先生たちの夏フェス!「Teachers'HUB」(5)
7月21日(日)、新渡戸文化学園で 13時から始まった「Teachers'HUB」も始まってしまえば、本当にあっという間に16時半を過ぎ、クロージングを迎えることになりました。
クロージングイベント会場には、ホクホクの笑顔の参加者たちが大集合!
熱気に包まれた会場では、まずこの日のイベントを作り上げた新渡戸文化小学校の先生スタッフの皆さんへの感謝!
そして、新渡戸文化学園で教育のシンボルとして掲げられている「Happiness Creator」を含んだ教育目標や、現在挑んでいることについての発表がありました。
新渡戸文化小学校の紹介
新渡戸文化学園全体で掲げているのは「しあわせをつくる人になろう」という言葉です。「Happiness Creator」って言ったりします。この場にいた人は聞いたかもしれないですが、原則がこれになります。
小学校では「しあわせをつくる人になろう」というのは私たちの最上位の目標であり、存在の目的になっています。全ての教育活動や1つ1つの指導の判断基準みたいなものをここに寄せていこうという、シンプルな思考回路で私たちは仕事をしています。
「しあわせをつくる人」というのはすごく概念的なので、私たちは12の学習者像ということにして、どんな幸せを作る人なんだろうというのを12個の要素に分解しています。
これが教室に貼ってあったり、これを使って三者面談で子供が語っていたり、今はこれを目指してみるという自分の宣言に使ったりして、いろんな場面で活用されています。
でも、これが正解ではないので、今年もこれを見返しながら何が「しあわせをつくる人」なんだろうと考えながら、日々進んでいる小学校です。
「しあわせをつくる人になる」ーーそんな人を作るためにはやっぱり普通の授業や指導をしているわけにはいかないので、私たちは大きく分けると2つの挑戦をしています。
1つは、プロジェクトの文化を作る=授業のことです。2つ目は対話の文化を作るということです。
それぞれを簡単に説明しますと、まず私たちの授業の特徴として、「プロジェクト型の学び」を全ての教科で取り入れようということに挑戦しています。
いわゆるPBL(プロジェクトベースドラーニング)という教育手法を使っています。
そのプロジェクト型の学びをさまざまな教科で経験しながら、その実験的かつ象徴的な時間として、総合的な学習の時間を「プロジェクト科」と言い換えて活動しています。
プロジェクト型の学びを、私たちはこのような共通構造を見ながらやっています。面白そうですよね。
私たちが学んで欲しいこと、教えたいことみたいなものがもちろん日々ある中で、それをこどもたちが自発的、かつ必然的に学んでしまうようなアウトプットってなんなんだろうというのを考えて授業作りをしています。
例えばスタッフの一人が考えた授業では、理科でどうやってたねが発芽するんだろう、成長するんだろうというのを考えるために、ボールゲームを作る授業があったりとか。
さまざまな教科で面白いアウトプットを使って授業をしています。少しでも気になることがあったら聞いてください。本当に面白い授業ばかりやっています。対話の文化を作るということにも挑戦しています。
本校では全校ミーティングという仕組みがあって、誰もが学校のルールを本当に変えることができます。
誰でも議題を提案できて、それが各クラスに波及していって、最終的には1年生から6年生までの代表が集まる「新渡戸サミット」という場で、本当にルールが変わったりします。
例えば本校は制服がある学校ですが、私服で楽しみたいという意見が当時の2年生からあったことで、実現して、私服でイベントが行われたりします。
本当に子供たちによる会議が議題を実行する権限を持っているというのはとても強みだと思います。この対話文化があるからこそ、PBLのプロジェクト型の学びというのが前へ進んでいくのかなと思います。
私たちが目指しているものに「文化」と名づけたのは、プロジェクトの授業も、対話の授業も、それ1つ単体ではなんの意味もなさないと考えているからです。
プロジェクトでよく使われる図ですが、プロジェクトをしているだけでは、それは日々の中での特別授業、デザートみたいなおいしいものとして日々流れていってしまいます。
ですが、私たちは、プロジェクトを文化とした学びとすることで、それ自体を学校のメインコースにしようとしているというのが理想です。
プロジェクトにおいても対話においてもそれを全ての教育活動に浸透させていく。そんなことを目指して私たちは日々挑戦をしています。新渡戸文化小学校の紹介でした。
新渡戸文化中学校・高等学校の紹介
中高生には、まずどんな人になりたいと思っていますかと問います。
