「もったいない」をカッコよくしてみた話
はじめに
訪日外国人のかたに和食を教える料理教室が、盛況のようです。
そうした料理教室で多くの外国人が感銘を受けることの1つが、
「食材を残さず料理する姿勢」
だそうです。
べつの言い方をすると、「もったいない」精神。
「もったいない」は和食の心でもあります。
たとえば
ヒラメはエンガワも調理して食べる
ウナギは骨も調理して食べる
など。
そのほか、湯葉も外国人の目には「捨てるもの」と映るかもしれませんが、日本ではこの「温めた豆乳にできる膜」が美食の食材にまで高められています。
いっぽう、これと矛盾するようですが…。
家庭や飲食店での食べ残し、食品メーカーで出てくる残り物のことを「食品ロス」「食品残渣」などと言いますね。
食育の大きな課題でもある。
そして残念ながら、日本は世界でも最も「食品ロス」「食品残渣」の多い国の1つです。
というわけで今回は、「残さない」「捨てない」を目指す「ゼロウェイスト・クッキング」について。
ゼロウェイスト・クッキングとは
ある意味、「料理のもったいない」をカッコよくいうと、「ゼロウェイスト・クッキングです。
ゼロウェイスト・クッキング(Zero Waste Cooking)とは、
「食材を無駄にせず、可能なかぎり捨てない料理スタイル」
のこと。
「ゼロウェイスト・クッキング」という言葉は最近のものですが、食べるものを大切に扱おうという考え方や態度は、昔からありましたね。
そもそも、
食材の保存技術が発達した
発酵食品が誕生した
いずれも、食べるものを大切にしようとしたからできたこと。
けれど、現代的な意味でのゼロウェイスト・クッキングが体系化されたのは2000年代以降です。
ゼロウェイスト・クッキングは以下の基本原則に基づいています:
食材を完全利用:野菜の皮や茎、魚の骨や内臓など、通常は廃棄されがちな部位も積極的に活用する
買物は計画的に:必要な分量だけを購入し、過剰な在庫を避ける
適切に保存:食材の鮮度を長く保つための保存技術を習得し、実践する
創造的に調理:余った食材や調理副産物を新たな料理に再利用する
コンポスト化:避けられない有機廃棄物は堆肥化し、土壌に還元する
ゼロウェイスト・クッキングを楽しむための工夫とアイデア
以上、少々堅苦しく述べましたが、ゼロウェイスト・クッキングはべつにしかめっ面して実践するものではありません。
ゼロウェイスト・クッキングを、単なる環境保護活動にとどめず、創造力を刺激する「調理の楽しみ」として捉えたいですね。
以下に、ゼロウェイスト・クッキングを楽しむための工夫やアイデアを紹介します。
食材の完全利用テクニック
野菜の皮と茎の活用
野菜チップス:にんじんやじゃがいもの皮を洗浄し、オリーブオイルとスパイスで味付けして低温オーブンで乾燥させる。栄養価の高いスナックに。
ペースト:ブロッコリーの茎やカリフラワーの葉を刻んでペーストに。ナッツやチーズ、オリーブオイルと合わせてブレンダーにかけるだけで、独特の風味のペーストが完成。
魚や肉の副産物の利用
魚のアラ出汁:魚の頭や骨を使って出汁を取り、リゾットやパエリアの素として活用。
チャーシュー油:焼豚を作る際に出る脂を濾して保存。炒め物や餃子のタレに使用すると、深い旨味が加わる。
発酵と保存の技術
自家製発酵食品
コンブチャ(※):紅茶と砂糖、スコビー菌を使って自家製コンブチャを作る。果物の皮や茶葉を再利用してフレーバーを付ける。
ぬか漬け:米ぬかを使った伝統的な漬物床を作り、季節の野菜を漬ける。野菜の端切れも美味しく変身。
(※)日本の昆布茶ではありません。「コンブチャ」という別の飲み物です。
創造的な保存食
ハーブソルト:ハーブの茎や葉を細かく刻み、塩と混ぜてオーブンで乾燥させる。様々な料理の仕上げに使える万能調味料に。
フルーツビネガー:果物の皮や芯を酢に漬け込んで作る。サラダドレッシングやマリネの酸味付けに最適。
余り物の変身レシピ
野菜の端材スープ
様々な野菜の切れ端や皮を冷凍保存し、まとまったら出汁と共に煮込んでピューレ状にする。季節の移り変わりを感じられる、その日限りの特別なスープに。
パンのリメイク
パンプディング:固くなったパンを牛乳と卵、砂糖で煮込み、オーブンで焼く。デザートにもブランチにも。
クルトン:パンをサイコロ状に切り、オリーブオイルとハーブで味付けして焼く。サラダやスープのトッピングに。
循環型キッチンの構築
自家製堆肥:キッチンの一角に小型の堆肥化システムを設置。調理くずや食べ残しを堆肥化し、ハーブガーデンや家庭菜園の肥料として活用。
水の再利用:野菜や米を研いだ水を植物の水やりに使用。また、パスタを茹でた湯はスープのベースやソースの希釈に再利用。
創造的なメニュープランニング
食材連鎖レシピ
