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#8 大人のまま子供になる事〜11年前の教育実習より〜

時は遡り、11年前

教育実習初日

緊張と気合いで身体と髪の毛がカチカチの松下先生 21歳

母校 私立滝川第二高校の2年7組を実習生として、担任をつとめる1ヶ月の始まりだ。

チャイムが学校全体に鳴り響いた。朝のSHR。母校での初めての仕事だ。
やることは自己紹介と今日の出席確認と業務連絡、個別での伝達事項。
たったそれだけ。なのに…緊張する。ここは母校なはずなのに。なんなら今から現れる生徒は後輩なのに。
綺麗な黒のクラス名簿を左手に、着こなせていないスーツに備品のスリッパを履き、自分が生徒時代に走り回っていた廊下を、今はゆっくりと歩き今日から担任する教室へと向かう。


こんな体幹よかったっけ?と思うくらい上半身が起きて身体はカチカチ。髪の毛は気合いを入れるべくワックスで盛り、俺の並々ならぬ熱い希望を髪にのせたのだが、職員室ですぐなおされた。上へ上へと盛った希望は、一瞬で汚れた床にこうべを垂れた。

教室の前につき、一呼吸置く。

中はスポーツ校の推薦入学者クラスなだけあり、エネルギーが有り余っていてやかましい。そこは僕の頃と変わっておらずこの感じが懐かしく心地よい。多分野球部がやかましさの発端になって、サッカー部が後ろからチャチャを入れてるのだろう。陸上部は一緒にヘラヘラと笑い、標的になりさらに盛り上がりを加速させるのが剣道部…。多分この教室の中ではこうなっているのが見なくてもわかる。もはや伝統だ。最近ではここに強化部として吹奏楽部が入り、男のみのクラスに華が添えられたという情報も聞いた。そこだけは変わっている。

(よし、行こう)

ガラガラガラ

ドアを開けた。

(ピタッ……ジッ…)

いや、視線すごっ。なんやねんそんな目で見んなよ、え、何?

(ジィー)

...ちょっと待って誰か小さい声で今、「え、誰?」って言わんかった?そんなん言わんといてよ。いやいやいや、今日から実習でお前らの担任ですよ。ていうかその前にまずこの学校の先輩やぞ挨拶せぇボケ。なんか腹立ってきた。おいお前!お前やそこのJOJOの空条承太郎みたいに態度でかいやつ、何見てんねん。あー、スタンドに守られてるから自信あるのかなー。いや関係ないねんお前あとで部室こい。

…とか一瞬思ったけど、この子達が俺にとっての初めての可愛い生徒なんだとすぐに我にかえった。アゴが2cmくらい下に動いただけみたいな謎の会釈をし、教卓までまた下を向いて歩きだした。
ドアから大股4歩程度のあの短い道のりがシルクロード並みに長く感じた挙句、ようやく最果ての教卓共和国にたどり着いた。ちなみに教卓共和国の中央西側にはウンチって書かれていた。書くなよそんなの。あと先生も消せよ。何してんねん。

えぇい!覚悟を決めて顔を上げると、窓際で口を開けて寝ているカビゴンみたいなデカいやつを除く43人がこっちをギラっと覗き込むように、さらにガン見してきた。

(は、鼻毛が床まで伸びているのか!?)

そうでもないとおかしいくらいみんながこっちをみている。どうかあのカビゴンだけは起きないでくれ。ポケモンの笛を今吹いちゃならんぞそこのクリストファーロビンの坊主版みたいなやつ!


よし、ここだ怯むな頑張れ松下くん!
先輩様を舐めるなよ?4年前、ここでサッカー部ながら生徒会長やってたあの松下だぞ?学園祭過去最高来場者数を叩き出した会長様だぞ?みんなの前で漫才とか1発芸とか担ってた松下だぞ?あ?なんだテメェら、よく見たら全員キナくせぇピーナッツみたいな顔しやがって。(松下の学生時代 詳しくは♯5をお読みください)

この学校でバリバリやってた頃の記憶がふつふつと蘇り、正気に戻った。
そして最初が肝心、生徒の心をツカみ派手にかますために白いチョークを持ち、先生の先制パンチを放った。(チャンネルは変えないでくれよな)

