開しているのか、その提供価値はなんなのかを伝える。
これまでもデスケルのサービスに関しては旧サイトでもお伝えしていたのですが、それがどういう成果を生み出すのかという「価値」までは伝えられておらず、今回「提供価値ページ」を新たに新設しました。
私たちデスケルの提供価値は以下の3つに定義しています。
01.創造や革新の土台となる「デザイン力」の資産化
デザイナーと共にファシリテーションプログラムに参加することで、「デザインの力」が身につくことを1つの価値としています。
これは、いわゆるビジュアルを作る能力が備わるのではなく、プログラムを通して、自ずと「発散と収束」「具体と抽象」などの思考力が身につきくことにより、デザイナーでなくとも「課題解決能力」や「アイディエーション能力」などの「デザイン力」が備わることを言います。
02.明瞭なデザインプロセスによる「理解」の資産化
ファシリテーションプログラムや、リサーチ手法を通じて自社や自社製品に対する「理解」が深まります。
プロジェクトの社員同士でいつもと違う環境や、テーマで話すことにより、それぞれがどんなことを考えているのか、何がしたいのかなど、違う角度での話し合いにより一層のプロジェクトへの「理解」が深まります。
そしてプロジェクトを推進するためにやるべきこと、やらなくて良いこと、必要なこと、必要でないことをデスケルの方でまとめ、最終的にRDD(要件定義書)を作成することで、客観的な「理解」を得ることもできます。
03.質の高い「クリエイティブ」の資産化
ナショナルクライアントから地域に根ざしたクライアントまで、創業から15年間でデスケルは様々な企業のパートナーと伴走をしてきました。
その中で培われた「つくる」技術で、サイトやCIツール、サービスUIなど形あるクリエイティブ資産を作ることができます。
デスケルでは上記の3つの価値を、サービスを通じて提供しています。
2.事例ではデザインを成果とするのではなく、デザインによってどんな成果が出たのかを伝える。
デスケルは「WHY=思考」を特に大事にしていると言いながら、我々デザイナーはついついスキル(HOW)やアウトプット(WHAT)にフォーカスしてしまいがちです。
もちろん、質の高いアウトプットは重要ですが、顧客目線からすると、それによって企業にどのような効果が生まれたのか、や、一緒に伴走するデザイナーとの仕事の進め方についても知りたいはずです。
そこで、デスケルでは業務後に顧客と振り返りをしながら、デザインの効果や仕事の進め方のフィードバックを頂くようにしており、伴走を通じてどのような成果が出たのかを事例に載せるようにしました。
具体的には「BACKGROUND=どのような課題が生じたのか」「SOLUTION=
どのような解決策を講じたのか」「OUTCOME=成果は何か?」を明確にすることにより「なぜやるのか?その成果は何か?」を網羅的に紹介する事例記事になりました。
これにより、デスケルが顧客の課題に対してどのように思考してデザインをしているかが伝わればと考えています。
それゆえに少し長い事例記事になっているかもしれませんが、デスケルが企業や社会に対してどのように考え、成果を生み出しているのかを、是非読んで、知って頂ければと思います。
3.デスケルのデザイナーの思考を伝える。
デスケルは、提供するサービスを4つに分類しており、プロジェクトに応じて横断的に実施していきます。そして、繰り返しになりますがどの業務でも「WHY=思考」を重視しています。
つまり、今回のような自社ブランディングにおいても「なぜやるか?」というビジョンや存在意義が重要であり、新規事業開発、ブランディング、UI / UX開発などにおいても要件定義の際に必要な要素として捉えています。
さらに、「WHY?」と問い続けること自体がデザインやモノづくりに必要な思考プロセスであると考えており、旧サイトでも、デザイナーの思考を図式化したものを掲載していましたが、改めて解説をさせて頂きます。
「ダブルダイヤモンド」に関しては、デザインプロセス全体が発散と収束を繰り返しながら進んでいくという思考プロセスを表した図です。
発散フェーズでは課題やアイデアを出し、とにかく必要な情報をたくさん出します。
収束フェーズではそれらをグループ分けをしてまとめていき、プロトタイピングなどで形作っていくという流れになります。
この思考を具体的に説明すると、例えば広告のデザインをする場合に、まずは顧客のニーズを理解し、必要な情報を集めて発散を始めます。
次はそれらをまとめてコンセプトや戦略として収束していきます。
制作のフェーズにおいてはデザインの案を複数出すことで可能性を広げる発散をし、最終的には1つのデザインに収束していきます。
つまり、デザインをする時の思考や手法が、時間軸で説明しやすいのが「ダブルダイヤモンド」です。
