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【栄養指導シュミレーション】摂食・嚥下コード3

【デモ症例概要】

患者は75歳男性。独居生活を送っていたが、脳梗塞発症により急性期病院へ救急搬送され、発症後14日目に回復期リハビリテーション病院へ転院。入院中は嚥下障害が確認され、嚥下調整食3(やわらか食)で経口摂取を行っていた。その後、各種リハビリテーションと栄養管理を受けた後に自宅退院予定となった症例。


【主訴】

「食べづらさ」:入院当初は嚥下時のむせ込みおよび誤嚥リスクがあり、呂律不明瞭、構音障害を伴う。

【現病歴】

当患者は、発症3時間以内に右片麻痺、失語(軽度ブローカ失語)を呈し、左中大脳動脈(MCA)領域梗塞が疑われ近医救急外来を受診。急性期CT/MRIにて左MCA領域に急性期梗塞巣が確認され、rt-PA静注療法(アルテプラーゼ)適応と判断。投与後、症状改善は中等度であったが、残存性右上肢軽度麻痺、顔面下部軽度麻痺、発話や嚥下に関わる中等度困難を残した。入院3日目より専門的嚥下評価(嚥下内視鏡検査:VE)を実施、薄い流動食では誤嚥リスクあり、増粘剤使用とペースト食で安全性確認。その後徐々にテクスチャーアップし、入院10日目に嚥下調整食3相当で安定した経口摂取を確立。

【既往歴】

  • 高血圧症(20年前診断、ACE阻害薬内服中)

  • 2型糖尿病(10年前診断、DPP-4阻害薬およびメトホルミン内服中、近年ややコントロール不良)

  • 高脂血症(5年前診断、スタチン内服中)

  • 軽度認知機能低下(MCIを示唆、数年前より物忘れ訴え)

  • 歯科的問題:義歯使用(下顎部分義歯)、咀嚼機能低下を指摘されていた

【家族歴】

父:脳出血(70歳頃)、母:2型糖尿病(60歳頃)、弟:冠動脈疾患既往
特記すべき悪性腫瘍家族歴なし。

【生活歴・社会背景】

  • 独居(妻は10年前に他界、子供は遠方在住、月1回程度連絡)

  • 日常生活は発症前まで自立:買い物・調理を自身で行っていたが、高齢ゆえ簡素な食事(インスタント食品、加工食品中心)が多かったと推察。

  • 飲酒習慣:週2回程度350mlビールを1本

  • 喫煙歴:40本/日×30年、10年前に禁煙

  • 経済的問題:年金生活、外注サービス利用には若干の抵抗あり

【今回入院までの経過】

発症時、自宅で転倒・右片麻痺発生。近隣住民の通報で救急搬送。急性期病院でrt-PA療法実施後、NIHSSスコアは軽度改善。14日目に回復期リハビリテーション病院へ転院。言語聴覚士(ST)評価で軽度構音障害と嚥下機能低下(口腔期~咽頭期遅延、誤嚥リスク中等度)を認めた。

【身体所見(入院14日目、回復期入院時)】

  • 身長:164 cm、体重:56.8 kg(BMI:21.1)

  • 血圧:138/82 mmHg、脈拍:72 bpm(整)、体温:36.5℃

  • 意識清明、軽度注意障害、語音明瞭度低下

  • 運動機能:右上肢軽度麻痺、FIM(Functional Independence Measure)運動項目は中等度自立

  • 口腔内:歯牙欠損多数、部分義歯装着、唾液分泌はやや少なめ

【血液検査データ(回復期入院時)】

  • 一般血液学:
    Hb:13.2 g/dL、Ht:39.8%、RBC:4.2×10^6 /μL、WBC:6,200 /μL、Plt:21万/μL

  • 生化学(空腹時):
    TP:7.0 g/dL、Alb:3.7 g/dL、BUN:17 mg/dL、Cr:0.9 mg/dL、eGFR:>60 mL/min/1.73m²
    AST:25 U/L、ALT:28 U/L、γ-GTP:38 U/L
    LDL-C:130 mg/dL、HDL-C:49 mg/dL、TG:160 mg/dL
    FPG:132 mg/dL、HbA1c:7.2%
    CRP:0.2 mg/dL

