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01_NPO、どんなメンバーと?

フードハブ・プロジェクト(以下フードハブ)で積み重ねてきた食農教育やNPO設立について自分で言葉にしていきたい…と思いながらnoteを立ち上げたものの、進まないまま4月半ば。杉本恭子さん(以下恭子さん)に「書きたいのだけれど書けない」と相談に乗ってもらった結果、「お題をもらって書いてみる」というアイディアが。おー、それならおもしろそうだし書けそう!とリスタートすることにしました。

杉本恭子さん(フリーライター)
わたしとの出会いは「かみやまの娘たち」の取材。恭子さんのインタビューを通して「子ども時代の原体験は今につながる」ことに気づかされ、行き当たりばったりな自分を少し信じられるようになった気がしています。「伝わる文章が書けるようになりたい」わたしの専属ライティングティーチャー(←勝手に命名。超贅沢)。
著書に『京大的文化事典 自由とカオスの生態系』(フィルムアート社)

恭子さんからの最初のお題:メンバー紹介

「食農教育」というまだ馴染みの少ない領域、しかも立ち上げという節目に、理事・監事を引き受けてくださったメンバーをわたし目線で紹介します。まだ出会って日が浅い人も、長い付き合いの人も、持ち味を知り、話を重ね、学びながら一緒に歩んでいきたいです。

安東迪子さん(理事/事務局長)
Michiko Ando 

 出会いは昨年のNPO求人募集へのエントリーがきっかけ。初めてお会いしたのは2021年12月末の神山。オンラインでお話した時からとてもノリが良く朗らかな印象で、「早く会いたいな〜」と思っていました。初めて神山に来られた際、kidsガーデンでの野菜の収穫、夕食時の会話、いろんなことに「楽しむ」という要素を加えながら進んでゆく方なんだな、と感じました。あたらしいNPOの立ち上げに不安がないと言えば嘘になりますが、安東さんはそれらの些細な不安も楽しみに変換しながら進んでゆけるひと(きっと)。前職のTABLE FOR TWOでも設立時から10年以上に渡って運営の経験があり、とても頼もしいなと思っています。彼女と話しながら数年後の絵が描ける…!と思えたので、一緒にNPOをつくっていきたいと伝えたのでした。
 ここ数ヶ月、1on1ミーティングを重ねながら少しずつお互いの思いや願いを知るなかで(まだまだ知らないことだらけだけど!)、安東さんが参画してくれて本当によかった!!と感じることばかりです。目の前のことを一つひとつクリアにしていく細やかさ、数字を根拠に先の見通しを立てる術はわたしにはない要素(見習いたいけど難しい)。しばらくは東京と神山で遠距離オンラインでミーティングを重ねていきますが、9月以降は神山での滞在時間も多くなりそうです。安東さんの前向きなエネルギーが生きる組織を一緒につくっていけることがとても楽しみです。

白桃茂さん(理事/白桃農園)
Shige Shiramomo

 長年神山の子どもたちの給食米を担っている米農家&植木屋さん。25年以上前から小学生向けの米づくり体験(田植え・稲刈り)を続けてこられ、子どもたちには、薬を使わない米作りに切り替え試行錯誤していることも度々話してくれます。私たちが今、学校と連携したプログラムを実施できているのは茂さんのこれまでの活動あってこそです。
 2015年に神山町のスタディツアーでカリフォルニアのエディブル・スクールヤード(※1)を訪れ刺激を受けた茂さんは、神領小学校の前の畑にも少しずつ果樹を植え、栗、イチジク、ザクロ、りんご、みかん、パパイヤ、枇杷…など多様な果実が実る「食べられる庭(kidsガーデン)」をつくってこられました(2022年春、工事の関係で一部は移植)。「果樹は実がなるまでに時間がかかる。さぁやるぞ!と思った時にすぐに子どもたちとの活動ができるようにレールだけは敷いとくから」と言われたのは2018年ごろ。そして「楽しいこと、遊びは自分でつくっていく。仕事だけだったらおもっしょーないでぇなぁ(おもしろくない)」ともよく話しています。子どもたちのことを考える時間は茂さんにとって仕事ではなく楽しみなのだそう。先を見る目、子どもたちへの思い、かないません。茂さんからのバトンをもらうなんて簡単に言える言葉ではありませんが…思いを受け取りながらわたしができることをちゃんと積み重ねていきたいと思います。

※1)エディブル・スクールヤード
カリフォルニア州バークレー市にある公立中学校の校庭に作られた「食べられる学校菜園」。地元オーガニックレストラン『シェ・パニース』のオーナーシェフのアリス・ウォータース氏によってつくられ、〈必修教科+栄養教育+人間形成〉の3つを目的に各々の学習を融合させたガーデンとキッチンの授業を行っている。
https://www.edibleschoolyard-japan.org/

