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映画感想『交渉人・真下正義』
こちらのスピンオフにも手を出さずにはいられませんでした。
1 独自の世界感
『踊る大捜査線2 レインボーブリッジを封鎖せよ』の最後から繋がるように始まる今作は、やはりレインボーブリッジと同様の雰囲気が土台にある気がします。
というのも、あらかじめお台場という舞台を作り、それを観客に見せ、中盤終盤でそこをとんでもない災難に陥れるのが『レインボーブリッジ』で、今回も独自の地下鉄ルートと、それを制御する司令室の紹介を最初にして、後からそこが大変なことになっていくのが今作だったからです。
言いたいことは、大ヒット作の二番煎じだということではなく、スピンオフながら、超大作と同様の、壊してもいい世界観作りを徹底してきたのが素晴らしいということです。
現実的な日本が舞台ですが、ちゃっちくて狭い世界に感じる事がなく、むしろ広大な世界が広がっていて、司令室の人々の真剣さが阿保に見えなかったり、起こっている事が非常に重大なことに思えたりしたので、かなり世界観に引き込まれました。
スピンオフだからと舐めていたのがいい意味で裏切られました。
2 真下正義
不思議とカッコよく見える瞬間がありました。
踊る本編では、微塵もかっこいいと思ったことはなく、(かといって面白いと思ったこともない)ただの準キャラの1人という認識でした。
今作でも、彼の心境の変化だったり、プライベートでの体たらくには別にかっこいいと思いませんでしたが、指示を出している時は信じられないくらいかっこよく、頼もしく感じられました。
犯人によって多少真下の感情が右往左往する場面はありましたが、個人的にすごい良かったのが、鉄道会社の人たちに邪険に扱われる時に終始冷静だったことです。
鉄道会社は、最初は嫌らしい閉鎖的な会社で、真下のことを除外し、全く信用しません。ひどい言葉を浴びせたりします。それでも真下は飄々とし、自分のやる事だけを見つめていて、とても警察庁の偉い人の息子だとは思えない、世渡り上手で逆境に挫けない一面を持っていると感じました。
3 犯人わからんのかい
踊る大捜査線のシリーズにしては珍しく、犯人が誰か気になるような、わりと本格的なミステリーを作っているように感じました。
犯人が誰か、またその目的は何か、動機は、真下との繋がりは?
しかし、ほとんどわからずじまいでした。犯人はわからず、目的は分かったものの、動機は意味不明、真下との繋がりもわかりません。
犯人がわからないなら、わからないなりに説得力を持たせるべきですよね。犯人には誰しもがなりえるという恐怖やメッセージを含ませたり、多分こいつなんじゃないかという濁った答えを出すなど。しかし何もありませんでした。
結果、犯人がしようとした最悪の事柄は免れたけども、こちらが犯人を追い詰めることはできなかったという、僕からしたらハッピーエンドではない終わり方になってしまったと思います。
最後に真下が車を追いかけるシーンは滑稽でした。真下がたらたらと走って車に追いつきそうになると、車が少し進んで、距離ができると車がまた止まるという謎の追走劇でした。これで犯人がわかればよかったものの、結局車が爆発で終了ですから、非常に苛立ちました。青島がいたら.....
4 まとめ
一本の映画として、細部はともかく、やりたい事と作りたい雰囲気が明確で、観ていて気持ちの良い一作でした。
犯人に遠隔で地下鉄をジャックされて慌てふためく様や、皆でそれを乗り越える様は、お仕事映画としての魅力もたっぷりだったと思います。
どうせ踊る大捜査線を追うなら、観ても後悔しない出来の映画だと思います。