(温泉)風邪の始まり③
あらすじ
大学生だらけの温泉にはうんざりだが、結局は自分たちも大学生とやることが変わらない
1 サウナ
デブ、ドングリ、サイコパスはサウナが好きです。特にデブはことあるごとにサウナサウナと連呼し、しばしばサウナに行っている様子です。サウナで汗をかいているはずなのに、一向に痩せないのが不思議です。逆にドングリは、骨と皮しかないような肉体で、よくぞサウナに入ってミイラにならないな、という感心があります。
僕はどうもサウナと冷風呂が苦手です。元々日常の水分摂取量が少なく、サウナに入ろうものならあっという間に身体中の水分が消され、干物になってしまいますし、冷水というのはこれまた心臓に悪く、毎度入るたびに涙が滲みます。
デブたちと温泉に行くと当たり前のようにサウナに入る流れになっていて、毎度抵抗するのですが、多数決には勝てませんし、置いていかれて知らない大学生たちの狭間で苦しむのも嫌なので、僕は今回も嫌々サウナに行くことにしました。
2 ととのう
サウナの回数を重ねていくうちに、サウナの魅力もわかってきました。灼熱と極寒の先にある、いわゆる“ととのう”という状態は、確かに至福と呼んでしまいそうな心と体の爽快感があります。
僕は長距離走をやっていたことがあり、サウナはそれに似ている気がします。長距離走も、走っている時は地獄ですが、走り終わってしばらくすると、全身の血液が巡り巡って体が生きているような感覚を得ることができます。そんな感覚と、ととのっている感覚が似ているような気がするのです。
デブたちは、僕が長距離走をやっている時に、散々ドMだと嘲笑ってきましたが、僕からしたらサウナに喜んで向かっているデブたちもよっぽどです。
3 風邪の予感
ととのうためには、露天風呂のエリアに設置されているベンチに座って夜風を浴びることが必須です。涼しい風が体に吹きつけて思わず寝てしまったりもするのですが、ととのいが終わった状態でもこれを続けていると、要は素っ裸で外を歩いているのと大差がないので、体調を崩してしまいます。
デブは馬鹿なので風邪を引かないとして、ドングリは意外とそういう部分に気を遣って生きているので風邪を引かないとして、サイコパスは周期的に病にかかる業を背負っていて、今回はその時期ではないので風邪を引かないとして、残るは僕です。世間はお盆でヘラヘラとしている中でストレスを溜めながら働き、心身共に擦り減っている僕は、ウイルスの格好の的です。
露天エリアでダラダラとしているあの瞬間、僕は確実にウイルスを取り込みました。もしかしたら、風邪を引いても気にしない愚かで無様な大学生のうちの1人から拾ってきたのかもしれません。あるいは常時ウイルスと共生しているサイコパスに移されたのかもしれません。サイコパスの一家は、全員がコロナに感染したので、やけっぱちになって家族全員でパーティを開くような人々です。
後から考えると、ここ以外風邪の原因が見当たりません。
4 満足感
風邪にかかったことも知らず、僕は1時間以上銭湯で過ごし、記憶に何も残っていない程にくだらない話を友人たちとしました。
帰りにアイスが食べたくなるのはいつものことで、皆でファミマに行きアイスを食べました。サイコパスは2リットルの麦茶を買っていました。気持ちが悪すぎますね。
久々に銭湯に行き、なんだかんだで満足してその日は幕を閉じたのでした。
5 で
で、風邪を引いたというわけです。病院に行くほどでもない、会社を休む程でもない微妙ーーな風邪を。
結果、デブを恨んだというわけです。
ですが、デブはうちにスイカを届けてくれたのでチャラです。
スイカ美味しかった。