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パンか米か。みんなどうする?
最近の食料自給率の様子を久しぶりにレビューしてみたい。
毎日の食事に慣れ親しんでいる私たちだが、日本の食料自給率は決して高いとはいえない。
皆さんもどこかで「もっと国産の食品を」と耳にした経験はあるのではないだろうか。
本稿では、現代日本の食料自給率の現状とその歴史的背景、また私たちができることについて考察したい。
食料自給率の現在地
食料自給率とは、食料の国内消費に対する国内生産の割合を示したもの。
私たちが食べたもののうちどの程度が国産なのかを表す数字だ。
日本の現在の食料自給率は、
カロリーベースで38パーセント
生産額ベースで63パーセント
となっている。
食料自給率についてわーわー騒いでいるのは、もっぱら自給率の低い国だ。
日本とか韓国とかイギリスとか。
こうした国々の食育に、食料自給率の問題意識は欠かせない。
一方、アメリカやオーストラリアのように食料生産がたっぷりあって輸出している国は、食料自給率への関心がわりと低い。
こうした国々の食育には、食料自給率の話はあまり登場しない。
むしろ肥満対策が食育の中心となる。
食料自給率の過去
江戸時代、日本は300年近く鎖国していた。
300年も鎖国できたことからわかるように、江戸時代の食料自給率は100パーセントを超えていた。
でなければ鎖国なんかとうてい無理。
それが今では40パーセントを割り込んでいる。
「100超え」がどうして「40切り」になったか。
食料自給率がこんなに違う大きな理由は、2つある。
人口
江戸時代の人口はいまの1/4だった。
そのくらいの人口であれば、当時の生産力でまかなうことができた。
いいかえれば、当時の生産力でまかなえる範囲内の人口にとどまっていた。
食事内容
現代人の食生活は欧米化しており、パン(小麦)やら肉やらをよく食べる。
小麦の多くは輸入されている。
日本人は昔からうどんを食べていたわけだから小麦だって江戸時代から国内で生産されていた。
けれども明治以降のパン食の拡大には対応できず、輸入に頼ることになる。
肉は国産も多いが、家畜が食べる飼料は輸入ものが圧倒的に多いため、純粋な国産とはいえない。
そのため、輸入飼料で育った家畜の肉は、食料自給率の計算では国産扱いしていない。
国の対策
下がった食料自給率は、どうにかしてまた上げなくてはならない。
でないと国として不安でしょうがない。
大昔の人々は、食料豊かな他国を侵略することでこの問題を解決しようとした。
だが現代人のすることではない。
日本政府はどう対処しているかというと、
キャンペーン
1つは「日本人はお米を食べよう」というキャンペーンを行っている。
国民のパン食の比率が減って米食にシフトすれば、食料自給率は上がる。
食料自給率が上がっていないことからわかるように、このキャンペーンはまだあまり効果をあげていない。
だが、効果をあげていないからといって、止めてしまっていいものではないだろう。
やり続けなければなるまい。
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もはやパンなのか
一見、奇妙に思えるかもしれないが、日本政府は小麦の国内生産を増やそうとしている。
日本人の「パン食民」が米食に戻らないなら、いっそのことパン食を前提に自給率を上げようという算段だ。
パンの材料となる小麦を輸入から国内生産に変えることで、食料自給率は上がる。
これに関してはそれなりに進展があり、国内の小麦の作付面積は増えているようだ。
だが、何となくもやもやした感じがするのは、筆者だけではないだろう。
なお、ここでいう「日本政府」とはおもに農林水産省のことを指す。
食料自給率問題は、農林水産省の管轄となっている。
私たちができること
下がった食料自給率は、どうにかしてまた上げなくてはならない。
国民として何ができるかだが、食育でよく行われるのは「米食しよう」というお説教だ。
極端な話、明日から国民全員がパン食を一切やめて米食になれば、食料自給率の問題は一夜にして解決する。
残念ながらそんな奇跡はない。
だからといって「米食のお説教」をやめるべきではない。
これはこれで大切なことだ。
他にも、以下のようなことが考えられる。
旬の食べ物を選ぶ:基本的に「旬」という概念は国産のものにしか言わないので、「旬のものを食べる」はイコール国産を食べるになる。
地元でとれる食材を意識して買う。
食べ残しを減らす:食べ残しは食料自給率に直接影響する。食べ残しを減らすことで、必要な食料の量を減らす。
食料自給率アップを目指す取り組みを知り、試し、応援する:こうした取り組みには、国が行うものだけでなく、自治体が行っているもの、民間団体が実施しているもの等、さまざまなものがある。
また、こうした諸策は、
「消費者と生産者が仲良くできる環境」
を整えることで、いちどに進展する可能性がある。
まとめ
食料自給率を高めるという課題は単に政府だけのものではなく、私たち一人一人の生活選択や意識に端を発するものだ。
日本の食文化を守りつつ、国産の食材を支持し、地域との連携を深め、食の安全を確保する行動は、自給率向上につなががる。
江戸時代から大きく低下した食料自給率を見つめ直し、私たちにできることを模索していくことが、未来の日本の食を豊かにするための一歩となる。