そして、デスケルがデザイナーの思考で一番大事にしているフレームがデンマークのデザインスクール・コリングが提唱した「6Cモデル」です。
この図は、「ダブルダイヤモンド」のような時間軸ではなく、今現在自分達がいる位置を把握するための、いわば「見取り図」です。
構成している行動要素は、
一緒にやる = COLLABORATE
集める = COLLECT
分ける = COMPREHEND
想い描く = CONCEPTUALIZE
つくる = CREATE
伝える = COMMUNICATE
と、それぞれ頭文字「C」から始まる6つの言葉で構成されています。
中央に「一緒にやる=COLLABORATE」があり、主に複数人でやるプロジェクトの推進などでワークしやすいフレームです。
そして、プロジェクトメンバーや、共有するべきコミュニケーション対象に向けて行動ごとに「伝える=COMMUNICATE」ことでそれは推進されます。
使い方は、例えば「集める=COLLECT」をした場合、抽象度を上げるために「分ける = COMPREHEND」のか、収束するために「つくる = CREATE」のか、はたまた理論的な収束をするために「想い描く = CONCEPTUALIZE」のか、など各軸に対して逆の行動を取るとプロジェクトが進みます。
時計回りに行動すると「集める → 分ける → 想い描く → つくる」という順序になり、新規事業開発などに向く「調査 → 分析 → 戦略 → 実装」という形にもなります。
「6Cモデル」も「ダブルダイヤモンド」と同様に、「発散」と「収束」、そして「具体的」と「抽象的」という思考の軸があり、デザイナーの「WHY=思考」だけでなく実際にどう行動すれば良いかを示す「HOW=手法」も組み合わせて説明することができるフレームになっています。
そしてこの図の最大の利点は、「ダブルダイヤモンド」とは違い「どこから始めても良いし、どう移動しても良い」という柔軟性があることです。
ちなみにこのフレームがなぜデスケルの思考に出てくるのかというと、前デスケル役員で現在UzabaseのCDOである平野氏が実際にデンマークのデザインスクール・コリングで学びながら習得し、持ち込んだものです。
故に解釈には若干差異があるかもしれませんが、これまでの僕の20年間のデザイナー人生で培った経験を踏まえても、非常に共感できるフレームなので、個人的な解釈を交えたとしても十分に説明ができるものとなっています。
平野氏のデンマークのデザインスクール・コリングでの記事がありますので、併せてそちらもお読みください!
3-1.新規事業開発支援と相性が良い「6Cモデル」。
「6Cモデル」の「どこから始めても良いし、どう移動しても良い」という利点ですが、通常の事業開発では「集める(調査) → 分ける(分析) → 想い描く(戦略) → つくる(実装)」がやるべき行動ですが、例えば新規事業開発では未知の領域でプロジェクトを推進するわけですから、分析するものが無く、戦略も立てづらいという側面があります。
故にその場合は「集める(調査)」をしたらまず「つくる(実装)」をしてプロトタイプを世に出してみます。そこから「分ける(分析)」をして起きた現象を推論し、「想い描く(戦略)」をやればプロジェクトは推進され、そこからPDCAを回せば良いのです。
まずは作ってしまう。「つくる(実装)」ことができるデザイナーならではの行動です。
ちなみに、2015年に僕が銭湯好きの仲間と共にローンチした銭湯ウェブメディア「東京銭湯 - TOKYO SENTO -」は、そんなデザイナーの思考と「まずは作ってしまう」ことができたことが、誕生した要因の1つとしてあります。
当時僕は東京に700軒あった色々な銭湯に行くことにハマり、「こんな非日常を体験できる施設が東京に700軒もあるのに、みんな知らないなんて勿体無い!世の中に広めたい。」と思うようになりました。そこで、銭湯メディアを立ち上げたいと思い、実際に作ってローンチをしました。その時の行動を「6Cモデル」に当てはめると以下のようになります。
「集める(調査)」 - 銭湯を好きになり色々な銭湯に行って解決した課題やアイデアが貯まる。
「つくる(実装)」 - 銭湯をもっとみんなに知ってもらいたい。銭湯ウェブメディア「東京銭湯 - TOKYO SENTO -」の制作と公開。
「分ける(分析)」も「想い描く(戦略)」もやっていません。
先にやっていたら「斜陽産業かつレッドオーシャンの業界でやるべき事業ではない」という結論になり、「東京銭湯 - TOKYO SENTO -」は生まれていなかったと思います。
しかし、実際に作ったことによって、思いもよらない現象が起きました。
メディアを介して銭湯を活気づけたり、若者を呼び込むアイデアで業界の若返りを後押しする活動は、社会で注目を受ける事業となりました。
そこでようやく、
「分ける(分析)」 - 反響がすごい。この現象はなんだろう?