  • 電解質:Na:141 mEq/L、K:4.2 mEq/L、Cl:103 mEq/L

  • ビタミン・微量元素(必要性あれば追加測定想定):
    Vit B1:正常範囲下限、Vit D:やや低値、Zn:軽度低下

  • 血清浸透圧:正常範囲内

【画像検査・嚥下評価】

  • 頭部MRI(急性期):拡散強調画像で左MCA境界領域に高信号域、MRAで左MCA中枝狭窄

  • 頭部CT(慢性期評価):古いラクナ梗塞巣も少数存在

  • 嚥下造影検査(VF)と嚥下内視鏡検査(VE):とろみなし液体で誤嚥リスク高、Mildly to Moderately Thick(学会分類2021とろみ2~3相当)で安全、嚥下調整食3(舌でつぶせる軟菜食)では残留少なく安全嚥下可能。

【診断・治療経過】

  • 診断:左MCA領域脳梗塞後状態、嚥下障害(中等度)、高血圧症、2型糖尿病、高脂血症、MCI

  • 治療方針:

    1. 循環器的には抗血小板薬(アスピリン100 mg/日)継続、血圧管理(ACE阻害薬継続)、脂質管理(スタチン継続)

    2. 糖尿病管理:食事療法・内服(メトホルミン500 mg/日、シタグリプチン50 mg/日)

    3. 嚥下リハビリ:STによる口腔体操、喉頭挙上訓練、反復唾液嚥下訓練、必要に応じて電気刺激嚥下療法

    4. 栄養管理:嚥下調整食3(形態確認済)、エネルギー密度確保(主菜へのたんぱく質補強)、ビタミンD・亜鉛補給の検討

    5. 退院支援:在宅配食サービス検討、訪問看護指導、口腔ケア指導(在宅歯科衛生士訪問の紹介)

    6. リスク管理:再発予防のための脳卒中二次予防ガイドライン準拠治療

【内服薬リスト】

  • 抗血小板薬:アスピリン100 mg/日

  • 降圧薬:リシノプリル5 mg/日

  • 脂質異常症治療薬:アトルバスタチン10 mg/日

  • 糖尿病薬:メトホルミン500 mg/日、シタグリプチン50 mg/日

  • 必要時:プロトンポンプ阻害薬(胃酸分泌抑制)、便秘時の酸化マグネシウム

  • サプリメント:亜鉛補給剤(Zn 50 mg/日相当)投与検討中

【転帰と予後】
退院時にはFIM改善(総合点数:入院時80点→退院時100点)、嚥下調整食3で1食あたり約450~500 kcal摂取可能、Albも3.7→3.9 g/dLへ軽度改善傾向。軽度言語障害残存も意思疎通は対面で問題なく、在宅での生活維持が可能と判断。
自宅退院後は、訪問看護師、管理栄養士、歯科衛生士との連携下に、2週間毎程度の継続的評価を予定。

栄養指導シミュレーション(有料部分)

ここから先は、有料パートで栄養指導シミュレーションを詳細に紹介します。
退院前から外来フォローまでの一連の栄養指導プロセスを再現し、以下のポイントを示します。

  • 嚥下障害患者への安全な食形態説明と、在宅への移行サポート

  • 独居高齢者への市販介護食品・宅配サービス活用提案

  • 嗜好品(みたらしだんご)への対応:QOL考慮と安全性確保

  • 糖尿病管理・栄養バランス確保のための具体的工夫

  • 継続的フォローアップで行動変容を促すアプローチ

【ここから有料パート】
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【退院時栄養指導】(入院中最終日、退院直前)

状況:病室内、医師より退院許可が下り、患者はやや緊張しつつも早く自宅へ戻りたい気持ちが強い。嚥下調整食3での経口摂取が安定しているが、患者は調理法や食材選び、栄養補強など具体的な点が明確に把握できていない状態。「ふんふん」と相槌は打つが、専門用語や手順が多く、理解が浅い可能性。

指導者:管理栄養士(栄)
対象者:患者本人(患)

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