09_キウイワークショップの振り返り:「じょうず」になることがめあてではない
食農教育をそだてるワークショップとは?
ちょうど1年前、2021年の秋から冬にかけて「神山の食農教育をそだてる勉強会」を全4回オンラインで開催しました。「食農教育」の定義を考える中で、近しい専門領域の方々からみた「食育」や「食農教育」の話をもっと聞いてみたいと思い企画した勉強会でした。
今後は、可能な限り子どもたちや親子で参加できるワークショップの形式で、手を動かしながら「食農教育」を育てていく場もつくっていきたいなぁと考えています。今回は、その第一歩!
イベントで使う絵の具もキウイで作りました!その試行錯誤はこちらに書きましたので、ぜひ。
ワークショップの参加者は子ども13名、大人4名+見学者 多数でした!
1. 「好き」とか「やってみたい」がかなう場所
NPOの活動場所の中心は、町内にある学校です(小学校2校、中学校1校、農業高校1校)。小学校5年生は毎年もち米を栽培していますが、印象に残っているのは、休みの日に田んぼに来て除草を手伝ってくれた子どものこと。休日の田んぼで黙々と草を取っていたのです。「好き」とか「やってみたい」と思う気持ち、大切に育んでいきたいなぁと思います。
今回のワークショップで子どもたちに意気込みを聞いたところ、「キウイが大好きだから参加した!」「キウイをたくさん収穫したい」「楽しみ」という声が出てきました。好きなことじゃなくても、やっているうちに好きになることもあるし、やってみてやっぱり合わないな、と思うこともあります。自分でまずやってみてから決める、は大事。参加してくれたみなさん、一歩を踏み出してくれてありがとう!
2. 年齢をこえて、向かっていけるテーマや方法があること
原田さんが提案してくださったパッケージづくりの方法は、そこにある素材(今回ならキウイの枝や葉や茎)で線を引いたり円を描いたり、スタンプのように押したりしながらつくるデザイン。小さな子どもでも描けるし、大人も楽しめる。事前の打ち合わせでそのやり方を聞いて、当日がとても楽しみになったのを覚えています。
参加者は、未就学児から高校1年生まで。日常では一緒に学んだり、出会ったりする機会のない人たちです。隣村から駆けつけてくれたキウイ栽培の師匠は、高校生の3倍くらい生きている人生の大先輩!
「キウイのパッケージをつくる」というテーマとそれに向かうデザインの視点をもちながら、つくることの楽しさやおもしろさ、喜びをそれぞれのやり方で味わっている時間がとても良かったなぁと思うのです。
3. 「じょうず」 になることがめあてではない
ものづくりの時間は、のびのびと手を動かせる時間であってほしい。今回のワークショップで何が起こっていたんだろう…と考えるのに、安野光雅さんの「かんがえる子ども」の一節が響きました。
白崎裕子さんのおやつレシピ本「へたおやつ」の〝おわりに〟にはこんな言葉が載っています。図工や美術のことではないけれど。
「へた」はえらい。「じょうず」にかいたりつくったりすることがめあてではない。見守ったり支えたり、機会をつくったり、大人にしかできないことは、大人が精一杯やれると良いなと思います。そして、大人も無我夢中で子どもたちと一緒になってやれることが、とても大切なことなんだと思います。今回、真剣に楽しんでいる大人をあちらこちらで見かけてとても嬉しかったです!
4. 社会とつながるほんものの場
ワークショップから2週間後、完成させたパッケージにキウイフルーツを詰めて、町内のお店前の広場で販売会をしました。
初めて「販売員」になった子どもは、自分で描いたパッケージをお客さんに説明したり、見えやすい場所に並べたり、看板をつくったり。販売時刻が終わる頃には「まだ続けたい」とも言っていました。
時間にするとほんの1時間。お客さんに接しながら変わっていく子どもの様子を目の当たりにし、びっくりもしました。
購入してくださった方をはじめ、あたたかく見守ってくださったみなさん、ありがとうございました。
自身の興味関心を手がかりに、その世界をぐんぐん広げていく子どもたちの姿を見たいがために、今後もワークショップを開いていくつもりです。今回は食農 × デザインをテーマに場を開きましたが、食農 × ◯◯◯ 、様々な組み合わせで学びの可能性がうんと広がっていきそうな予感。とても楽しみです。
あとがき
数日後、目に飛び込んできたのは「木をかこう」という1冊の本。小学校2年生国語科の教科書(光村図書)に「一本の木」というタイトルで掲載されていたことがあります(今も、かな?)。
読んでいる最中から木を描いてみたくなる、説明文の教材。当時担任していた2年生の子どもたちと、どんどん伸びていく枝に沿って何枚も画用紙をつなぎ合わせながら木を描いたことを思い出しました。木と仲良くなれそうな距離感を心地よく思った感覚は、今回のワークショップで得た余韻と似ています。頭だけでなく、身体をたくさん使っているからかもしれません。
楽しく学び多き場を一緒につくってくれた原田祐馬さん、松村静香さんに心からの感謝を。
そしてサポートしてくださったみなさん、どうもありがとうございました。
Special Thanks !!
UMA / design farm
Food Hub Project
TUNAGU FARM
WS photo
ueta_akihiro
※ この活動は、子どもゆめ基金の助成を受けて実施しました。