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おっちゃんのたこ焼き

「俺たちの青春よ!バイバイ!」
地元の友達がSNSに投稿した写真には、
慣れ親しんだたこ焼き屋さんが写っていた。

強面のおっちゃんと、よく喋る奥さんの夫婦で営んでいて
100円で6個入りの、安くて美味しいたこ焼き屋だった。


小学生の頃、お小遣いを貯めてたこ焼きを買いに行った。
10円玉を10枚、ポケットに入れて自転車で行った。

「たこ焼き100円分下さい!」

僕はそう言いながらお金を奥さんに渡した。
奥さんはニコニコしながら、受け取った10円玉を数えていた。

おっちゃんは強面で角刈り頭だったから怖かったけど、
笑顔が優しい人だった。
子供にたこ焼きを渡すときは、より一層目元を柔らかくして、
「熱いさかいに、少し冷ましてから食べるんやで」
と言ってたこ焼きを渡してくれた。
「さかいに」を使う人はおっちゃんだけだから記憶に残ってる。

自分のお金で買ったたこ焼きは、この上なく美味しかった。


10数年ぶりに、たこ焼き屋さんに向かった。
あのたこ焼き屋だったとこは、シャッターが閉まっている。
奥さんが病気になって店を閉めたらしい。
もう、ここのたこ焼きを食べられないと思うと、寂しい。
また、おっちゃんのたこ焼き食べたかったなぁ。

たこ焼き屋を探し、ふらふら歩いて駅前まで来た。

チェーン店のたこ焼き屋があった。
300円で6個入りの普通のたこ焼き屋さん。
「ちょっと高いけど、ここでいいか。」

店頭でたこ焼きを焼いてる人に声をかけた。
「すいません、たこ焼き12個もらえますか?」
顔を上げた店員は、中年くらいで髪が角刈りの男性だった。
もしかして、おっちゃん?
と思ったが、10年以上も前のことだから覚えていない。
「600円ね」
「は、はい。」
渋い声を聞いて、僕は少しうわずった声で答えた。
「ありがとう。12個入りね。まいど。」

店員さんが、おっちゃんっぽかったが、
確信がとれなくて聞けなかった。
もやもやしたまま帰路に着こうとした。

「ほら、たこ焼き6個くださいって言える?」
小学生くらいの子供を連れた女性が僕の次に並んでいた。
「たこ焼き、6個下さい!」と子供が言っていた。

僕がたこ焼きを買いに来た頃を重ねながら、
横目で親子を見ていた。

たこ焼きを渡す時に、店員さんが答えていた。
「熱いさかいに、少し冷ましてからたべるんやで」


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