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老人は走り出す。
単なる健康維持の為ではない。
夢のため、子どものような馬鹿げた目標のために走り出す。
それでいい。
いつの間にかその老人の走りには、若い世代が感化される。
そ…
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#競技場
長編小説『老人駅伝』⑬
十一月二十二日の早朝、私がもう少し寝ていたいと感じる程の暗がり時に、家のチャイムが鳴らされた。妻よ出てくれ、という希望を持って隣を見ると、押しても蹴っ飛ばしても動かないぞと言わんばかりの決意を持った塊が出来上がっていたので、私は呻き声を上げながら玄関に出た。
そこには、川外勇也がジャージ姿で立っていた。いつにもまして申し訳なさそうな表情をしている。憎たらしい顔だよ、本当に。安堵と嬉しさがこみ上