片側の肩を痛めると歩き方はおかしくなるのか?
こんばんは。
歩行についてあまり触れていませんが、本日は歩行の話題と肩を絡めたものを一つご紹介します。
肩が悪い人は歩き方までおかしくなるのかという問題に関して調査したものになります。
よかったら、読んでみてください。
抄読論文
【肩の障害と歩行】
歩行は腕をリズミカルに動かすことが特徴の一つとなっています。
腕の動きは2足歩行になるにあたって、人間の歩行の特徴となり、肩と上肢の筋肉の交互活動によって引き起こされます。
腕の振りは神経制御の中で、円滑に行えるように調整されています。
腕の振りがバランスの回復を助け、エネルギー消費を最小限に抑え、安定性を最適化することに寄与しています。
しかし、腕の振りの重要性に関して、否定的な報告もあります。
腕の振りには左右差が見られ、対象でないことが通常であるとの報告もあります。
このような報告がある中で、本研究では、上肢の状態が歩行パターンにどのように影響するかに着目し、調査しています。
【方法】
対象は69人を初期対象とした中で、そこから包含基準を満たす20人の症例を抽出した。
歩行評価はその20人に加えて、肩に障害を有さない健常者10人にも行った。
歩行評価には、Zebris歩行分析システムを使用し、トレッドミル上での歩行を評価した。これらは、ビデオ同期が可能で、圧力センサーを有するとともに、分析ソフトを活用して、評価することができた。
また、評価項目としては、ステップ長と各歩行周期での持続時間を評価した。肩関節機能評価として、DASHスコア、肩の痛み、肩屈曲と外転の可動域が測定された。
【結果】
肩の障害を有する群では、荷重応答期及び立脚中期の持続時間の割合が、健常群と比較し低下していた。
また、立脚後期の持続時間の割合は、健常群と比較して、増大していた。
DASHスコアとの相関においては、立脚中期の持続時間においては正の相関が、立脚後期の持続時間においては負の相関が見られた。
肩屈曲可動域と立脚中期の持続時間との間にも相関が見られた。
【考察】
歩行パターンが崩れた要因に関して、肩の障害により上肢の振りが減少したことが要因であると考えています。
上肢のふりはバランスの回復、エネルギー消費の最小化など、歩行のバランスを取る役割も果たします。
そのため、上肢の振りが減少すると、歩行のバランスが崩れる要因となると思います。
DASHスコアにも関連しました。
肩の機能が上肢の振りに関与し、歩行にも影響を及ぼすことが考えられます。
【どのように活用するか】
この研究からは、肩の動きが制限されることで、歩容に影響を及ぼすことを示しています。
本文中で考察されていないが、肩の障害側の荷重応答期と立脚中期にて時間が短くなっていることから、肩の伸展が十分できていないことが要因だと想定します。
つまり、前に振ることはできても、そこから伸展に移行するときに、制限が生じている可能性があるかと思います。
疼痛が生じること、機能制限が生じることにより、フォワードヘッドや屈曲方向への遷移が生じていることが、これを制限するものと思います。
これはあくまでも論文を見た上での予想にはなりますが、そのように理解します。
この論文からだけでは、わかることは少ないかもしれませんが、それを運動学的に解釈して、どのように実際の活用に結びつけていくかということが重要であると思います。
ただ、筋連結や運動連鎖等を考えると、肩の障害から歩容の変化が生じることもあり得るし、歩容の変化、つまり下肢の症状等を元にして、肩に波及している可能性もあります。
つまり、肩の局所を見ることはとても重要ですが、局所を見た上で、体幹、下肢と全身に視点を波及させていって、状態を評価していくことが必要なのではないでしょうか。
そんなことに気付かされる論文になっていました。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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