うしろ頭にひかれる謎3
この記事は、なぞらじ第2回「うしろ頭にひかれる謎3」のnote版(文字起こし)です。ボーロとゲストのわたあめさんが「ひとのうしろ頭から醸し出される独特の魅力」について迫ります。音声で聞きたいという方は、ぜひ動画をご覧ください!(文字起こしをしてくださったぶたろうさんに多謝!)
うしろ頭で耳が隠れていると惹かれないのはなぜ?
わたあめ:でも、なんで耳が隠れてたらだめなんだろう?
ボーロ:あー本当だ。なんでだろうね? さっき出てきた例の髪の長い女の人、耳が見えなかったら、守ってあげようっていう感情は薄れるかな。
わたあめ:叩いたらいけないけど、叩いたら反撃してこられそうな感じがするからか。
ボーロ:そういう予感はもつね、なんだろう。
わたあめ:髪の毛は頭を守るものじゃないですか、もともと? だから、(耳が髪の毛で隠れている人のうしろ姿には)無防備感が欠けるのかもしれない。
ボーロ:頭を守る髪の毛がかぶさってるから。
わたあめ:そうそうそう。
ボーロ:そうするとさ、究極は......スキンヘッドの人のうしろ頭が究極になっちゃう? 究極に惹かれる。
わたあめ:そっか......でも、襟足がかわいいっていう説もあるじゃないですか。
ボーロ:そうなんだよねえ。ぼくは、動物も襟足がないっちゃないけど、なんかあるんだよね。首のところにかぶさってる毛があるんだよね、猫とか犬とか。ああいうのがあったほうがたまんないかな。
わたあめ:うん、あの動く感じ。首を動かすと、髪の毛っていうか、毛が動く感じ。
ボーロ:食べてると、動いてるよね。
わたあめ:なんだろうこれは。
ボーロ:なんだろうね、これは。弱いところを見せてるっていうのは、理由の一部って感じはするけど。それだけだと説明がつかないし。その理由で生じてるこの感情はなんだろうって考えると、なんなのだろうか。
わたあめ:なんなのだろうか。
ボーロ:わたあめさんは耳とか襟足もわかってくれたけど、そんな感じ?
わたあめ:そうですね、耳。丸い感じがいいのかな? 四角い頭ってかわいいのかな、うしろ頭が?
ボーロ:四角っぽいうしろ頭のおじさんっているよね。どうですか?
わたあめ:ぐふふ、たしかに。
ボーロ:それはどうですか? あまり惹かれないですか?
わたあめ:おじさんのうしろ頭だと、なんか惹かれる気がするんですよね。
ボーロ:おじさんのうしろ頭ってなんだか漂ってるよね、いいものがね。
わたあめ:そう。おじさんのうしろ頭ってなんで良いんだろう?
ボーロ:おじさんのうしろ頭はね、電車でも押されたりしても、うしろ頭だったら全然許せる感じがして。
わたあめ:おじさんのうしろ頭と動物のうしろ頭に共通してるものってなんですかね?
ボーロ:動物っぽさあるもんね。何が共通してますかね? 共通するものあるよね、なんだろう、動物っぽさあるもんね、おじさんのうしろ頭って。何が共通してますかね。
わたあめ:あんまり整えられてない。無造作。
ボーロ:あーあんまりかっちり決まってると感じないかもしれないね。無造作?
わたあめ:それが共通点かな。
ボーロ:それが共通点か。
わたあめ:それ、共通してますね。髪の毛とかが整髪料とかできれいに整えられてると......いや、かわいいって思うかもしれない。
ボーロ:ぼくも今思った(笑)。動物の頭も整髪料で整えたら、かわいいかもね、うしろ頭。いじらしくなっちゃうかもしれない。
わたあめ:うーん。えー、むずかしいなあ。ひとつ言えることは目が見えちゃいけないって思って。
ボーロ:うんうんうんうん。おじさんのメガネとかがみえるときがあるじゃない、うしろ姿だと? あれはどう?
わたあめ:うーん、えーわかんない。うしろ姿からメガネがみえるとき......でも、たぶん、変わんない気がするな。
ボーロ:メガネのフレームが見えるか見えないかは関係なさそう。でも、目は見えちゃいけない気がする。
わたあめ:わたしがいることを気づかれたらいけない感じ。わたしがいることを、その人の意識の、そのときの今の意識のなかに、わたしが存在しちゃいけない感じがする。
ボーロ:さっき、気づいてないとか意識してないとか言ってたけど、そういう感じね。それもわかっちゃうんだよねー。自分のこと全然気づいてないでうしろ頭をみせていたりすると。子どもの頃におばあちゃんにすごくそれを感じたんだよね。おばあちゃん髪短くて、クルクルしててさ。よくあるおばあちゃんの髪型みたいなさ。で、ぼくのことをぜんぜん意識しないで、立ったり歩いたりして。おばあちゃんのうしろ頭が見えると、なんとも言えない何か、長生きしてほしいなあ、って。すごい強い気持ちを持ってたのを覚えてる。
わたあめ:それでなんか、甘いお菓子とかをひっつかんで「これあげる」とか「これあげる」とか言われそうな?
