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(終焉)あけましておめでとうございます③

あらすじ
初日の出を見るために、徹夜をして登山をするのはもうやめよう

僕たちは「山に行く行かない」論争をしばらく続けましたが、結局誰もサイコパスに勝つことができないまま、ひとまずすき家を出ることにしました。すき家は長居する場所ではないですからね。

すき家から出た後、サイコパスはいつもの台詞を言いました。
「一旦仮眠をとろう」
終わりました。
この言葉が出たら、まず登山は回避できないでしょう。

僕、デブ、サイコパスの三人は、お酒を飲んでいない友人の車に乗せてもらい、仮眠の舞台である僕の家へと戻ることになりました。なんというか、口では嫌だと言いつつも、体は定められた運命に向かって従順に動いている感覚がして凄く嫌でした。運命論を信じてしまいそうな出来事でした。

友人。彼の名はキチガイ

ここで、初登場の友人を紹介しておく必要があります。僕たちを車に乗せてくれた友人です。その名も、キチガイ。

こいつ

僕とキチガイは、中学時代で特に友情を育みました。キチガイは長身で顔も良く、僕たちの中では稀に見る好条件の外見の持ち主ですが、内面の方がからっきしダメで、わりと破天荒な人生を歩んできた人間です。もったいない奴、という言葉が世界で一番似合うかもしれません。

彼の内面はまさに大海で、穏やかで温かい日もあれば、荒れ狂う大波の時もあります。「タバコを吸う奴は全員死ねばいい」、と何年も言ってきたのに、最近は「タバコがないと生きていけない」と平然と言います。昔は出会う人間を蹴ることが習慣になっている時期もありましたし、かと思えば、一人で机に向かってシャープペンシルを改造することに人生を注いでいた時期もあります(そのせいで第一志望の高校に落ちました)。

好き嫌いも多く、給食ではいつもなにかしら食べ物を残し、担任の先生にため息をつかれていました。例えば豆。豆が苦手なキチガイは、豆料理の中から豆だけを丁寧に弾き、弾いた豆の粒一つ一つに対して悪口を浴びせるという狂気の行動に出ていたことがあります。

僕の記憶では、初めてちゃんとキチガイと話したのは、小学校五年生。二人ともサッカー部に所属しており、小さな市民大会に出場した時のことです。キチガイはありあまる身体能力と、あまりに足りないサッカーIQが相まって、バウンドしたボールをヘディングしようとジャンプしたものの、飛び過ぎて顔面をボールにぶつけてしまったのです。僕はこの今でも顔面とボールが激突する瞬間の痛々しい光景を鮮明に覚えています。そして、その試合が終わった後のことです。僕は何故かキチガイと一緒におにぎりを食べていて、キチガイがこう言ったのを覚えています。

「米が血の味がする」

僕は爆笑し、そこから彼とは仲が良くなったような気がします。

それで?

さて、書いていると、キチガイとのエピソードがあれもこれもと溢れ出てきくるのですが、ひとまずここでやめておきましょう。

何故キチガイをここで紹介したかというと、ここから先、キチガイがまさにキチガイな行動を起こすからです。信じられません。

続く

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