新渡戸文化中学校・高等学校も、小学校と同じように、新渡戸稲造先生の思いから「Happiness Creator」=社会にしあわせをもたらす人をつくりたいと思っています。
中高でも教員研修で話し合って、生徒たちには自律することが必要だろうと思って、自分に対する社会的能力と他者に対する社会的能力と他者と社会への能力を考えました。
基礎学習はどうしたって一般受験で大学を目指そうとなると勉強が必要になるんで、そういった授業と、教科横断クロスカリキュラムという時間割と、あとは自分自身で課題を設定して取り組む学び方という3つになっています。
時間割としては実は水曜日をまるまる抜いて基本的にはやってみたいことをできるような時間割にしています。
水曜日はどんなことをやっているかと言いますと、中学校ではまず生徒に好きなことアンケートをします。
教員の数に合わせてラボに分けて、好きなことをグループもしくは個人で探究していきます。
高校ではグループとは言わずにほぼ個人という形になっていくんですけれど、3つのコースに分かれていて、探究進学と、フードデザインと美術に分かれています。
それぞれのテーマにあった探求であったり、もしくは横断して、探究だけど食べ物のプロジェクトをやったり、フードだけど美術のプロジェクトをやりたいなど、大体150本以上のコースやプロジェクトから生まれたものがあって、実際に動いているもの、プロジェクトのたねを先生たちと対話しながら進めていきます。
我々が大事にしていることは、生徒の興味と、誰かのためになるんじゃないかなということを掛け合わせることを大事にしています。
このようなプロジェクトを進めていく段階でカリキュラムには、2つのポイントがあります。
1つは、アウトプット型テスト。小学校でもありましたが、学期末テストではなく、パフォーマンス課題のような形で学んだことを発表していきます。プレゼンやスピーチ、小論文だったり、動画を作ったり音楽を作ったりして、この学期のこの教科をこのように学んだよということを表現します。
もう1つは、スタディツアーですね。スタディツアーは全国20か所、上は北海道から下は宮崎県まで、行きたい場所を選んでもらって、スタディツアーを行っています。
スタディツアーでは、いろんな大人に出会って、本物に出会って、現地の課題を感じながら、自身を問う、問い直していくというような形の学びをしています。これらを行っているのは、好きから始まるプロジェクトを生むために行動や創造をしてもらって、自分の問いについて形にして、誰かのためになることを表現してもらいます。
最近、生徒から進路相談を受けました。進路でとても悩んでいると。三者面談をお母さんとしたんですが、夜に思い悩んでしまうと。プロジェクトも勉強も頑張っているのに。「自分はネガティブなことを考えるのが好きなんですが、それはダメですか?」と言われました。
私の固定概念でその子に蓋をするところだったんですが、その子の「ネガティブなことを考えるのが好きだ」という思いを形にして共有するお手伝いをしながら伴走するほうが、自分にはいいのかなと思いました。こんな学校です(笑)。これからも彼らに伴走していこうと思います。
参加者からの感想の発表もありましたのでご紹介します。
「今日は必ず質問して手をあげてアウトプットしようと思って来ました。皆さんもこういう場で手をあげてすぐアウトプットする大人として変貌していきましょう。楽しい学びと出会いをありがとうございました」
「今日はありがとうございました。私ごとなんですが、二人の子どもがいて、4年間の育休をいただいていて。復帰は楽しみなんですが、こういう場でいろいろなお話を聞いて、自分のポリシーを作る機会をいただいたいので、育休の残り半年でしっかり何を大切にしたいのかを考えて、学び続けていきたいと思います」
最後に新渡戸文化小学校の校長補佐を務める遠藤崇之先生から言葉がありました。
「今日このイベントは小学校の教員が中心となってつくりました。そもそもうちの教員がこういうことをやりたいと言い出したんですよね。普通の業務がある中で。で、「やろう!」となり。「こういうことやりたい人この指止まれ!」って言うと、止まるんですよね、こういう人たちが。今、新渡戸はそういう学校になっているんです。新しいことをやるのって本当にしんどいんですね。本当に日々しんどくてお腹痛いわ、泣いちゃうわで大変な日々なんですけれども。とはいえ、1つ希望があって、新しい教育、これから必要になってくる教育、誰かが求めている教育というのを私たちは作るぞって。そういう思いで、今やらせてもらっています。今日はありがとうございました!」
ちなみにすでに来年の開催も決定しているそうです。楽しみです!!!!!