ーーー

時は現在

兵庫県から上京して、10年がたって、今年で32歳。
これが大人になったという事なのかなぁと思うことが多々ある。

子供の頃に理解できなかったことが、数年かけて綺麗なフリオチのように解消されていく。

例えば、怖ささえ感じていた甲子園球児がもう可愛いでしか見えなくなってたり、結婚式の引き出物が真っ先にコスパに良い食材を取り寄せるようになってたり、実家の冷蔵庫の中に無糖のブレンディが常にあったことが理解以上に今はセンスに感じるようになった。

抵抗あったけど…ごめん、良さわかるわ…ってなることが多い。

ただ一方で、それとは逆行して、子供感が促進していることもある。
まさか今になって休みの日はアニメイトに通うアニヲタになると思ってなかったし、ガチャガチャなんか今の方が意欲強いし、何より30歳を超えて野郎3人でシェアハウスをするなんて思ってなかった。彼女と同棲、いや、なんなら結婚の相場年齢ですよ?ほんと。

よくわからん…。大人になりながら、子供にもなっている。
アラサー3人が夜な夜なスマブラでキャイキャイ言ったかと思いきや、自分は炊事と掃除をメインにやることからか多くの皆様から母や寮母と呼んでもらっている。尚更どっちなんかわからん。
極め付けは、ゲッターズ飯田さんの占いによると、心が中学生から成長しない愛されるおバカと書かれてあり、後輩にタロット占いをしてもらえば3枚連続で聖母のカードが出た時はもう自分で少し引いた。どっちやねん。逆行しながら逆行するなよ俺の数奇な人生。1人ベンジャミンバトンやん。

でもまぁ子供が加速するまま、大人になっているという事も人の生き方として大事なのかなぁともかねがね思う。
大人になるにつれて子供と関わったり、遊んだり、何かを伝えることが必然として多くなるからかもしれない。同じ目線の一面を持っているのが良かったりするのかもしれない。恐らく目の色がカネと保身で濁った政治家に1番足りない部分だろう。
そういえば自分が子供の時、常に自分よりも楽しんでくれるような子供なおっちゃんが好きだったことを思い出した。

あと1人ベンジャミンバトンって何?例えあってる?
めっちゃ語呂いいけど紐解いたら多分意味ちゃうで。ま、えぇか。

大人になりながら子供になるということを考えていた時に、僕の人生史上最強漫画No.1であるGTOの鬼塚先生が出てきて当てはまった。
僕の大好きな鬼塚先生。憧れであり、この人から授業を学んでみたかった。

鬼塚英吉  元湘南最強の暴走族。
教員採用試験の履歴書の写真にはプリクラを貼って提出し、授業が面倒くさくなったら「今日はペットボトルロケットをしよう」とか言って普通に教室でやりだす。
でも1人の生徒が自殺するといい消息不明になったら首都高180kmだしてパトカーをドリフトで振り切りながら全力で探したり、自分の学校の生徒をクズ呼ばわりする教頭にキレてジャーマンスープレックスして教頭泡吹かせて死にかけたり。
周りの先生が寄ってたかって「何やってるんですか!教師が暴力するなんて!」って責めたら、鬼塚先生が「じゃあお前らのやった言葉の暴力は許されんのか?」ってキレて帰ってったり。
そんなのは漫画の世界だから、実際にやったら一瞬で終わる。けれど、漫画を実際に置き換えることがナンセンス甚だしいのであえて、この先生に僕は憧れているとはっきり言っておこう。

こんな大人として大切なモノを持った子供の鬼塚先生。漫画はもう読みすぎてボロボロだけど、いまだに読む。藤沢とおる先生、本当にありがとうございます。

話は膨らみすぎたが、この鬼塚先生に憧れて、大学で中高教員免許を取得したのはここだけの話。4年間、体育会系サッカー部に所属しながら、履修も課題も多い中、よく頑張った!
うん、やっぱりこの頃から子供だな、漫画の主人公への憧れだけで4年間頑張れただなんて。

そして、その中でかけがえのない経験となったのが、教育実習。

今思えば、人生で唯一、教卓に立って生徒に授業をした1ヶ月間。
この1ヶ月の中で、人の前に立つ教師としてその人の持つ子供の面がいかに大事だったかを思い出した。
要は自ら子供な面を無理に出しにいくんじゃなくて、鬼塚先生でいうところの、授業中めんどくさくなったらペットボトルロケットしだしたり、消えた生徒を首都高スピード違反しても探したりとか、何か自分の感じたものを感じたままに…というさらけ出すという部分だ。内容はさておき、そこに人は惹かれるのだと思う。

