恋にならなかった恋の話 ウリ専編 vol.3
先生は僕が一度も降り立ったことのない駅の、東京の西の方の住宅街に住んでいた。
玄関先で僕を迎え入れる先生は黒い着物を着ていた。
「着物なんですか?」
「家ではね。この方が落ち着くから」
古くて小さな一軒家だったけど家具や装飾品は高級そうで、立派な革張りのソファと木のテーブルの上にクリスタルの灰皿が置いてある居間は、いつか映画で見るヤクザの親分の家の居間のようだと思った。
「一人で住んでるんですか?」
「うん…昔は両親も一緒だったけどね」
客のプライベートに踏み込んでしまったことを少し後悔した。
灰皿の横の黒い漆塗りの煙草入れにあったハイライトを勧められるがままに吸ったけど、いつもマイルドセブンを吸っている僕にはキツかった。
小さな庭に面した居間は光が濃い分、影も濃い。
一番暗い面の奥にある小さな和室の方を見ていると「茶室として使っていてね。簡易的なものだけど」と先生が教えてくれた。
「お茶、やってるんですか?」
「教えているんだよ。教えている場所はここではないけど、家でも点てられるように整えたんだ」
「お茶の先生なんですか?」
「そう。茶道。興味ある?」
「えっと…茶道の知識は全くないし、きちんとしたお茶を飲んだこともないけど、日本の古い文化は好きだし…あと、抹茶味も好きです」
僕が答えると先生は珍しく声をあげて笑い「せっかくだから飲んでみるかい?」と僕を茶室へ誘った。
茶室とはいっても先生のいう通り簡易的なもののようで、小さな床間に掛け軸こそかかっているけれど、炉は持ち運び式のもので、お茶の道具が並んでいる木の棚を指差しながら「本当はこういうものは水屋という見えない場所に置くものなんだけどね」と説明してくれた。
先生が丁寧にお茶を点ててくれた。
僕が正座をして待っていると「脚を崩して楽にしていなさい」と言うから、母親が宗教をのめり込んでいて子供の頃からお経を読まされていたから正座には慣れている、という話をしたら「君は本当におもしろいねえ」と笑いながら、茶筅をシャカシャカと回していた。
「はい、どうぞ」
先生が茶碗を差し出した。
「…えっと…まわします?」
「ここは教室じゃないからね。そのまま好きに飲みなさい」
初めて飲むきちんとしたお茶は苦かったけど、よく泡立っているせいかクリーミィで飲みやすかった。
「おいしいです」
「無理をしないで残しなさいよ」
「いえ、本当に、思ったよりおいしいです」
「そうかい。なら良かった」
お茶を飲み終えてから「それでは」と先生は僕を寝室に誘った。
寝室は居間や茶室と違いベッドが置いてあるだけのシンプルな空間だった。
そこで僕は仕事をした。
仕事内容は店でしているのとだいたい同じだったけど、先生の下着が六尺褌で慣れてない僕が脱がすのに手間がかかった点だけが違った。
それから週に一度は先生の家へ呼ばれた。
茶室でお茶を飲んでから寝室へ向かい手コキやフェラで先生をイカせるのが恒例だった。
だけど、その日はお茶を飲んでいる間に着物の話になり「君も着てみるかい?」と先生が言うから着せてもらうことにした。
茶室で服を脱ぎ「下着はどうすればいいですか?褌ですか?」と尋ねると「君は。下着はつけなくていい」と先生が言うから全裸になって藍色の着流しを着せてもらった。
それから再び正座をして茶碗に残っているお茶を啜った。
小さな茶室で着物を着て先生が点ててくれたお茶を飲んでいると、侘び寂びの世界に入り込んだようで、僕はなんだかとても気分が良かった。
先生はそんな僕をまっすぐ見ていた。
それからすっと立ち上がり僕の背後に回ると、しゃがんだと同時に僕を後ろから抱きしめた。
左手を僕の襟の中に突っ込み、右手を太もものあたりに滑り込ませた。
そしてすべての指先が僕を気持ちよくさせようと企んで結束したように一斉に動きだした。
着せてもらったばかりの着物がみるみる着崩れていく。
「ど…どうしたんですか?」
「君がそんな格好でいると、茶室が淫乱部屋になってしまうよ」
先生が珍しくエロい言葉を発した。
侘び寂びの世界にエロが混ざり込み、僕は「これぞ五社英雄の世界!」と興奮せざるを得なくって、ちょっと大きめの声で喘いだ。
やがて先生は僕の着物の裾を乱暴にまくった。
すでに硬くなった僕の股間が露になった。
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