これからの編集者・ライターと「動画」はどう関わっていく? #ノオト15th
この記事をざっくり説明すると
メディアの運営者、および編集者が「これからのメディア・コンテンツビジネス」について話すと、避けては通れないのが『動画』のお話。このテーマについて、ノオト15周年記念イベントにて行われたトークセッションがアツすぎた。
という内容です。
「ウェブメディアはどう変化する? これからのコンテンツビジネスを考える」
こんにちは、しょーごです。
2019年7月、編集プロダクションのノオトさんの15周年記念イベント「ノオト 15th 大感謝祭! 」というイベントに参加しました。
会場の様子は15時間ぶっ通しでYoutubeで配信されるという、ぶっとんだことをやってのけました。ノオトさんお疲れさまでした。
普段はイベントレポを書こうか迷った挙句、結局自分の知識として留めがちな僕ですが、「この内容は発信しないともったいなさすぎる」と思い立ち、まとめてみました。
……それにしても、書きたくても関係各所の問題で書けない内容が多いなぁ。まぁそのあたりは、リアルタイムで配信を見ていた人や、会場にいた人の特権ということで。その辺の調整で文章のつながりが変だったらスミマセン。
「動画」「SEO×バズ」「編集」と種々の面々が集結
同イベントではノオトの宮脇さんをモデレーターに据え、3回のトークセッションが開催されました。今回紹介するのは、その内最後に行われたセッションです。題して「ウェブメディアはどう変化する? これからのコンテンツビジネスを考える」。
登壇者はこの3人。言わずと知れたメディア業界で注目される面々です。詳しくは画像詳細をご確認ください(画像はPeatixより引用)
明石さんをして「ありきたりなテーマ」と言わしめた議題の元、型破りな面々がお話した内容は一聴の価値あり――、ということで、是非ご一読ください。(以下、敬称略)
5G時代のコンテンツビジネスと「動画」の立ち位置
――先日、ちょっと衝撃のニュースがありましたが(宮脇)
朽木:正直その件については、私が編集サイドにいることもあり、あまり詳しくはわかっていない部分が多いのですが……。今回の大きなテーマである「動画どうしていくか問題」にもつながる話かもしれません。
――来る「5G時代」、動画コンテンツは急増すると言われています。こうした流れを見据えて、という動きなのかもしれませんね。せっかくなので、「動画」というテーマから話を始めましょうか
ライターやテキストメインの編集が集まりイベントではありましたが、ワンメディアの明石さんがいるとあり、「5G」「動画/音声」といったテーマについての話は避けては通れません
明石:昨年「動画2.0」という本を上梓しましたが、これからの時代、動画の勢いはますます伸びてくると思っています。今もすでに伸びてらいますが、これからは今までの比ではないくらいに成長していくことでしょう。
これまではCMに代表されるような映像素材って、あまり多くなかったんです。だからインターネット上で映像が流れてくると、すごく目立つんですよね。
それに最近は、ユーザーが当たり前に動画を上げられるようになりました。動画とテキストの物量は、すでに体感で半々くらいになっているように思います。
――日西さんもいるので、動画の検索性についての話も聞きたいです。今、SNSのフィードで動画を見るというのは、当たり前の体験になっています。しかし、動画コンテンツが増えすぎると「良いコンテンツなのに見られない」という問題が出てくるようにも思います。これは今後どうなっていくのでしょう?
明石:動画の検索性は、極めて低いですよね。(検索エンジンとしての)Googleに代表されるような、文字検索のアルゴリズムに、動画は乗ってきませんから。
その中でこれだけ動画が伸びているのは、動画が検索ではなく、スクロール中心のSNSのフィードの世界で意味を発揮するからですよね。フィードを見ていくと、動画が自動再生される。そこで目を引くわけです。
ではテキストコンテンツはそこにどう対抗していくのかというと、現状、そこに見出しとサムネで対抗しているわけですが、正直そこの“ハック”はすでにやりつくされていることでしょう。より「ビジュアル表現を持ったもの」にテキストコンテンツも進化していかなければいけないのではないかと思います。
現に、ここ数年で新しくできたプラットフォームって、「インスタグラム」と「TikTok」などの“ビジュアル中心のプラットフォーム”がほとんど。こうした流れに従い、ユーザーが検索することは段々減ってきて、フィードの世界に生きるようになってきています。
プラットフォームがそう変わっている以上、コンテンツもそこに合わせて変わっていく必要があるのだと思います。
――日西さんはどう思いますか?