まずは人としての魅力

ここが大事なんだということ、本編や内容はそのあとなんだということを身をもって分かることができたのが、1ヶ月間の教育実習の、あの時からだった…。

ーーー

11年前 2−7の教卓

とんでもない43の視線に怯みかけていたが、強靭な大腿二頭筋、通称ハムストリングスのおかげで間一髪後ろの黒板に倒れる事はまぬがれた。
41人のオスポテトとメスポテト、あとは態度の悪い空条承太郎と坊主クリストファーロビン、そして窓際のカビゴン(ねむり)。
それでも俺の最初の記念すべき教え子といえる生徒たち。
最初が肝心、先制パンチ、ツカミを派手にかましにチョークを持った。

何をするかと言うと、もちろんGTOの鬼塚先生が初めて自己紹介する名シーン。
鬼塚先生が黙って、白いチョークで黒板にGTOと書く。そして、
『グレートティーチャーオニヅカだ、夜露死苦!』
ツバを吐き、タバコをふかす。

さすがにツバを吐いてタバコをふかすともう実習終了になってしまうので、書いて、
「グレートティーチャーマツシタです、宜しく!」だけにしておこうと決めた。

そしてゆっくりとチョークをもち、みんなに背を向けた。

最初が肝心だ。

そう思い、右手を高くあげた。GTMと書いて、鬼塚先生と同じことをするだけ。さぁ。

...。

...。

出来なかった。
そのまま何も書かず、あげた右手をまた下げ、クルッと前を向き、

『まっ、松下です。』

普通に挨拶した。何故か白いチョークを持ったままで。

...出来なかった。スベッて変な感じになる気しかしなかった。初日のファーストコンタクトにそんなデビュー戦を飾ってしまったらもう、向こう1ヶ月僕の呼び名はGTM、はたまた派生してATMとか言われ続けるかもしれない。それは嫌だ。懸命な判断だ。

その後、黙々と出席確認と業務連絡をした。
その日の5時間目終わりに歯科検診があるから保健室にしっかり並んで静かに行くようにーと。普通だ。なんの面白味もない。

すると、みるみると皆、退屈そうに喋り出したり、注目をやめたりしていく。この一瞬としては助かったが、本来これは良い事ではない。

『では、今日も1日頑張りましょう!!』

『きりーつ、気をつけー、れー』

『っしたー』

ザワザワザワザワザワ...

特に何もなく、教室を出た。そしてもう一度後ろに目をやると、見えてしまった。
自分のクラスの女子と隣のクラスの女子が、教室と教室の間で、

『ねーねー!新しい実習の先生どうだったーあ!?』

とキャピキャピしながら質問している所を。

『んーとねぇ...』

いかん!聞いてはならん!
咄嗟に僕は小声で『んマァー』と言って自分の声で聞こえないようにしながら職員室に戻った。

僕が1番嫌いな[音沙汰ない普通]なデビューをしてしまったのだ。やれば良かった、GTM。もしくは一発芸。
今までそれよりも多い視線やアウェイの中でやってきたじゃないか。
(#5 を見ればどんな所でどんなネタして来たか書いてるからね)
聞いて呆れるぜ元スーパー生徒会長サッカー部。
修学旅行、オーストラリアに行って先住民族アボリジニの前で上半身裸になってアボリジニのダンスをした強心臓はどこへいってしまったんや。
そんな男が『まっ、松下です』って。
口下手な男が結婚会見で、記者から、『今の気持ちはいかがですかー!?』って聞かれて、『しっ...しあわせです』って言う時と同じトーンのそぉっとした声量だったぞ。
なんだその例えわかりにくい。

自分の中で[普通]というのが最大に恥ずかしい事だったからか、少し吹っ切れたのを覚えている。

最初はこんなモノなのかなぁ?と、日誌に今日のことを記し、初日は終わった。


ちょうどそのくらいの時期、AKB48の総選挙が始まっていた。

僕は当時AKB48にどハマりしており、総選挙の結果が気になって仕方がなかった。
だから高校に行く途中、駅のキオスクで総選挙の中間発表やら最終予想やらが一面に書いてあるスポーツ新聞を買い、ガン見しながら登校していた。

なんと自分の推しの高橋みなみさんが途中経過、8位だったのだ。非常にマズイ。

そしてまた朝のSHRに行く時間になった。

『もういい、あいつらに聞いてみよう。』

そうして今日は左手に黒の出席名簿、右手にAKB速報のスポーツ新聞を持ち、教室に向かった。

ガラガラガラ

ガヤガヤガヤ...

