(終焉)あけましておめでとうございます①
12月31日の話です。僕は夜まで働き、もう帰って、食べて、寝たい気持ちしかありませんでした。
しかし、疲労で満ちた体でようやっと家に帰り、テレビをつけると、紅白歌合戦が始まっていました。今年は有吉さんが司会でした。
途端に背筋の裏から、鳥肌が駆け巡ってきました。
自分はこれから、深夜を徘徊し、朝には山に登って初日の出を見なければならないという事実を、改めて認識してしまったのです。
年始は、登山
僕は毎年、デブとサイコパスを始めとした友人たちと近所の神社で新年を迎え、ここ五年は、どういうわけか朝に四キロ以上歩き、山に登って初日の出を見るのが恒例行事となっていました。
最初の一年、二年は確かに楽しかったかもしれません。大学生になったばかりの興奮で沸き立っていましたし、怖いもの知らずで、安定より挑戦を選ぶことに酔っていました。ですがもうここ数年はマンネリ化し、僕たちも随分と年を取りました。寒くて朝早くて、寝不足で苦しくてと、早朝登山の悪い部分にばかり目が行くようになって、度々「今年はやめよう」との議論がなされてきました。僕はもちろん登山廃止派に所属しています。
しかし、登山肯定派にはサイコパスという、頑固でおぞましい人間がいて、毎年毎年、彼の強引かつ気持ちの悪い主張に押し切られる形で、結局は山に登る羽目になってしまうのです。
「本当は山に登りたいと思ってるんだろ?」
「ここで山に登らずして、新年を迎えられるのか?」
「一旦仮眠をとって、それから考えよう」
これらは全てサイコパスの発言です。彼が発した数々の狂言のほんの一部です。気持ちが悪いでしょう?
もう本当に、帰って寝たいです。僕は年末まで働いたんです。
もう、頼むから休ませてほしいのです。
僕は今年社会人になりました。暇を持て余しているサイコパスとは違うんです。山から帰って一日寝たら、2日からもう働かなければならないのです。これから何日もダラダラ過ごせるサイコパスとは、違うのです!
結局、スタート位置にはつくわけで……
深夜十二時前。
僕は神社に行きました。
そこには、山に登るぞ、と意気込んでいるサイコパスの姿がありました。
もしかしたら、この神社にきた時点で、負けは濃厚になっているのかもしれません。サイコパスは意気揚々としています。普段は暗い人間なので、ここまで明るい笑顔を見せられると、果てしない恐怖を感じます。
一年ぶりに会う友人もいて、会話は弾んで楽しかったのですが、後に控えていると思われる山が、僕の心を圧迫していきました。
僕は他の登山反対派の面々と協力して、サイコパスを殺すべきでした。それが登山を回避するための唯一の手段なのですから。
参拝に並ぶ列の中から、カウントダウンの声が聞こえてきました。早いもので2024年もあと数秒で終わるのです。
3……2……1……ハッピーニューイヤー!
あけましておめでとうございます!今年もたくさん文字を紡ぎますので、よろしくお願い致します。
さて、山に行きますか。はぁ。
続く