日西:検索性で言うと、(作り手が)動画でやれることは、普通の記事コンテンツでやれることとあまり変わらないと思います。結局、Googleのクローラーは動画を見れず、“読める情報”から評価がなされますから。
動画の検索性を上げる方法は、そこに読める情報(文字情報・テキスト)を与えることでしょう。ただ、そうすれば検索で上位に上がるか、というとそういう訳でもありません。そもそもの受け手のスタンスが違うからです。
どちらかというと動画は、ユーザーが「待ってたら来る」もしくは「ぼんやりしてたら来る」ような、受動的なもの。一方で検索をする際には、ユーザーは情報を能動的に取りに行っています。
今後はそういう、情報を能動的に取りに行く際に見られる動画コンテンツは増えてくると思います。例えば、腹筋を割るための動画というのはSEO文脈でも強いでしょう。
分野というか、動画のジャンルによって、SEOに力を入れるものとそうではないものが出てくるのだと思います。
コンテンツは「インフォメーション、コミュニケーション、IP」の3つに分類される
――以前、クラシコムの青木さん(@kohei_a)に興味深い話を聞きました。それは、「コンテンツには3種類ある」というもの。情報、コミュニケーション、IP(知的財産)※がそれにあたります。その辺り、ワンメディアではどう考えていますか?
※「情報(Information)」→6秒や12秒ほどの短い動画で、情報を伝えることを目的とするもの。「コミュニケーション(Communication)」→Youtubeのコメント欄や、ツイッターのリプライなどのイメージ。 「知的財産(IP:intellectual property)」→時間が経っても価値を持つコンテンツ。映画やクラシコムの「青葉家のテーブル」など
明石:思うに、インフォメーション系の動画を作り続けるのは難しいと思います。インフォメーションのコンテンツって、すぐに腐りがちですから。例えば「報道」の世界で考えると、ニュースの価値は、1日経つと急激に下がります。
では、Youtuberはどうか。彼らは「コミュニケーション」と「IP」の中間にいますよね。ユーザーが見たいものだから「IP」としての価値があり、かつ毎日動画をあげて、読者にコメントを返すというのは「コミュニケーション」の価値も生んでいます。
強いのは「IP」ですよね。昨年末、『となりのトトロ』が中国の映画館で上映されました。あれって、30年以上前の作品なんですよ。ところがそれが、かなりの興行収入をたたき出している。時間が経っても色あせないのが「IP」。これにシフトしないと、結局動画を作るリソースとそこから得られる収益のバランスが取れないんです。(続)
トトロに次いで『千と千尋の神隠し』も中国で上映。18年前の映画なのに未だに価値があるって凄い
世の中の人は「@」と「#」しか見てない?