須賀智子さん(理事/CropsーFood × ESD Design代表/ 慶應SDM研究員)
Tomoko Suga

 フードハブ共同代表 真鍋のweb連載を担当されていた縁から、昨秋初めてお会いしました(前職:料理通信社 SDGs事業部部長/Webメディア事業統括)。 東京にある須賀さんのオフィスでお会いしてランチをご一緒した5時間…気づけばノンストップで話し続けていました。初めて出会ったその日の帰り道におすすめされた本を大人買い。関心がある書籍が似ているというのは、それだけでうれしくなって…強力な味方を得たような、そんな気持ちで帰徳しました。
 須賀さんは、昨年9月に設立した Crops-Food × ESD Design の代表を務める他、慶應義塾大学SDMの研究員でもあります。ESD(※2)を「食」の文脈で体系化し、学校現場で実装されるカリキュラムを研究、開発されています。教育と食の掛け算で見える景色を共有させてもらううちに、神山の食農教育のカリキュラムのあり方や、その価値を伝える表現の幅が広がる感じがして、好奇心がむくむくと立ち上がってきたことを思い出します。
 畑や田んぼでの「体験」を大切に積み重ねてきた神山の活動をより広く伝えていくために、私たちの意図することや方向性を言語化し、共有していくことの必要性を感じている今、須賀さんとのディスカッションはとても学び多き時間となっています。今後、子どもに限らず大人の食育・農体験についても、須賀さんと一緒に新しい事業の可能性を探ってゆければと思っています。

※2)ESD
ESDは、Education for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳されている。2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」で日本が提唱した考え方。2016年12月に発表された中央教育審議会の答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」には、「持続可能な開発のための教育(ESD)は次期学習指導要領改訂の全体において基盤となる理念である」とされている。
https://www.mext.go.jp/unesco/004/1339970.htm

林隆宏さん(理事/モノサス代表取締役)
Takahiro Hayashi

 フードハブ・プロジェクトの前代表で、株式会社モノサスの代表。「会社ってなんのためにあるのだろう?」という問いから「個々人のために会社が存在していく」仕組みの実装をテーマに会社を経営されています。フードハブでは一緒に仕事をする機会はほとんどないままに6年が経ちましたが、会社における食育部門の位置付けについては林さんの言葉に救われる瞬間が何度もあり、NPO立ち上げにあたってはぜひ理事に参画してもらいたいとお願いしました。
 林さんはフードハブの立ち上げ当初から食育部門=プロモーションと表現していました。「食農教育は 20〜30年かけて〝食〟がどういうものかという提案を子どもたちにし続けること。子どもたちが大人になった時、つまりお金を使う側になった時、子ども時代から経験してきたことを好んだり、地域の食を支えるお金の使い方をしてもらうには、食農教育を続けていくことしかない。むしろ最も必要な部門だと思っている。やらないという選択肢はない」と。
 6年間、株式会社という組織のなかで「食農教育」という非営利の活動を置き続けてくれた経営判断には感謝しかありません。枠組みは「特定非営利活動法人」に変わりますが、食農教育をこれから30年間継続するための経営や組織のあり方など、林さんと一緒に考えていけることをとても心強く思っています。

松本秀明さん(理事/神山町役場産業観光課)
Hideaki Matsumoto

 神山で食農教育を続けていくと決めたとき、教育はもちろん、まちの農業のことも考えていきたいという思いがあり、松本さんには設立準備段階からメンバーに参画してもらいました。NPO法人里山みらいの理事もされており、週末は農業を営む兼業農家でもあり、公私ともに農業に携わる松本さん。話を聞くたび、熱い思いが伝わってきます。その一つが〝アイデンティティ〟の話です。
 「神山町のような中山間地で景観や生活環境を守るには農業が大きな役割を担っていて、7〜8割を占める兼業農家が農業をどう捉えているのかが反映される。町の視察でオーストリアに行ったとき、荒れた土地がなかった。不思議に思って現地の人に聞くと〝アイデンティティ〟という言葉が返ってきた。つまり農業は日常で当然のことだと。神山では「(農業は)子どもには継がせたくない」「耕作放棄やむなし」という声が多く聞かれるけれど、小さい頃から農業や食に触れたり考えたりすることで、子どもから農業への捉えかたが変わってくることを願っている。子どもが変わることで、大人が変わってくるといい。良い循環が生まれていけば、農業を家族ぐるみで続けられる。それができたら理想」
 前述の林さんの話とも重なりますが、20年後の神山の風景をつくるのは、今目の前にいる子どもたち。農業の担い手不足は神山の問題でもあり、全国の中山間地域で共通する課題でもあります。経験していないことは「ない」も同然。そう考えると、子ども時代に食べ物をつくること、それらを通してまちの人や風景に関わる経験が大切であることは明白です。農業に携わる松本さんの当事者としての声を反映しながら一緒に歩めること、心強さ満点です。