鶏づくし:一つの食材から派生する複数の料理を計画的に作る。例えば、丸鶏を使ってローストチキン→チキンサラダ→チキンスープの順に調理し、最後は骨でスープストックを作る。
季節限定の保存食作り:旬の食材が豊富な時期に保存食作りを楽しむ。梅ジャムやトマトソース、ピクルスなどを作り置きすることで、オフシーズンも旬の味を楽しめる。
コミュニティとの連携
食材交換会:近隣住民と余剰食材や自家製保存食の交換会を開催。多様な食材や調理法に触れる機会となり、フードロスも削減できる。
ゼロウェイスト・クッキング教室:自身の経験やテクニックを地域コミュニティで共有。世代を超えた交流の場となり、伝統的な食文化の継承にも貢献する。
こんな感じで工夫こらし、持続可能な食生活を楽しみながら、料理スキルを向上させ、さらには地域コミュニティとのつながりを深めることができたら、いいですよね。
ゼロウェイスト・クッキングは、単なる調理法を超えて、食を通じた豊かなライフスタイルの構築につながるというわけです。
ゼロウェイスト・クッキングをもっと楽しむための工夫とアイデア
ゼロウェイスト×世界の伝統料理
世界各地の伝統的な調理法や保存方法の多くが、実はゼロウェイストの理念と合致しています。
これらの方法を学び、取り入れることで、ゼロウェイスト・クッキングの実践をより豊かなものにできます。
イタリアのアクアパッツァ:魚を丸ごと調理する手法で、頭や骨まで使い切る。調理後の出汁は別の料理に活用できる。
日本の出汁の取り方:昆布と鰹節を使って出汁を取り、使用後の昆布は佃煮に、鰹節は furikake(ふりかけ)として再利用する。
メキシコのノパレス料理:サボテンの葉を食材として活用。通常は廃棄される部位を、独特の食感と栄養価を持つ料理に変換する。
世界の「ゼロウェイスト」ストーリー
各国・各地域に、その文化背景に応じたユニークなゼロウェイストのアプローチが存在します。
インドの伝統的ベジタリアン料理:ココナッツの殻を燃料として再利用。バナナの葉を食器代わりに使用し、使用後は堆肥化。
イタリア・トスカーナ地方のパンツァネッラ:古くなったパンを活用して作る伝統的なサラダ。パンのかけらに野菜と香草、ドレッシングを加えて作る。
韓国のキムチ:白菜の芯や大根の葉など、通常捨てられがちな部位も漬け込んで活用。発酵過程で独特の風味と栄養価を獲得する。
モロッコのタジン料理:低温でじっくり調理することで、通常は硬くて食べづらい野菜の茎や根も柔らかく仕上がり、食材を無駄なく使い切れる。
言い換えると、ゼロウェイスト・クッキングは伝統的な食文化へのリスペクトにもつながります。
ゼロウェイストが生む新しい味わい
ゼロウェイスト・クッキングの実践は、単なる廃棄物削減にとどまらず、新たな味わいや食感の発見につながる可能性を秘めています。
すなわち、これまで「食べられない」とされてきた部位を調理することで、思わぬ美味しさに出会えるかも!
野菜の皮や茎を使った新食感
ブロッコリーの茎:通常捨てられる茎をピクルスにすることで、シャキシャキとした食感と独特の風味を楽しめる。
カボチャの種:スパイスをまぶしてローストすることで、香ばしくて栄養価の高いスナックに変身。
魚の未利用部位の活用
魚の鱗:適切に処理した魚の鱗を揚げることで、ユニークな食感のチップスになる。
魚の白子:白子を使ったなめらかなムースは、高級料理の新たな可能性を開く。
果物の皮や芯の再発見
スイカの皮:通常捨てられるスイカの白い部分をピクルスにすることで、シャキシャキとした食感と爽やかな酸味を楽しめる。
リンゴの芯:リンゴの芯を使ったジャムは、独特の食感と濃厚な風味が特徴。
これらの新しい味わいや食感の発見は、料理に創造的なインスピレーションを与えます。
同時に、人々の食に対する認識を変え、「食べられる・食べられない」の境界線を再定義する機会ともなりますよね。
ゼロウェイスト・クッキングがもたらす新たな味覚体験は、未来の食文化を形作る重要な要素となるでしょう。
まとめ
ゼロウェイスト・クッキングは、
環境保護
伝統食文化へのリスペクト
創造的な料理
3つ全部を満たす、贅沢なアプローチです。
世界各地の伝統的な知恵を取り入れつつ、新たな味わいや食感を探求することで、持続可能性と美味しさの両立を目指しています。
今後、テクノロジーの発展や国際的な情報交換の促進により、さらに効果的で魅力的なゼロウェイスト・クッキングの方法が生み出されていくことでしょう。
この動きは、持続可能な食生活の構築に向けた重要な一歩であり、未来の食文化を形作る鍵となるはず。
私たち一人一人が、日々の料理の中でゼロウェイストの理念を意識し、創造的に実践していくことで、より豊かで持続可能な食の未来を築いていけるのです。
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