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今日の電車は酔う
仕事へ行くために、毎度同じ時間に電車に乗ります。
何も考えずに、適当に乗っています。
そんな中、ふと気が付いたのです。
今日は酔うな、と。
僕は元々酔いやすいタイプなので、酔うこと自体は珍しいことではありません。小学生の頃、バスで盛大に吐いたことを今でも鮮明に覚えています。吐しゃ物の臭いや色まで覚えています。寒気がしますね。
ただ、流石に毎日といっても過言ではない程に乗っている電車ですから、普段は酔いません。今日だけ酔うというのはなんだか不思議だったのです。
まずは自分の体調を疑いました。原因はまず自分にあるのではないかと考える。いい心がけです。寝不足や、体調不良や、前の日に変なものを食べたのではないかと色々考えてみます。
珍しく思い当たりません。
その時、電車が駅に停まりました。ガクンと揺れて、立っていた僕は、一歩足を前に出す羽目になりました。
もしかして、今日は別の人が運転しているのでは?と僕の脳がひらめきました。僕は電車がどういう仕組みで動いているのかも知りません。そもそも運転手で電車の揺れが変わるものでしょうか。
いや、変わるはずです。運転しているのは確実ですから、いくら時間通りであることに定評がある日本の列車たちも、運転手の力量や、気分、ちょっとのタイミングのずれがあるはずです。
間違いありません。今日はいつもとは違う人です。「いつもの人」を覚えているわけでもないですが……
さて、話はここからです。僕は酔いの原因が判明してすっきりとした気分になるはずだったのに、感じたのはどういうわけが申し訳ない気持ちでした。
どうしてそんな当たり前のことに気が付かなかったのでしょう。バスだったら、大きく揺れただけで運転手の力量を疑いますし、道路が混んでいて遅延したとしても運転手の力量を疑います。バスは人が運転していると、僕はよくよく理解しています。先程の例のように度々イライラすることもありますが、運転して下さる人には常日頃感謝しています。
しかし、電車の運転手に対しては、感謝をしたことなんてなかったのです。何故なら、電車は人が運転しているという意識が非常に少なかったから。僕はなんと視野が狭く、薄情な人間なのでしょう。人間が運転していないと感じるくらいに時間通りでスムーズ、という捉え方なら、それは褒め言葉になるかもしれませんが、とにかく僕は、申し訳ない気持ちになったのです。
今まで浴びる程電車に乗ってきたので、今更思っても遅いかもしれませんが、電車の運転手さんたち、いつも電車を動かしてくれてありがとう、と心から思った一日でした。
どんな仕事も遅刻は許されませんが、運転手なんてものは本当に遅刻できませんよね。あらかじめ連絡した場合ならいいですが、当日に寝すぎてしまった、なんてことが起こったら、一体どうなってしまうのでしょうか……想像するととても怖い。