あぁ、初日でツカめてない人特有の注目度だ。悪く言えばもう舐められてる。ビシッと聞く体制のやつは半分くらいであとはもう部員同士でゲラゲラ笑ってる。話を止めない。当たり前だ。
俺になんの面白味もないから。まっ、松下です。じゃこうなるだろう。もういい、しょうがない。それより、だ。

裁判所で【勝訴】を掲げる人かのごとく、一面AKBのスポーツ新聞を広げ、本題に入った。

『ちょ、みんな聞いて。これ。先生の好きなたかみなが7位以内ちゃうねん。みんなCDこーたりしてる?たかみなに入れてくれん?ピンチやねん。ホンマ頼む』

...。

『え、何?』
静まりすぎて普通に声が漏れた。

すると、何かが弾けたようにみんながこっちを向いて口を開いてきた。

『えー!!!せんせーたかみな好きなんー!?ウチこじはるぅー!!』

『せんせーあっちゃん好きちゃうん?俺あっちゃん派やねんけどー!』

『せんせーAKBすきなーん!』

『てゆーかせんせー何持ってきとーん意味わからーんどこで買ったーん笑』

『え、西明石のキオスクに売っとってん』

『え、せんせー西明石なん?』

『や、ちゃう明石方面ではあるけど、西明石とはちゃうわ』

『え、明石方面俺と一緒やん!先生チャリ?バス?』

『や、待ってくれ、そんな事よりポニシュシュのCD買ったって人おらん?俺それ聞いてんねんけど』

『や、先生どんだけAKB好きやねん!笑』

『てゆーかせんせー、頭盛りすぎ!ワックスつけすぎやろー』

『なんで先生がそんな髪しとーん』

『マジでそれ!俺もやりたいんっすよ』

『いやお前坊主やん』

『なーなーせんせーおれさぁー!』

『なーなー聞いて聞いてせんせー』

...あれ?楽しい。こいつら止まらんぞ。可愛い。
みんなに意見聞きたかったり、たかみなに票入れてほしかっただけなのに、結果なんか響いたぞ?ん?なんで?まぁいいか。

そうこうしてるうちに、チャイムが鳴ってしまった。
出席確認と業務連絡をしてない。更に、1時間目が移動教室だったから生徒は怒って来た。

『せんせー次○○先生怖いからはよ終わってー!』

『遅刻するってホンマいつまで喋っとーん!笑』

『すまん!もうほな出席えぇわ!全員おるやろどうせ!いけいけー!施錠しといたるから委員長も全員はよいけー!』

『先生マジで!ありがとー!!やったー!』

機嫌良さそうにみんな移動教室に行った。

全然参考にならなかったが、多少は心を掴めたのか、とても良い雰囲気を作れた。
そうかぁ、俺もあいつらと4年しか変わらんのだから、先生として!模範になるぞ!指導するぞ!じゃない方がいいんだ。
一緒に育っていく中で、間違ってる方向に行かないようにリーディングしてあげるんでいいんだ。
なるほど、何を気張っていたんだろう。何を緊張していたんだろう。一緒に成長していこう。歩み寄っていこう。そう思い、教室を施錠しようとすると、相変わらず窓際のカビゴンは寝ていた。