明石:加えて、世の中の人がどういう力学でコンテンツを見ているかというと、「@(アットマーク)」と「#(ハッシュタグ)」です。今の人たちは、ほとんどそれしか見ていません。特に大事なのは、アットマーク。要は、“誰が発信していて、誰が出ているのか”ということです。
先ほど「腹筋の動画」が例にでましたが、それってすでに世界中に何百万件とあるわけです。腹筋のハッシュタグがあったとして、その中で誰が発信しているのか(アットマーク)が重要。
個人的には、最近「のがチャンネル」がすごい好きなんですよね(笑)。ぼくなら、せっかく腹筋の動画を見るなら、のがちゃんを見ます。(続)
明石:つまり、動画としてのクオリティ以上に、誰がやっているかが大事なんです。これはテキストの世界でも同様のことが言えるでしょう。
例えば、「新R25」って人が出る企画しかやってないじゃないですか。「顔を出していない」「取材対象が明確じゃない」似たような記事は溢れていますが、新R25はそこを変えました。
そう考えると、みなさん(ライターや編集者)はいずれ、顔を出さないとダメな時代が来るのではないでしょうか。医療記事にしても、顔を出していないより、「朽木さんが書いていること」が求められる時代のように思います。
ライター・記者には「持続可能性」が必要だ
朽木:「アットマーク」の話はその通りだと思います。
ただ、私自身「『個』を売るタイプ」で始めた人間ではありますが、どっちかというとそこに(個でやることに)限界を感じたので、「もっとチームでやっていきたい」という想いがあり、今の会社に入りました。
ライターのキャリアの話になりますが、個人的にはライターでやるならば、「個」が付いてないほうがよっぽどやりやすいというシーンが増えてきたように思いますし、私自身、名前を外に出さずにやっている仕事もあります。
要は、しっかりと「何ができるか」という強みがあれば、この世界でも生きていけるということです。とはいえ、その場合には、(個・アットマークではなく)ブランドにのっかったり、メディアに乗っかったり、という形にはなりますが。
ただし、ずっと個人で続けることは難しい。これからは、若い人でそういうことができる人が増えてくると思いますし、増えてきてほしいとも思います。
そうなった時にも、自分の生活が守れるような「持続的なメディア運営」をしていきたいと思ってます。
「ライターのキャリア」と「動画」
――今日はテキスト中心で活躍されている方が多くいらっしゃっています。先ほども話しましたが、「動画に興味はあるけど、できていない」という人も多いことでしょう。今、動画の現場で編集者・ライターが活躍できる余地はあるのでしょうか?
明石:むしろ、動画業界で考えると、その領域の人材不足が課題だと思っています。
動画を一定基準以上のクオリティで創るためには分業化が必須です。先ほど話に出たYoutuberなんかも、チーム活動している人が多いですよね。撮影をする人、構成を書く人、編集する人、そしてパフォーマンスをする人――など、結構分業化が進んでいます。
動画を作るためには、まず構成を書く必要があります。つまりは、文字を書かないことには動画が始まらないんです。その構成を書ける人が不足してるんですよね。
ですが、テレビ業界は少し違います。テレビ業界では、「放送作家になりたい」という若者が多いためです。ただ、放送作家が作る構成は、テレビの尺にしか合いません。
テレビに合わせた尺で作るのと、(インターネット的な)3分~5分とかで作るのとでは、能力が異なります。
Youtubeでも、ツイッターでも、Tiktokでもいいので、そうした尺に合わせたネタを、しっかりとリサーチして書ける人、提供する人が出てくると、僕らのように動画を取って編集する人はめちゃくちゃ助かります。個人でやっていうライターは、そこに活路があるような気はしますね。
――編集の立場から聞いても、その話は興味深いです。我々は記事の編集はしていますが、動画の編集・撮影はできませんから
日西:確かに、前職では動画コンテンツを作るにあたって、構成を書いている人たちはいましたし、その人たちの動きが肝になっていました。絵コンテほどではありませんが、それに近いものを作っていました。
動画を作るときの考え方って、記事を作るときのソレと似ているかもしれません。尺にはよりますが、例えば「私が美人になる化粧をする」という動画を作るうえで、その構成を考えるのと同じことを記事でしているなぁと。普通の記事でも中にちょっとした動画があることもありますし、広く「ストーリーを作る」という点では、一緒のような気もします。
――「動画」は今、多くの編集者・ライターが気になっているトピックスかと思います。この会場にいる、テキストメインで活躍されている人が、「動画」に関わるとするならばどうすればよいのでしょうか?
明石:僕らの業界には、「字コンテ」というものがあります。絵で表現できることは絵に任せて、テロップに残すよなものは言葉に頼ります。
僕らは元々は、そこも内省でやっていたのですが、それをやり続けるのは限界かも、と思うタイミングがありました。
そこで、今は「動画クリエイターのネットワーク化」に取り組んでいます。例えば、「サッカーが好きなクリエイター」とかを集めておいて、当てはまる企画が出たときに任せるとか。
そこに、単純にビデオグラファーだけではなく編集者やライターを集めるなどすると、動画づくりがスマートになっていくように思います。
以上、トークセッションで語られた「ライターのキャリア」と「動画」についての話を紹介しました。セッションはこの後も続きましたが、長くなったので、ここまで。ありがとうございました。
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