森山円香さん(理事/神山つなぐ公社 理事)
Madoka Moriyama

 この6年間、神山町にある農業高校のプロジェクトを牽引してきた森山さん。森山さんが「神山創造学」というオリジナルの授業を先生と一緒につくっているその横で多くの場面を一緒に過ごしてきましたが、いつもハッとさせられる気づきがありました。先生でもなく、友だちでもなく、ちょっと長く生きてきたセンパイ感をほどよく出しつつ、知的好奇心を刺激される絶妙な塩梅の授業。わたしは、森山さんが前に立つ授業を密かに楽しみにしていたファンの一人でもあります(笑)。
 森山さんを見ながら「こんなおもしろい教育への関わり方があるのか!」と思えたことは、わたしが神山で教育領域に関わるモチベーションにもなっていました。食農教育はつなプロ(神山町の地方創生戦略)の「循環の仕組みづくり」と、ひとづくり領域における「保小中高連携の教育環境」の試みがあって生まれたプロジェクトですが、数々の調整や役場との橋渡しなど森山さんやつなぐ公社のメンバーがいなかったらここまでできなかっただろうな…と思います。
 学生時代にNPOの支部を立ち上げ、神山では高校プロジェクトを進めてきた経験を持って、あたらしい食農教育のNPOでも一緒に走ってゆけること、とても楽しみでもあり、安心感と希望が混在しています。
著書:『まちの風景をつくる学校――神山の小さな高校が試したこと』 (晶文社)2022年5月27日発売

杼谷学さん(監事/神山町役場総務課)
Manabu Tochitani

 現在は神山町役場の総務課所属。神山つなぐ公社の前代表理事。フードハブの立ち上げからNPOの独立までもずっと見守ってくれた方です。神山町のIT網、公共交通の整備など常に新しい物事を前に立って動かしている超多忙な仕事の合間を縫って、大久保地区の農業、林業、さらには川遊びまでも全力で関わり、楽しまれているスーパーマン。杼谷さんから「農業はおもっしょいでぇなぁ〜」という言葉を聞き、とても元気付けられたことを覚えています。課題が多い農業領域ですが、前向きに取り組んでいる方も多くいらっしゃる。子どもたちにはいろんな大人の背中を見てもらいたいなぁと思うし、そんなセンパイ方の姿をみてわたしもまた頑張ろうと思わされる今なのです。
 忘れられないのは、数年前に杼谷家でごちそうになった肉厚の椎茸と猪肉とお米。身近な人たちの手によってつくられたものが並ぶ豊かな食卓を目の当たりにした瞬間でもあり、感激しました。当たり前にあるまちの豊かさを、子どもたちもたっぷりと感じ味わいながら育ってゆくことを願いつつ、神山のセンパイ杼谷さんにサポートいただけることをありがたく思っています。
神山つなぐ公社・新旧代表理事が考える、まちのこと「元気な集落が増えていくと、すごく豊かなまちになる」



以上、理事・監事の紹介でした!
メンバーの共通点は「仕事もそれ以外も日々おもしろがっている」ということになるのかも。愛を込めて書いていたら思いの外長くなってしまったので…スタッフ編(3名)については改めて書く機会を設けます!


NPOの新しいメンバーついては、作夏、西村佳哲さん(神山つなぐ公社前理事)が書いてくださった求人募集記事が想像を超えて多くの方に届き、関心を寄せてくださる方々と出会う機会にもなりました。採用人数に限りがありお断りせざるを得なかったのですが、エントリーしてくださった方々と話を交わせたことはとても楽しい時間でしたし、励みにもなりました。またなにかの形でご一緒できることを楽しみにしています。

設立から1ヶ月半。一人でできることの限界を感じていたからこそ、こうして仲間がいることの心強さを感じています。素直に、うれしいです。メンバーそれぞれの〝持ち味〟を反映させながら、「まちの食農教育」を育てていきます。

つづく。

#最近のNPO
4月26日に設立イベントを開催しました!小学校の時に農体験をして中学校時代に「風景の見え方が変わった」と話していたガールズ(現在高校2年生)と、小学校時の担任・篠田先生が駆けつけてくれたこと、ほんとうにうれしかった!

photo : Akihiro Ueta

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