和食が「ドーナツ化」している説
食育日本食文化伝承協会さんから「和食のドーナツ化」について教わりました。
ここでシェアしたいと思います。
日本で起きていること
かつて日本食の知識は、
家庭内で親から子へ
社会の中で世代から世代へ
と、自然に受け継がれていました。
それが昭和後期、平成、令和と時代が移り行くにつれ、だんだんとそういうことが少なくなりましたね。
「ちゃんとしたご飯の炊きかた」
「ちゃんとした味噌汁の作りかた」
「ちゃんとした漬物の作りかた」
「季節・行事ごとに作る料理」
などを、親から習った記憶のない人がこれまでも増えていたのですが、そういう人たちが今度は親になります。
もはや、子供たちに教えることはできません。
自分たちも教わっていないのですから。
その結果、日本食の知識の伝承が多くの世帯で途切れているようです。
そんな中で、古き良き日本食の知識をどうやって守り伝えるか…。
親から子へと伝わらないのなら、小学校の家庭科の授業などでしっかりやってくれるかといえば、残念ながらそこまではやってくれません。
海外で起きていること
いっぽうで、海外に目を向けると、明るい側面もあります。
和食が世界から注目されていることです。
2013年には和食がユネスコの無形文化遺産になりましたね。
2015年に開かれたミラノ万博では、日本のパビリオンが来場者のあいだでダントツで人気だったようです。
2020年には猛暑のドバイで万博が開かれましたが、そこでも日本のパビリオン前には行列ができていたようです。
日本食への注目が高まった初期のころは、いわゆる「なんちゃって日本食」が世界各地に散見され、おもしろおかしく報道されたりしました。
なんちゃって日本食 タイプ①
「なんちゃって日本食」には、2種類のタイプがあります。
1つは、日本食が現地の人のアイデアで新しく改良されるパターン。
代表的な例は、言わずと知れたカリフォルニアロールでしょう。
味噌汁の具にチョコレートを入れる、というアイデアもありました。
この味噌汁チョコレート、当初は「トンデモ事例」として報道されましたが、じつは「意外に、うまい」という評価で、どうやら料理として定着したようです。
ブラジル流にアレンジされた、「テマケリア」と呼ばれる手巻き寿司があります。
魚、野菜、サラダ、チーズ、揚げ物、フルーツなどをライスに添え、海苔でいっぺんに巻きます。
ブラジル発の食べものですが、アメリカでも人気が定着している由。
これらは「いい感じになった、なんちゃって日本食」の例です。
なんちゃって日本食 タイプ②
もう1つのパターンは、「日本食」という看板を掲げれば客が来るという単純な理由で、日本食を作ったこともない人がネットや本で仕入れた知識で日本料理もどきを出すパターン。
これに関しては、やはり「その料理はやめてくれ」といいたいものが多いですね。
前者のカリフォルニアロールやチョコ味噌汁などとの違いは、
前者は美味しいけれども後者はあまり美味しくない。
後者は見た目もまあまあヒドイので食欲もわかない。
という点でしょう。
したがって、定着するとはなかなか思えません。
伝統的な日本食が求められはじめた
その後、年月も経つと、どうやら世界各国で
「なんかこれ、本当の日本食とは違うんじゃないか」
と気づく人が増えてきました。
「日本で食べる日本食に詳しい、目の肥えた(舌の肥えた)人」
も増えているようです。
その結果、グルメのあいだでは「なんちゃって日本食」はかなり淘汰されていると聞きます。
日本食がものめずらしい時代は過ぎ、伝統的な和食が海外でも求められているということなのでしょう。
ドーナツ化現象
日本の話に戻りますが、もはや今となっては昔みたいに
家庭内で親から子へ
社会の中で世代から世代へ
と、自然に受け継がれていくことは期待できないかもしれません。
期待できないと割りきって、別の「伝承手段」を模索するほうがよいのかも。
自国の料理や食文化が本国よりも外国のほうで人気があり、本国では伝承機会が減っている、といった傾向は、和食だけではないように見受けられます。
おそらく似たようなことが
フランスやイタリアの伝統料理
中国や韓国の伝統料理
東南アジア各国の伝統料理
中近東の伝統料理
などでも起きているように思います。
本国よりも外国のほうで人気があり、本国では伝承機会が減っている…
これを「ドーナツ化現象」とでも呼びたいと思います。
このギャップの中にも、これからの新しい食育活動のヒントがあるような気がします。
(参考)
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