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弱くても強い雑草に学ぶ

 先日、「雑草という名の植物はない」という記事を書かせていただいたが、今回は「雑草から学ぶこと」をテーマで書いてみようと思う。

 1945年8月6日、原子爆弾が投下され、一瞬のうちにすべての生き物を死滅した広島には、70年間は生物は住めないと言われていた。しかし、その翌年には87種の雑草が生育し、被災した人々に希望を与えたという記録がある。名古屋市をはじめ、太平洋戦争で激しい空襲に遭った各都市でも、まずは雑草が息を吹き返した。

 雑草には、逆境に立ち向かって何度でも立ち上がる。雑草を取るのは手間がかかって厄介だが、雑草はしぶとい。私たちは雑草にそんなイメージを抱いている。「雑草魂」という言葉がスポーツの世界で使われ、雑草の姿と自分自身を重ね合わせ、目標にする人もいる。
 
 しかしながら、植物学者の稲垣栄洋教授によると、雑草は弱い植物と捉えられるそうだ。雑草が好んで生えるのは、公園や道端、アスファルトの隙間などだ。人間に踏みつけられ、突然引っこ抜かれることもある。雑草があえて厳しい環境を選ぶのは、まともに戦ったのでは勝ち目がないからだ。雑草は弱い植物だから、競争力が求められない予測可能な変化の起こる場所をあえて選んで生える。

 子どものころ、オオバコという雑草で遊んだことのある人は多いのではないだろうか。花柄を根本から取り、2つ折りにして、2人が互いに引っかけあって引っ張り合い、どちらが切れないかを競うオオバコ相撲が知られている。スモトリグサ(相撲取り草)という別名があるが、漢字名では「車前草」と表記する。雑草にとっての最大の試練は、人間だけでなく、自転車や自動車に踏まれることだ。オオバコは車前草と呼ばれるように、昔から馬車や牛車などに踏まれ続けてきたのだ。オオバコの種は水に濡れると膨張し粘り気を持ち、人の靴底やタイヤにくっついて遠くに運ばれる。まるで踏まれることがわかっていたかのようだ。

 夏は雑草にとって繁殖の季節。雑草取りに手を抜くと草取りに難儀することになる。中でも、繁殖力旺盛なのがコウブシとドクダミ。
 コウブシは、ハマスゲとも呼ばれるカヤツリグサ科の多年草で、季節を問わず庭や菜園の一面を覆うほどに厄介だ。掘り起こすと、根先に小さな豆状の球根があり、地下茎で連なっている。雨が降らなくても繁殖し、農家やガーデニング愛好家泣かせだ。せっかく植えた野菜や花の苗木は、コウブシに囲まれてしまう。根絶してやろうと汗びっしょりで必死になって一帯を除去したつもりでも、数日経つと新芽を出してしまう。
 ドクダミは濃いグリーンの厚い葉を持ち、初夏に咲く真っ白な花は可愛らしいが、触っただけで強烈な臭いを放つ多年草だ。日陰の湿地を好み、いつの間にかはびこってしまう。白い地下茎はどこまでも続き、抜くと切れてどこが元かわからない。

 ところが、この厄介物のコウブシとドクダミにも効用がある。コウブシの根茎を乾燥させたものは「香附子」という漢方薬・生薬として、芳香性、健胃、消化、浄血などの効能があり、昔から使われていた。ドクダミの名前の由来は、毒を抑える薬草という意味だ。ドクダミ茶は独特の香りと味わいがある。
 
 雑草は、「最も進化した植物の一つ」と高く評価する研究者もいるくらい、雑草の力は多様だ。でも、「雑草」という名前の植物はない。

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合同会社Uluru(ウルル) 山田勝己
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