『いや、うそやん』

ゆっくりカビゴンの所に行き、起こした。

『ん?んー、寝とったーぁ。あれみんなは?え、ていうか誰?』

いやそりゃそうやんな。

『えっとな、昨日からお前のクラスの実習の先生』

『あ、そうなん、みんなどこいったん?』

『○○先生の移動教室行ったで』

次の瞬間、ピューン!!…一瞬で見えなくなった。
さすが全国から推薦で集まって来たクラスの運動部なだけある。そのことを忘れていた。瞬発力がえぐすぎる。

なんか懐かしいなぁ...。

そう思いながら、あいつが落として行ったドクターグリップのボールペンを拾い上げた。
いやこれめっちゃ勉強して中指にペンダコできるような人が使うやつやねん…。

そして、時は経ち。
慣れて来たからこそ、段々と話を聞かなくなって来たり、部員同士で話すのが楽しくて、ワイワイしてしまう時なんていくらでもある。あっちやこっちやでザワザワと。仕方ない。なぜなら自分もそうだったから。担任で俺らの扱いわかってない先生以外は、この状況の打開に本当に困ってたなぁ。

帰りのSHRで、担当の教育係から伝達されてる業務連絡等をきちんと漏れないように話さないといけない状況がきた。自分がいざ先生となると、ツケが回って来たとしか思えなかった。

でも、そういう時こそ...

ガラガラガラガラ

『ちょ聞いてみんな。大変や。先生、可愛いなぁって思う子がさ、きまってショートカット なことに気づいた!先生ショート好きなんかもしれん。何でえぇと思うんやろ?同じ気持ちの子おる?』

ザワザワザワザワザワ...ピッター

はい静まった、こっち見た、みんな興味津々の目をしている。はい、くるぞー...

『えー!せんせー!俺も俺も俺も!』

『おれ長澤まさみならなんでもいい!』

『別に誰とか聞いてへんしなんやねんお前』

『俺長い方がいい!あと茶髪ー!』

『あんた彼女ショートやん、言うとこー』

『ちょホンマミスったやめてやめて』

ザワザワは始まってしまったが、みんなこっち向いてる上でひとつの話に参加している状態になった。
そうなったらやりやすい。

『わかる!全部わかるねんけど、ちょっと明日朝また同じ質問するから先生に教えて。女子も頼むわぁ。ほんでさ!まだあんねん、いったん聞いて!』

もう聞く体制は整ってるので、つまんない話でも20秒なら持つ。

『生徒会役員の選挙が放送であんねんてー、それを聞いてこの用紙に書かなあかんねん、それとぉー○○と〇〇!2人にはこれをやってもらわんとあかんくてぇ〜…』

こうして絶対に伝え忘れの許されないことを伝えていく。
みんないやでもちゃんと頭に入るのだ。そしてストレスが溜まりだす30秒くらいで、終わらせるようにして、みんなの大好きな

「終わり!委員長号令!ほなみんな部活行ってこーい!」

を言えば、もうみんなが最高の状態で、クラス業務を終えることができる。

自分はそんなつもりはないが、目線を落として話す、みんなと一緒になることで、参加という体制や惹きつけるという、そもそも人の部分で興味を惹くことが大事。
自分が小さい時に好きだったあのおっちゃん(大人)の姿だ。

言わずもがな、それの積み重ねが信頼や関係性となり、その構築が内容よりも大切なこととなって来るだろうと思う。

もう1つ先のことを言えば、今は、教師と生徒の壁をきちんと作ることの徹底や、あだ名で呼ぶことは禁止されたり、教師としてのよくないマニュアルになりつつある。それを見た管理職の先生などに指導されることやよく思われない事例もきっと教育現場にはあるだろう。


自分の実習の頃にもあった。生徒は○○くん、〇〇さん、と呼ぶ、というのが。なんだそれ。でも難しい枠の中で、上手に実力を発揮して生徒と向き合ってる先生には本当に感服する次第だ。

信頼関係が短期間で築けてきてからは自分の実習生としての仕事がやりやすかった。

女子の生徒が

「まーつしーたせーんせーー!!」

と言って向こうからこっちへ嬉しそうに走ってくる。

おいおい、教育実習の先生がモテるってこれのことね!おいおいおい、めっちゃ嬉しいやん。そしてちょっとカッコつけて応えた。

「おいおい走るなぁ、なんやねんお前ら2人してうるさいなぁホンマ〜」

すると

「A先生めっちゃかっこいいねんけどー!」
「私はなぁB先生派やねん!やばない?」
「先生、これA先生にもらってん!めっちゃかっこいいばり大事にする」
「私B先生とさっき目ぇあってん!めっちゃかっこいいやばい!」

…んっ?…あれっ、わしは?

