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現代の森
アクロス福岡をご存知だろうか。
「現代のラピュタ」と言っても過言ではない建築である。
(写真はネットより引用)
アクロス福岡は旧福岡県庁跡地に建設された。同じ旧県庁跡地にあたる敷地内には天神中央公園が隣接している。
基本構想は、アルゼンチンの建築家 エミリオ・アンバース。
冒頭の写真は、アンバース氏の原案スケッチである。建築が階段状になっており、その階段は森になっている。
実施設計は組織事務所大手の日本設計と、スーパーゼネコン大手の竹中工務店である。実施設計とは基本構想をもとに、実際につくるための図面を作成する作業である。
(上写真はネットより引用)
発想したアンバース氏はもちろん偉大だ。しかし、アンバース氏のアイデアをほとんど変えることなく図面に落とし込んだ両者も同じくらい偉大である。
実施設計には相当な労力と人手を要したことが想像される。そのエネルギーが結晶化し、空間の密度を生んでいる。
上2枚は最近撮影した。もはや森である。ガラスの面も含めて、建物が全て木で覆われたら絶対に面白いのだが。
現代は新築時に木を植えるにしても、まるですり傷にぬり薬をぬるように、ちょこっと植えて、それで終わりである。
それに比べて、アクロス福岡は木と建物が一体となっている。雨漏りの心配はもちろんあるだろうが、木の遮蔽効果による断熱がかなり期待できる。
環境問題もはや待ったなしの状態まできている。そして、日本は高齢化社会で人口も減少の一途をたどっている。経済も衰退傾向である。そんな時代を鑑みると、巨大な建築はもはや必要ないのではないかと感じる。
しかし、スケールの大きい建築の魅力も捨てがたい。
これからの都市がどのようになっていくのか、はっきりとしたことはよくわからないが、何千年もの歴史のある「都市」が突然なくなることはないと思う。
しかし、これまでのような「スクラップアンドビルド」といった風潮はなくなると思う。いや、無くさなくてはならない。
そんな中で、アクロス福岡はきっとひとつのモデルケースになっていくだろう。