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【富美菊酒蔵(羽根屋)】お酒談義はとまらない(2)!(オンライン試飲会)

去る4月23日に、某会社の日本酒の会に富美菊酒蔵(羽根屋)女将さんの羽根さんをZOOMにお招きしてオンライン試飲会を実施しました。

今回の参加者は16名(ごめんなさい、全員の写真はプライバシーの関係で載せられません😰)。

お酒は羽根屋さんのお酒3本「純米大吟醸50翼、純米吟醸プリズム、究極しぼりたて、純吟 煌火~きらび~ 」と、地元富山鮨蒲本舗河内屋のかまぼこ、奥会津天然炭酸水を用意。

進行は僭越ながらわたしが担当、羽根屋女将さんと唎酒師吉川恵里子さんとともに、先ずは乾杯して参加者の皆さまの自己紹介とお酒にまつわる話で開始。その後、皆さまは酒蔵の現場にいらっしゃる羽根屋女将さんのお話に聞き入りお酒についての話に花が咲きました。

冒頭、日本酒に詳しい皆様から「羽根屋の女将さんからお酒造りの話が伺えるなんて感激~」との言葉から始まり、羽根屋さんのお酒造りに対するこだわりと情熱、富山県の情景を想像しながら、参加者みんな興味津々。

羽根屋さんの醸造秘話等に質問が相次ぎ話題が途切れることなく、最後には「女将さんのお話をもっとお聞きしたい、酒蔵に訪問させてください!」、と楽しい約2時間はあっという間に心地よい余韻を残して終了しました。


富美菊酒蔵(羽根屋)の紹介

富美菊酒造 外観1 (002)

1916年創業、建屋は創業当時の建物を残しつつ、増築をして拡張しています。

お酒造りの特徴は、何と言っても「全てのお酒を、コンテスト出品用大吟醸酒を仕込む方法で造っていること」

羽根屋の日本酒は、立山連峰からの雪解け水が海へ流れる高低差がある富山の風土にあります。質の高いお米富山県産五百万石と日本の名水百選にも選ばれている富山の名水・常願寺川水系の超軟水の天然水。

その材料を、作り手が最高品質のお酒となるようこだわって時間をかけて情熱をこめて丁寧に造っているのです。だから少量しか生産できません
羽根屋の美味しいお酒には理由があるのです。


こだわりのお酒造り

洗米

では、羽根屋の特徴のこだわりのお酒造りとは、具体的にどういうことでしょうか?

まず、お酒造りで最も神経を使うところとして、お米の吸水作業。市販酒では見られない大変な手作業をしています。

この手作業によるお米の吸水工程は、「寒い、冷たい、重い」、さらには途方もなく時間を要するのです。

羽根屋では、お米は10kgずつ小分けして手で洗います。

小分けすることにより、糠を綺麗に洗い落とすことが出来て水が濁らず水切りも早い。

この作業の肝はお米の吸水管理であり、秒単位で測る繊細な工程
米一粒一粒の吸水割合を一定に保つためには必要な作業なのです。

後に、質疑応答でも詳しく説明されたのですが、

お米の吸水時間というのは、
お米の種類によって違うだけでなく、同じお米でも気候の違い(最近は温暖化による高温障害等もある)により年によるお米の出来によっても違ってきます。

また、吸水するタイミングは、季節によって、気温によっても変わります。

この大事な繊細な部分を杜氏が目視で確認して秤で測り微調整、これまでのデータと経験を結集させたものなのです。吸水させ過ぎると元には戻せませんので、神経を使います。

これは、米を洗う⇒吸水率を管理する⇒良い蒸米が出来る⇒良い麹が出来る、となるお米造りの基礎となる重要な工程の第一歩なのです。


今回のお酒


今回、女将さんにオンライン試飲会でご用意したお勧めのお酒と蒲鉾の説明をして頂きました。


羽根屋 純米大吟醸50 翼

羽根屋 翼 (002)

乾杯で使ったお酒。
四季醸造なので夏場も含めて通年にわたり生で提供できるアルコール度数15度の飲みやすさをコンセプトに設計した日本酒。
富山県産五百万石を50%まで磨いてます。

翼のネーミングは飲みやすさから軽やかなイメージであり羽根屋にかけたもので、全日空(ANA)の国際線ビジネスクラスの日本酒セレクションにも選ばれています。

2016年と2017年イギリスのインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC) 金賞受賞。


羽根屋 純吟 煌火(きらび) 生原酒

羽根屋 煌火 (002)

羽根屋で最も売れているお酒。アルコール度数は16度ちょっと、フルーティーでしっかりした味わい。魚はもちろん天ぷらなど味の濃い食べ物とあわせることができるアイテムです。
富山県産五百万石を60%まで磨いてます。

飲み方として炭酸割りを紹介(天然炭酸の水を使用、お酒と同じ軟水)。
お勧めは、注ぎたての煌火に炭酸を1:1の割合、ミントを入れるとスッキリした清涼感も出ます。割合はお好みでどうぞ。
ただ、アルコール度数が高い割に飲みやすくなるので飲み過ぎにご注意を。
お酒にほのかな甘みがありますが、シロップを入れても飲みやすくなります。