ボーロ:え、どういうこと、どういこと? もう一回。
わたあめ:おばあちゃんのうしろ頭がかわいい・惹かれちゃう理由のひとつか延長に、おばあちゃんって甘いお菓子とかを突然つかんで、うしろをバッと振り返って、「これ食べな」って言いそう。
ボーロ:すごい、いま映像が浮かんだ。二コマ漫画みたいな映像が浮かんだ。
わたあめ:わたしがうしろ頭を見つめてたことなんて、ぜんぜん思いもしなさそうな感じ、おばあちゃん。
ボーロ:そうそう、全然そんなこと思っていなさそうが良いよね、おばあちゃん。
わたあめ:完全に自分の世界に入ってるっていうのが良いのかな。その人とか、その動物とかが、わたしに関係ない、ぜんぜん関係ない世界を見つめてる感じが、うしろ頭からわかる、目をみてないけど。
ボーロ:わかるね、夢中になって食べてるなあ、とかね。わたあめさんの言葉だと「自分の世界に入ってる」感じ? というと、ふと思い出したのは、すごい夢中になって人が何かしてるとさ、口が変な形になったりするじゃん。わかる?
わたあめ:えー?
ボーロ:ひとが夢中になって字を書いたり、手芸を夢中になったり、夢中になって楽器を弾いたりしてると、口が変な形になるじゃん。
わたあめ:言ってること、なんかわかる。
ボーロ:あれもなんかね、うしろ頭に似た愛おしさをぼく、感じちゃうかもしれない。自分の世界に入ってるっていうことと関係があるからかもしれない。
わたあめ:そうか、なるほど。
ボーロ:話が変わっちゃうかもしれないけど、目が見えちゃいけないとか気づいちゃいけないとかさ、うしろ頭って、目とかそういうものの逆? 逆っていう説はどう?
わたあめ:あー。
ボーロ:よくさ、倫理とか考えるときに、人間とは何か、人間にとってよいとは何か、他者にとって良いとは何かの倫理を考えると、他者の顔がね、倫理のきっかけになったりするって言ったりするじゃないですか。でも、本当は逆で、顔の逆、逆顔? 目で訴えかけるとかもわかるんだけど、そうじゃない裏の倫理があるのだ、と。うしろ頭の。目とか眼差しとか表情じゃなくてね。
わたあめ:目ってすごく強いですよね、顔のなかでね。訴えかけ方がね。
ボーロ:目だよね、目は強いよね。
わたあめ:目って、こっちに意識向いてるって感じがすごくする。
ボーロ:口もあるけど、鼻も顔にはついてるけどね、目だよね。こっちを見てるな、とか。こっちを見て自分のことどう思ってるんだろう、とか。口が下がってたりもするけど、目。目が自分のことを気づいてる、意識してる感じがするね。
わたあめ:それに比べると......でも、うしろ頭もなんか訴えかけてるんですよ、何かを。うしろ頭の訴えかけ方って目とは全然ちがうし、口と鼻ともちがう。口と鼻はただついてるだけって感じがする。でも、うしろ頭は、本当にさっきボーロさんが言ってた目の逆、逆の訴えかけ方をしている気がする。
ボーロ:何を訴えてるんだろう? 目と逆のものだとしたら、目が何を訴えてるかっていうほうから考えても良いかもしれないし。
わたあめ:目は強さを訴えてる感じがする。
ボーロ:弱々しい目つきでもそうだって言えるってこと?
わたあめ:弱々しい目つきは、「わたしは弱々しいです」って言い張ってる気がする。
ボーロ:なんか主張してる感じ? 「わたしはこうです」って。
わたあめ:うんうん。でも、うしろ頭は主張がない。主張がないけど、何かを訴えている。
ボーロ:主張じゃなくて。「わたしはこうです」とかじゃなくて。何を訴えてるんだろう。
わたあめ:うしろ頭は人によって違ったりしなくて、うしろ頭の訴えは、すべてのうしろ頭が同じ訴えをしている気がする。
ボーロ:目はいろんな種類のことを訴えかけてくるけど、ということですか?