「想い描く(戦略)」 - 推論し、事業に意味付け。
を、やることで本格的な事業としてスタートさせました。この事業は後にグッドデザイン賞や海外のA’Design Awardなどでも評価を受けるまでになりました。
今やサウナブームが更なる業界の牽引をしていますが、当時は「東京銭湯 - TOKYO SENTO -」で様々な可能性を広げる企画をやるたびに今までなかったマーケットが生まれ、広がっていく様を観測できたので、「デザインの力」はすごいなと強烈に感じた体験となりました。
どんな現象が起きていたかは僕のプロフィール記事の「メディア情報」の部分にいくつか掲載記事や映像が残っているので良ければそちらをご覧ください。
話を戻すと、「東京銭湯 - TOKYO SENTO -」のような、既知の領域とは違う状況でプロジェクトを推進し、新しいものを生み出す必要性がある新規事業開発では、「6Cモデル」のような柔軟な思考プロセスが重要になってきます。
そして一番早いのは「まずは作る」ことです。それにより現象を観測し、効果を測定すり機会が生まれ、プロジェクトは推進されます。
このように、新規事業開発支援と相性が良い「6Cモデル」ですが、それを活用しているのがデスケルで展開しているファシリテーションサービスです。
もちろんファシリテーションサービスでやることは新規事業開発支援だけではありません。
デスケルでは「WHY=思考」から出発することで、チームビルディングや要件定義の取りまとめ、事業や組織など様々な課題を整理し、そこから更にブランディング支援やUI / UXのデザインなども横断的に実行していきます。
4.デザイナーの思考をメソッド化した「DSCL METHOD CARD」で世の中に「デザイン力」を拡げたい。
デスケルのVISIONである「EMPOWERED BY DESIGN」には、具体的に叶えたいことの1つに「誰もがデザインの力を使えるようになる。」があります。
デザインの一般的な認知として20世紀のポスターなどの平面的なものや、製品などの立体的なものに対して行使すること、という印象が強いと思います。しかし21世紀はウェブサービスなどのUIデザインやUX(ユーザー体験)デザイン、更には組織デザインなど構造に対して行使するものなどデザインの領域は広がりつつあります。
この領域は、従来の手を動かして「つくる」という具体的な作業プロセスからオブジェクトではないもの、つまりコミュニケーションや感情などに対してデザインを行使することになるので、創造力や課題解決力など、抽象的な思考プロセスが大事になってきます。
先に伝えた通りデザイナーがやっていることは元々「WHY=思考」です。「つくる」という具体的な作業プロセスにばかり注目が行きがちですが、思考を元に創造し、課題解解決をしているのです。
昨今ではデザイン思考やデザイン経営など、デザイン自体が社会や企業で重要な役割を果たすようになってきました。そんなデザイナー自体の抽象的な思考プロセスを「HOW=メソッド」に変換することによって「デザイナーでなくともみんながデザインの力を使えるようになる世の中にしたい」とう想いで作られたものが「DSCL METHOD CARD」です。
デザイナーはさまざまな経験の中から得た「デザインのコツ」があります。手を動かして「つくる」という具体的な作業プロセスではなく、抽象的な思考プロセスに着目し、デスケルのデザイナーが仕事の中で培った「デザインのコツ」を「6Cモデル」に落とし込んだ内容になっています。
カードの構成としては、表面はデザインおばけ達が具体的にワークしている状況が描かれており、文字でわからなくともイラストで直感的にわかりるようになっています。
タイトルの下に漢字4文字で四文字熟語のような文字を置くことで、こちらもなんとなく直感的に意図が読み取れるようにしています。
ハイコンテクストな日本人の感覚に合わせ、絵や象形文字(漢字)で意図を伝える設計をしています。
サイトでは文字のみ抜き出して書いてありますが、裏面は「6Cモデル」でどの「C」の部分なのか、と「WHAT」「WHY」「HOW」に沿って説明をそれぞれ書いたカードになっています。
「DSCL METHOD CARD」は、実は最近作られたものではなく5年前からあったものを引っ張り出してきて、この機会にようやく自社コンテンツとして再度育てようというものです。
デザインは顕在化した「WHAT」で評価されます。そして「WHAT」を直接的に生み出した「HOW」が重宝されますが、そもそもの「WHY」は評価をされてきませんでした。何故ならデザイナー側も思考は無意識にしているものであって「WHY」の説明をして来なかったからです。
世の中に対してより良い価値づくりやイノベーションの創造などに、デザイナーの「WHY」を拡げていくことで少しでも貢献できればと考えています。
このメソッド作りには、あわよくばたくさんのデザイナーや、デザイン会社の方々と一緒に創出していければ良いなと考えています。
サイトリニューアルをしてみて。
サイトのリニューアル自体は2021年度の経営企画書から入っていたのですが、肝心の一度決めた法人格やブランディングがボヤけて来ていたこともあり、その前に組織開発・組織デザインに着手することになり、そこから丸2年が経っての公開となりました。一旦デスケルとして現時点での「ありたい姿」にはなったのかなと思います。
ただ、公開から2週間が経ったところで早速会社のみんなにフィードバックをもらい、次のアップデートの検討を進めている状況です。
組織開発・組織デザインもまだまだ途中なので、今年1年である程度土台を固めて、次は組織としてデスケルを大きくしていきたいなと考えています。
このnoteやコーポレートサイトを通じて改めてデスケルのことを知ってもらい、こんなデザイン会社があるんだと興味を持ってもらえれば良いなと思っております。
何かお仕事のご相談はもちろんのこと、デザイナーさん、デザイン会社さんと協業していきたいとも考えております。よろしくお願いいたします。
「6Cモデル」や「DSCL METHOD CARD」に関しても興味ある方がいらっしゃいましたら意見交換などしていきたいなと考えております。
サイトからは刷新した会社資料もダウンロードできますので、良ければこちらも見て頂けると嬉しいです!以下のフォームよりダウンロード頂けます。
最後まで読んで頂きありがとうございます!それではよろしくお願いいたします。