A先生とB先生?
この学校にサッカー部の実習生はAとBと俺の3人なのよ…仲良しなのよAとBと。
あとAとBイケメンなのよ、いじめんといてや神様。3人並んだ時にあんまり俺視線感じなかったのよ。

「え、俺は?」

「や、松下先生ちゃうわぁ!」

「でも先生が1番喋りやすい」

「そうそうそうそう!松下先生はほんま楽しい!」

…。

「そうか、ありがとうな(笑)」

「先生、帰るん?」

「俺、このあとAとBとサッカー部に顔出して、そのまま3人で寮帰る」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁマジでぇーーーーー!!」

「もうえぇわぁ!笑 お前らこのあとまだ20時頃まで部活やろ?ジュース好きなん飲みぃ」

「やったーーーー!松下先生マジ好き!!!」

ふんっ騙されんぞこのやろう。
でも、たったの110円の小岩井の紙パックジュースだけで、とんでもなく喜んでまた部活に戻る子たちを見て、一生この子達のような綺麗な気持ちを持ち続けないといけないなぁとも学ばさせてもらった。

それもこれも「せんせー!」って向こうから寄ってきてくれた信頼関係がことの発端だったことを考えると、やはり、子供の気持ちを持って一緒の目線に立つというのは本当に大事なことだなぁと思う。

そうやって自分がひとつさらけ出して降りることで、向こうからも綺麗な心を見せてくれるという相乗効果なんだ。教育って、漢字が悪いだけで、一緒に育っていくモノなんだなぁって1ヶ月で感じて実習を終えることができた。

心残りがあるとすれば、初日に教室に入ってきた時に、ガン見してきて明らかに壁があった生徒たちが、最終日には、お金を集めて、誰1人かけることなく書いてくれた寄せ書きや、キーホルダーや、写真に手紙、たくさんのものをみんなからもらった。その時に涙が込み上げてきて、でるぞ〜って時に、サッカー部が遠征、吹奏楽部が高校から離れた会館で練習ということで、早く終わって早く別れないといけなくて、感動の時間が瞬足で、教室から半分以上一瞬でいなくなったことくらいかな。

でもまぁ、11年経った今でも連絡とってる子がたくさんいるし、だんだんその子らが結婚していってるし、みんな元気で過ごしていることにもまた、自分ががんばれるモチベーションでもある今日この頃です。

大人になりながら子供になっていくというのは、実はすごい大切であり、成長のかぎなのかなぁと僕は思う。


著;まつしたしゅーと


ーーー

あとがき

ここまでご購読いただき、ありがとうございます。

皆様いかがでしたでしょうか?

ふと大人であり子供でもあることを思った時に、教育実習の時のことを思い出し、殴り書いたエッセイは(笑)

僕は1ヶ月の間で、0から1を体験したからこそ、鮮明に覚えていて、浅く未熟ながら自分の心の開き方の教科書になっている出来事となっています。

誰しもが歳をとる。歳をとると、自分よりも年下の方との出会いや関わりが増えていくわけですよね。
だからこそ、自分が子供だなぁと思うことこそ直さなくてもいいんじゃないかと。なんならもっと突き抜けてもいいんじゃないかと。絶対に役に立つ能力なはずだから、そのままでいいんじゃないかと。そんなことを思います。

そして、僕は本気で毎回noteを通じて執筆をしているからこそ、無料記事を書きませんでした。

でも、タイトルとサムネで気を惹くことが自分の実力不足ゆえなかなかできず、毎回のどうしても見てほしい記事の購読量が落ちて来てしまいまして…(笑)

ならば!と、1度皆さんに見て欲しいと思い無料記事解放にしてみました。
もし、面白いなぁと思いましたら他の記事や今後の記事、ご購読してもらえるととても嬉しいです。

そして最後の最後に実験をさせて欲しいです。

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ご協力いただけました際は、必ず個人メッセージを送らせていただきます。

何卒、よろしくお願い致します。

うおおおおおおお!子供のまま大人になろうなぁぁぁ!!!

いやいきなりどうしてん。

ではまた。

スバラ!!


皆様から有難く頂戴致しましたサポートの代金は、責任を持って執筆活動の際の私のカフェイン代、そしてインコの善ちゃんのエサ代とおやつ代に充てさせて頂きます🐥 ※お返事もさせて頂きますね。