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理系大学院生がPerfumeの衣装を作ってみた

Perfumeの衣装展に触発されて衣装を1着作ってしまったという話。

Perfumeといえば、楽曲は中田ヤスタカ、振り付けはMIKIKO先生、MVは関監督や田中監督、テクノロジーはライゾマティクスが担当していて、どの側面からも完成度が高い総合芸術だ。どのライブでも、これまでに見たことのない世界を見せてくれるところが大好きだ(年末のカウントダウンライブでもPerfumeの新しい側面が見ることができた)。

今回、2023の秋に神戸にPerfumeの衣装展に行ってきた。Perfumeチームの作る衣装はかわいく、かっこよく、デザインも構造も美しかった。これまで衣装については、「この衣装いいな」とか、「色の組み合わせいいな」、というレベルまでしか見ることができなかったが、衣装展でおよそ100着の衣装を鑑賞して、物理的にも精神的にも解像度高く衣装を見ることができ、衣装チームの創造力と世界観に惚れ込んだ。

衣装展の入口
私が一番気に入った衣装

創造力を掻き立てられ、衣装展から帰ってきてもどこか物足りない感じがしてしょうがなかった。グッズコーナーで買ったデザインセンスのいいグッズを普段の生活で使用しながら、「Perfumeの衣装は色から構造まで全てが美しかったな~」と思い返していた。思い返すのは楽しいけれども、この物足りない感は全く満たせない。Perfumeチームに横に並ぶことなんて到底できない何者でもないのに、完璧な作品を作る彼らに激しく嫉妬していたのだと思う。

Perfumeの衣装本を見返しながら、ふと「紙でミニチュアだけでも作ってみよう」と思った。もともと、小学生ぐらいのことからLEGOが大好きで、3Dの芸術には憧れていたので、衣装のミニチュアを作るというのは、その路線の発想だった。どうせ作るなら、見栄えのするものがいいと思い、2015年の紅白で着ていた衣装に決めた(かしゆかが好きなのでかしゆかの衣装にした、ぱっつんのロングヘアの子)。

衣装本に載っている2015年紅白の衣装

衣装を見ながら各部分のパーツを紙にざっくりと書き、のりしろ部分を用意して、のりしろ部分はホッチキスで接着させて作った。作っていいくうちに紙では硬すぎて限界が見えてきた。

紙で衣装のミニチュアを作ろうとした

考えてみたら、布で作ったほうが簡単じゃん、と思い、布を買いにユザワヤ蒲田店まで急いだ。おしゃれな服飾系の専門学生がたくさんいるなか、東京工業大(今は東京科学大)の学生証を見せてユザワヤ学生会員になり、今回の衣装を作るために必要な4色の布を買った。

赤、灰、白、黒の布をユザワヤで購入した。

ミシンも家にはなかったので、アマゾンで5000円のやっすいミシンを購入した。(ミシンを使うなんて高校生の家庭科の授業ぶりだろうか。。。)

布で同様にのりしろを作って縫い合わせていったら意外にもまともなものができた。これ、着れるものを作った方が面白いかもしれない、と思い、実物スケールで作ってみることにした。着てくれる人もいないので、私が着れるように。

ミニチュアスケールで、布で作った前身頃。
袖も作ってみた。

服を作るとなると、衣装の型紙が必要となった。ワンピースに近い形であるので、ワンピースの型紙をネットで探してワンピース男性LLというものを見つけた。こんなのだれが使うんだと笑っていたが、ここに需要が。家のプリンターで型紙を印刷し、のりでツギハギしてワンピースの型紙を作った。作りたい衣装はところどころ違う構造をしているので、そこは衣装本や紅白の実際の映像をスクショをみながら想像で作っていった。

作業の様子(自室)
構造を研究するためにスクショをたくさん取った

ひとまず上半身部分が完成し、撮影してみた。この衣装を作る上で一番再現したかった、肘の袖のとがり部分が再現できていたのを見れた瞬間は最高に興奮した。赤色の裏地まで作ろうとすると、かなり複雑な構造が必要だったのだ。

なんだ、衣装もものづくりの一環でできるじゃん、という気づきが私の中では大発見で、精神的な部分でその後のものづくり(編み物やプログラミング、その他)に大きく影響を与えていると思う。

肘のとがりがポイント
この段階からも服が作れそうな実感が湧いた

スカート部分は、理系のものづくり魂をくすぐるような、幾何学的な構造となってる。ユザワヤで芯地を買ってきて先の布に貼り付けてから縫い合わせることで立体的な構造を維持することができた。

スカートの前部分、後ろもほとんど同じ構造

それぞれ上半身部分と下半身部分を作ったのが次の写真である。

上半身と下半身分けた段階での撮影。

裏返し、お腹の部分で繋いだのが次。

完成体

試着した写真もせっかくなので載せる。いろいろ未熟な部分が溢れてしまっているが、服を作るという初めての試みに挑戦できた達成感が大きい!

完成品を着た様子。

さいごに
Perfumeの衣装(もはやコスプレ)を作るというチャレンジは昨年2024年の中で一番大きなチャレンジだった。不思議と中学生の頃から技術と家庭科はそれぞれ男子と女子が得意なイメージが刷り込まれているが、衣装を作るなんて、よく考えてみたら、設計、資材調達、作製の3段階で、ものづくりのステップではないか。今後も固定観念にとらわれずものづくりしていきたい。

Perfumeのあ〜ちゃん(ポニテの子)が以前、2018か2019のPerfumeのReframeの公演で、「テクノロジーは一見冷たい用に見えるけれど、人が1つ1つ作っている温かいものなんだよ」ということを最後に言っていて、テクノロジー側の理系大学生からすると「そう、そう、そうなんだよ!!」と激しく同意した記憶がある。今回のものづくりはテクノロジーじゃない側、逆側であるけれども、普段当たり前のようにPerfumeが着ている衣装1つ1つも、誰かが、超クールなデザインで、しかも壊れにくいように研究して作っているのだ、というのを身にしみて実感することができた。やっぱりPerfumeチーム最高ですわ。

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