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声を揃える”から始めない”合唱(1/2)

声をひとつに揃える?

合唱を始めて今年で10年になるが、改めて考えると「合唱」って不思議だ。それぞれ違う声や想いを持っている人たちが、声を合わせて歌う。

なんてめんどくさい事をしているんだろう。「一人の声に聴こえるように」「みんなで声を揃えて」なんて指導者から言われちゃうし...。

そう考えているうちに、ある重要なことに気づいてしまった。

「声をひとつに揃えたいなら、カウンターテノールって必要なくない...?」

そう、自己紹介にも描いた通り、わたしはアンサンブルグループで「カウンターテナー」(=女声に相当する高音域を歌う男性パート)として活動する合唱歌手だ。そのため、女性に混じって彼女らと同じ声部(パート)を歌うことが多いのである。

2022年9月に行われたAcappelLabo Concert Vol.2演奏会の様子。毛先だけ染め残っとる。
(Photo by Hiromi Matsuoka)

そのとき「声を揃えて」と言われてしまうと、ちょっとだけ肩身が狭くなる感じがする。
…ほんのちょっとだけ、だけど。

これがきっかけで、「そもそも俺ってなんで合唱が好きなんだっけ?」と考え始めた。

「みんな声は違う」から始めてみる

そんなとき、ふと目に入ったのが公共哲学の本だ。

社会に参画するひとりひとりは、異なる利害・関心(interest)をもち、それぞれにとって必要なことを追求します。ただ、これじたいはネガティブなことではなく、むしろロールズは社会の構成員のニーズがおのおの違っている━すなわち多様である━ということをポジティブにとらえ、その点をこそ重視しています。

朱喜哲『公正〈フェアネス〉を乗りこなす』p.43

つまり、何をよいと思うかは人それぞれに違うんだから、そこを社会を営むときの出発点にしようよ、と政治哲学者のロールズさんは主張しているのである。

これ、合唱にも言えるかもしれない。

最初から「声を揃える」を目指すから息苦しくなっちゃうんだ。どんな声や歌い方をしているか/よいと思うかは人それぞれに違う。
カウンターテノールだから、じゃない。みんなそれぞれがオリジナルの声を持っている。

「『声を揃える』はいったん置いておいて、『みんな声は違う』を出発点にして合唱をしていこうよ。だから、君はカウンターテノールのままでいてもいいんだよ。」

ロールズさんがそう語りかけ、わたしの肩の力をふっと抜いてくれた。また肩身が狭くなったらロールズさんに肩をマッサージしてもらおうかな。


演奏会出演情報


・2024年11月28日(木)19:15開演|AcappelLabo
クラシカルなクリスマスの宗教音楽とポップなクリスマスソングの両方を楽しめてしまう、ちょっと早めの贅沢なクリスマスコンサートです!


・2024年12月6日(金)19:00開演|AcappelLabo(チケット完売)
日本オルガン界の第一人者である冨田一樹さん、日本の室内楽、オーケストラ界で活躍されるヴァイオリニスト﨑谷直人さんとの共演です!!
パイプオルガン、ヴァイオリン、弦楽四重奏、そしてヴォーカル・アンサンブルを一気に楽しめる機会は滅多にないと思います!


・2025年2月2日(日)14:00開演|女声アンサンブル八重桜
さっきnoteに貼った演奏をしていた団体です!
「女声」アンサンブルですが実は8人中3人が男性(カウンターテナー)という、ちょっと変わったグループです。
「女声を歌えるのは女性だけ」という価値観が変わるかもしれません。


※10th concertの出演は未定です

・2025年2月20日(木)|vocalconsort initium
グループ名の”initium”はラテン語で「はじまり」を意味しています。
「合唱音楽はこうあるべき」に捉われず、作曲家がその音を生み出した音楽の「はじまり」に寄り添うスタンスが魅力的なグループです!


・2025年3月16日(日)14:00開演|emulsion
「バーバーショップ」と呼ばれる演奏スタイルで、とにかく気持ちいいハモりを追求しています。見ても聴いても楽しい!

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