わたあめ:うん、うんうん。
ボーロ:何を訴えてるんだろう? それ、例えば弱さとかって言っちゃたらだめ? 弱さを訴えてる?
わたあめ:弱さというか、健気さとか。なんだろうね、これ。
ボーロ:健気さを醸し出してるとかじゃなくて、訴えてる? 主張じゃなくて。
わたあめ:言葉でいうのがすごく難しいのが、訴えてるっていうよりは、目は何かを主張しているけど、うしろ頭はその逆って感じで、何かが出ている? 何かを表している、表現している? これ、ちょっとまた考え方がちがうかもしれないけど、うしろ頭から醸し出されてるものは、頭の前の側、顔側の主張してることと連動しているんだろうか? それとも完全に別なもの(存在)なのか?
ボーロ:それはうしろ頭がみえてるときに、そのときにどういう顔をしているかが関係あるかどうかっていうこと?
わたあめ:そうですね。そのときの目とかの主張、目がどういうことを主張しているかが、うしろ頭に現れる何かと関連するのだろうか。
ボーロ:え、どういうことだろう? もうちょっとなんか。
わたあめ:えっと、うしろ頭って今まで話してきたことでは、うしろ頭の感じ、わたしたちが感じるかわいさとか健気さとかそういうものがあるって話してきたけど、顔側のことを話して、目が何かを訴えるということを話したときに、わたしたちの顔は、前と後ろで別個のものを持っているのか、それとも顔側が主張しているものは、うしろ頭に何か影響しているのか?
ボーロ:それ、すごいね。すごいね、その問いは。
わたあめ:つながっている感じはするんですけど、前と後ろだから。つながっててほしいのかもしれない。
ボーロ:でも、本当はまったく関係なくて別のものが前と後ろでついてるだけかもしれない。面白いね。どっちだろう? 連動してる?
わたあめ:連動しているのかな? 目が表現しようとしていることと、わたしたちが......ここでもっと問題が難しくなってきたんですけど、わたしたちが表現しようとしていることは、つながっているんだろうか?
ボーロ:わーえー? そもそも、目はじゃあどうなんだっていう感じ? わたしたちの表現しようとしていることと目が主張していることは関係があるんだろうかって言った?
わたあめ:そう。目は主張、強いっていう話をさっきしたじゃないですか。強い、なんか主張しようとしている。でも、常にわたしたちは意識して目を動かしてるわけじゃないし、本読んでるときはぼーっとした目をしてるし。でも、目って本を読んでぼーっとしてるときでも、他のひとにとっては......
ボーロ:あーー! 主張してるように感じられることが多いかも。本を読んでる人でも、この人、話しかけないでって感じかな、とかね。
わたあめ:目で目は勝手に主張してる感じ。
ボーロ:そう言えば、そういうときあるね、たしかに。その人の主張しようと思ってるるものじゃなくても、主張してるのか、目は。それも不思議になってきた。
わたあめ:そしたら、その目の主張と、うしろ頭のつながりがあるのかなあ?
ボーロ:どうなんだろうね、目の主張を自分で気づいてなくても良いってことになるでしょ?
わたあめ:そっか。
ボーロ:はあ、すげーむずかしいぞ。その目の主張の仕方? 目もうしろ頭も本人の意思と関係なく何かを主張してるとしたら、主張の仕方が違う気がするんだよね。あ、そっか、うしろ頭に関しては、主張ってことは言わなかったのか。なんか訴えてる。
わたあめ:主張っていうか、なんか訴えてる。
ボーロ:うんうんうんうん。なんか出方が違う。
わたあめ:うーん、うん。目は文章を言葉で書いてる感じ。うしろ頭は絵の具で色を塗ってる感じ。
ボーロ:わたあめさんが言おうとしてることと違ったら言ってほしいんだけど、目が訴えてることって言葉に置き換えやすいような感じがするんだよね。後ろ頭に比べればね。ということなのかな?
わたあめ:はい、そうそう、そうです。
ボーロ:怯えてる目とかあるよね、怯えてる目はできますか?
わたあめ:怯えてる目?(やってみる)ちょっと違う?
ボーロ:目だけだよ。目だけで怯えてる目......むずかしいね。
わたあめ:むずかしい。
ボーロ:自分の意思とは関係なくやっちゃうから。にもかかわらず、言葉になおしやすいのかもしれない。かたや、後ろ頭については、言葉にしにくいしね。自分の意思とは関係ない、出ちゃってる。その、ふたつ今考えられるような感じがして、何が出ちゃってるのかという謎と、どう出ちゃってるのかっていう出方に関して、このふたつの謎に関して、目の出方とか目が何を比べてみたいなって思うんですが、どうですか?
つづく