水害体験記 浸水後の片付け
さて、水が引いてお片付けに行けたのは、浸水開始してから2日後だったと思います。たった1年でもはや記憶があやふや。申し訳ない。実家に避難して2泊目の夜ころ、ようやく水がひきました。
浸水開始から3日目の朝に、自宅のある市に向かうと、一見して平常通りでしたが、自宅に近づくにつれてどんどん「被災地」の景色になりました。
国道からちょっと入った先の通りでは、みんな、家の前に家財道具を出して、作業をしていました。
我が家は、夫と義父が先に到着して作業していたので、わたしが道具をそろえて自宅に着いた時には、もう家具を出し始めているところでした。
夫は作業開始前にも写真をかなり撮影していましたが、わたしにももっと撮影するように指示しました。
片付けながら、壁に泥の線が付いているところを見つけたら撮る……をひたすら続けるような感じで、家のものを寄せて、捨てて、泥と水をほうきとか、ワイパー? スクレーパー? みたいなやつで押し出しました。
水と泥をできるだけ外に出した後は、床に、すっごくうすめたキッチンハイター(というか、キッチンハイターがちょっと入った水)をかけて、気持ち程度の消毒をしました。
洗剤がちょっとだけ入った水で、ゴム手袋つけて雑巾がけするような感じだったと思います。
この際、汚水が上がった高さの証拠になる、壁に着いた泥の線は残しました。
※この泥の線は、行政の担当者が写真を撮りに来るまでは残しました。1週間くらい残してたと思います。
キッチンハイターは低い箇所にのみ使いました。子供が吸い込んだり目に入ったリが怖かったので、スプレーはしませんでした。
当時わたしがどうしたらいいのか一番知りたかった「消毒」については、インターネット上でも、業者さんでも、意見が割れていました。
消毒よりも乾燥が先! という意見と、乾燥したら菌が飛び散るから、消毒が先! という意見ですね。
これね、どっちが正しいのかわかりませんが、一つ、明らかな事実がございます。
「消毒しないと、乾燥後おそらく菌は飛び散りますが、乾燥させないと消毒したとしても、すぐカビるし、菌も繁殖祭り」です。
多分、もはや「卵が先かニワトリが先か」に近いのです。なので、乾燥も消毒も大事が、答えなのではないでしょうか。
あと、これも事実でしたが「修理の前に、まずは乾燥させてから着工」です。
服装は、ゴム手袋や軍手にカッパ。真夏でしたが、まだ小雨も降っていたのでカッパ必須でした。
脱水症状や熱中症に気を遣って作業しました。
とりあえず、何をどう判断して、どこをどうしたらいいのかわからず、ご近所の皆さんと声を掛け合い、情報を共有しあいながら作業しました。
助け合い、声の掛け合い、情報共有、ほんとに大事! メンタル的な面から見ても、無駄話なんていっこもないですよ! 大丈夫? がんばろうね。不安だね。そうやって気持ちを共有するのも、大事なことだったと思います。
ゴミ捨て場は、ビックリするほどあっという間にもので埋まりました。
多くのご家庭が捨てたものは、布製品やソファなど、汚水を吸うもの。木製の家具など、濡れてしまったら腐ってしまうもの。
冷蔵庫は斜めにすると、どこかからジャーって汚水が出てきました。冷蔵庫は食品を入れるものですから、汚水に浸かってしまうとやはり……また使おうとは、なかなか思えませんよね。
洗濯機を捨てたご家庭も多かったですね。下水が逆流したかどうかは、リアルタイム現場を見ていなかったのでわかりませんが、我が家では避難前にトイレや各種排水溝に水のう(ゴミ袋に水を入れた重し)を置いていきました。ですが、洗濯機の排水のとこはどうしたらいいかわからないので、できなかったのです。
我が家は、床下の基礎がそのまま地面という、古いタイプの家なので、床下の排水は不要でしたが、新しいお家で床下がコンクリートのご家庭は、ポンプを使ってじゃんじゃん排水作業をされておりました。
皆様、どこからどうやっているのかはわかりませんが、窓や玄関から、消防車のホースみたいなやつが出て、そこから水がドバドバ流れ出ていました。
ご親族や建築業者と縁の深い方は、とにかく作業や決断が早かったです。
我が家がインターネットで「消毒方法は?」「消毒ってやる意味あるの?」「石灰まくとか、どゆこと?」とか検索して、見つからないのなんのってやってる間に、親戚に大工さんがいるというお宅は、内壁を破壊してどんどんビショビショになった断熱材をひっぺがして家の前に山積みにしておられました。
建築業者関係の方と思われる家は、早々に床やら壁を破壊して、大量の業務用扇風機を持ち込んでいました。
彼らは「とにかく濡れた断熱材をはがして、乾かす」を即断即決で行動に移していたわけです。
ただ、これはお身内が大工さんとか建築業者とか、家の構造や造りを理解している方々がいるからできたことです。
家の中には、傷つけてはいけない箇所、壊したらまずい柱とか、そういうのがあるはずです。
素人が何も知らずにいきなり壁破壊は危険です。
まずは、プロに相談することをおすすめします。
お家を建てた建築業者さんや、家を買った不動産屋さんなどに連絡して、修理をお願いする業者さんを見つけてください。家の設計図や間取りを持っている、家を建てた業者さんが最有力候補だと思います。
我が家では、片付け完了後、1週間以内に、リビングの床だけですが、業者さんにはがしてもらいました。
行政の担当者さんに写真を撮ってもらった後、濡れてへろへろになった壁の、浸水箇所より下の石膏ボードをカッターで切って自力ではがしました(※柱には絶対触らない! 柱や木がない、ボードだけの部分を狙って切ります。ふにゃふにゃなので粘土並みの強度になっている個所を狙いました)
そうして空いた穴に、夫が手を突っ込んでビショビショに濡れた断熱材を引っ張ってはがしました。
断熱材は綿が袋に入っているような構造で、袋の中には水がたくさん入っていました。1週間以上経過していましたが、まるで昨日浸水したかのようにビッチャビチャでした。
断熱材をはがしたあと、柱や木材をハイターを薄めた消毒液を使って、雑巾で拭きました。これは正しい方法か解りませんが、バケツにハイターを薄めた消毒液を入れて、雑巾を浸けて絞って、それで水拭きしたあと、空拭きしました。ゴム手袋必須です。
床下の土の上には、石灰をばらまきました。床板をはがしていないところには、穴を通って、もぐりこんでいって夫がまいてくれました。
その後はとにかく、1階部分に扇風機をいっぱい置いて乾燥させました。
片付け開始初日、周囲の皆様から教わったり、町内会が伝達したり、行政がホームページで公開していた情報として、以下のことがありました。
・災害ゴミを捨てるための「ボランティア袋」を配布していることと、配布している場所。
・ボランティア袋がなくとも、袋に「災」の字を書けば、ごみを捨ててもよいこと。
・災害ゴミを置く場所。粗大ごみも同様。
・運べない重さのごみは、家の前に置いておいてもいずれ回収するということ。このため、捨てたくないものは家の前に置かないでほしいこと。
・生ごみは「災害ごみ」には入れないで、指定の燃えるゴミ袋に入れること。
・避難所開設情報。
また、小雨が降っているうちはまだよいと言うか、よくもないのですが、日が出て地面が乾いて来ると、町全体が砂ぼこりまみれになり始めました。これはもう、マスクなしでは危険なレベル。2週間くらいこんな感じ……というか、1週間後くらいが最もひどかった気もします。
なので、水災害後、すぐに晴れた中で片づけをされる方は、本当にマスクを忘れないようになさってください。