フランス日本酒品評会 「KURA MASTER 2018」 プラチナ賞受賞。


純吟プリズム 究極しぼりたて

羽根屋 プリズム (002)

こちらも富山県産五百万石を60%まで磨いてます。
スペック的には煌火と似ていますが、違いは、しぼりたてを濾過せず(無濾過)最短時間でボトリングしているところ。それ故、ネーミングは「究極しぼりたて」。

通常濾過する理由は、品質を安定させるため、すなわち品質を劣化させる微生物を取り除くのです。
無濾過は品質的に劣化リスクがあるため、ボトリング数に限界があり年一度の限定販売。すぐに売り切れてしまう大変人気のある商品です。

基本的には蔵人だけが飲めるお酒だったのです。
(参加者から、それが美味しいに決まってるよねー、の声)

それを発売したかったのです。
(すごくふくよかですよねー、一日経った方が深みがあって美味しい! 開栓後すぐはすっきりドライ、味が変わる不思議なお酒、プリズムの名の通り! 一日で飲み干さないように気をつけないと、との声)。

無濾過は微生物の働きで時間が経つと味が変わっていき飲み頃はお好みとなりますが、味の変化をご理解いただいた方にお飲みいただくようお願いしています。

因みに、開栓後は家庭用の冷蔵庫で保管すると若干温度が高いので劣化が早い。


かまぼこ(鮨蒲河内屋の蒲鉾)

今回、淡白なおつまみとして地元富山の美味しい蒲鉾が羽根屋のお酒に合うのでお勧めしました。
富山県は海産物の宝庫で蒲鉾も有名で、富山県の結婚式では引き出物に蒲鉾を出したりする習慣があるほどです。
この蒲鉾は、保存料や防腐剤を一切使わず自然な美味しさ
鮨蒲鉾はオードブルのおつまみに合います。


質問コーナー


代表的な質疑応答で、飲み方と輸出について。

日本酒を炭酸で割ることをお勧めいただいたが、酒蔵の本音としてはこの飲み方をどう思ってますか?

⇒大賛成なのでお勧めしてます。お酒の飲み方は、自由で良いと思うし、実際にわたしもロックで飲むことやシャーベット状にしたりすることもあります。最近ではカクテルがバカ売れしていることもあり、様々な飲み方が増えたこともあり、本音として新たな飲み方をどんどん研究たい。
輸出をどのように考えていますか?

⇒輸出は、国内消費に比べてまだまだ少なく、力を入れている酒蔵さんも多い。市場は大きく、将来性があるので、販売増加に希望を持っている。
また、海外で高く評価される土壌を作り、国内で再認識される流れを作りたいと思い、チャレンジしています。


他の質問例

●美味しいお酒となるためのお米の最適な水の含み方を杜氏はどのように判断していますか?
●超軟水とのことだが、軟水と硬水と水の違いはどう影響するの?
●使用している五百万石のお米の特徴を教えて下さい。
●ほとんど手作業のようですが、機械はどの程度使ってますか?
●超軟水をしようしていると言われるお酒は、他県にもありますがどう違いますか?
●食前酒と食中酒とどちらを目指していますか?
●酒蔵を訪問したいけど行って良い?

などに全て適確にお応えいただき、みなさまは感動・感心しきり。


最後に思うこと

日本酒の醸造工程を知ると、半端なく情熱と時間と手間暇かけた生命だと改めて理解しました。

その魅力あふれる日本酒で、無濾過のお酒プリズムの味が変化するという女将さんのご説明の際に、「やはりお酒は生き物だと思います。それは、濾過することで酵母も濾しとられてしまいわかりにくいですが、無濾過だと微生物が活動することによる日本酒に吹き込まれた生命の躍動感を五感で感じることが出来るのです」という言葉は印象的でした。

また、代表的な質問で2点あげた飲み方と輸出では、
少し前までは伝統酒である日本酒の考え方として、炭酸で割る、ミントを入れる、シロップを入れる、等をする飲み方や、海外へ輸出する事は考えられなかったのではないでしょうか。

しかし、現在は、
①飲み方を工夫することにより日本酒の魅力が一層増すこと、
②伝統は重んじつつも国内需要喚起のため若者にも魅力を伝えたい
③海外市場へ輸出を増加して評価されることにより将来的には国内再評価に繋げて需要を喚起したい
と様々な想いがありチャレンジされています。

今回、女将さんのお話をお聞きすると、羽根屋さんの酒蔵での酒造りだけでなく、富山県の酒蔵の周辺、立山連峰から流れる常願寺川の水と田園の情景が、また蒲鉾では富山湾の情景が目に浮かび、お酒のみならず地元の料理を食べに参加者全員が訪れたくなったと思います。

富美菊酒蔵(羽根屋)さんに行きたい~

やはり、酒蔵はその地域の食文化の中心であるような存在。

酒蔵を護ること、それは日本の美しい地域の環境と伝統を護ることに直結します。

一日でも早くコロナが終息して、酒蔵とその周辺の観光をしたいものです。


最後までお読みいただきありがとうございました。

杜氏羽根敬喜

外観 富美菊酒蔵

画像7

富美菊酒造 ムロ作業


(ご参考)




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