大地の祝祭 -越後妻有アートトリエンナーレ-
先週の土日に、思い立って1泊2日で新潟を巡ってきた。
大地の芸術祭(越後妻有アートトリエンナーレ)に行きたかったのだ。
3年前、地元の別府でやっていた芸術祭「混浴温泉世界」の特集を見るために購入したozマガジンの同じ号に、越後妻有トリエンナーレの記事が載っていた。
エチゴツマリ。聞いたこともない地名だったけれど、一度聞くと忘れられない語感だ。ツマリ、のところが特にいい。
青々とした大地に、逆さづりになった大きな色鉛筆の作品”リバース・シティー”の写真が、印象的だった。
(引っ張り出してきた当時のozマガジンの記事 。心がカラフル♪とテンションが高い)
大分からは遠く離れた地で、面白いことが起こっているのだと知って、それからずっと新潟には行きたかった。3年に1度の好機が巡ってきたのだ。
東京から約1時間半、新幹線で向かう新潟は思ったよりも近い。
旅の出発点となる越後湯沢駅から、ツアーバスに乗り込んだ。
はじめてツアーを利用してみて感じたのは、こういうものは、頼れるときには有難く頼った方がいいということだ。
土地勘も車の運転技術もないストレンジャーの自分には越後妻有の大地は厳しく、早々と自力で巡ることをあきらめ、公式ツアーに頼ることにしたのだけど、非常によかった。
芸術祭を巡る、という行為のどこに重点を置くかにもよるけれど、「たくさんの作品をできるだけ効率的に見たい」という人には、絶対におすすめする。
自分のペースで作品を観られない、というツアーのデメリットよりも、自力で交通ルートを組み、施設の開館時間などを気にしつつタイムスケジュールを考えながら行動するわずらわしさから解放される、というメリットの方が圧倒的に大きく、その結果、短い時間でも作品鑑賞に集中できた。
脳の余白を多めに取れたという感じである。
用意されている2つのツアーには「カモシカぴょんぴょんコース」と「シャケ川のぼりコース」という珍妙な(かわいらしい)名前がついており、見たい作品の多いカモぴょんのコースを選んだ。
以下、印象に残った作品。
マ・ヤンソン/MADアーキテクツ 《ペリスコープ》
レアンドロ・エルリッヒ《Palimpsest》
昨今、地方創生の起爆剤として全国津々浦々で芸術祭が開催されているのは、芸術祭の持つ地域性と、そこで期間限定かつ比較的大型のアート作品を鑑賞する行為が、総じてSNSというツールと親和性が大変よい、というのも、一つの要因であるのは間違いない。
鑑賞者は、時には自分自身が作品の一部になり、いわゆる「SNS映え」する写真が撮りまくれるのだ。
このあたりは、金沢21世紀美術館の《スイミング・プール》が有名なレアンドロ・エルリッヒや、大地の芸術祭とは関係ないけれど、デジタルアートの第一線を走るチームラボ等が得意とするところなのだろう。
その一方で、その土地に根差した、「アートとはなにか」という根本的な問いを投げかけてくるような作品に、はっとさせられる。
磯部行久《川はどこへ行った》 (2000年の作品)
磯部行久の《川はどこへ行った》は、乱暴にいうと、黄色い旗が田んぼや地面に等間隔に刺さっている作品である。
一見よくわからず、SNS映えという視点では、比較的地味な作品かもしれない。
けれどこの旗が、「かつて流れていた信濃川の流路」を示してマーキングされたものであるという情報を知ると、一見無機質に並んでいるように見える黄色い旗たちの間に突然ストーリーが生まれ、いまを生きる私たちが永遠に見ることのない、かつてそこにあった信濃川の流れに、不可避的に思いをめぐらせることになる。
こうした作品に出会うのも、地方の芸術祭ならではの魅力だと感じる。
その一方で、「信濃川はかつて○○という地域を○○kmにわたって流れていて…」というような言語的説明よりも、はるかに雄弁で圧倒的なアートを目の前にして、とてつもなく無力的な気持ちになったりもした。
大地の芸術祭は、文字通り大地も広大であれば作品数も半端じゃない。
あまりにも圧倒的なスケールで展開されていて、何度足を運べばすべての作品に出会えるのだろうと絶望的な気持ちになるけれど、それでもまた絶対この土地に来たい、と思わせる、素晴らしい芸術祭だった。
おまけ。
大地の芸術祭の翌日は新潟市の方でやっている「水と土の芸術祭」に行った。
こちらの方はコンパクトにまとまっているので、半日でも自力で割と多くの作品を見ることができた。
公式ガイドブックを買うと、シャトルバスも無料で乗れるし、スタンプを集めるのが地味に楽しいので、購入がおすすめ。
松井紫朗《Soft Circuit Fish Loop》
今年の新潟、熱いです。
<参考リンク>
○大地の芸術祭
http://mb.echigo-tsumari.jp
○大地の芸術祭 オフィシャルツアー
(カモシカぴょんぴょんコース)
http://www.echigo-tsumari.jp/tour/tour_official_2018_kamoshika
○ 水と土の芸術祭
http://2018.mizu-tsuchi.jp
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