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「どっちなんだい!?」世界ではじめて乾電池を発明した男

鉄鋼王アンドリュー・カーネギー、発明王トーマス・エジソン、喜劇王チャールズ・チャップリン、クイズ王伊沢拓司……。

歴史上「〇〇王」と呼ばれる人物は数多く存在していますが、今回は「乾電池王」についてのお話です。

 悔しさが発明の原動力

乾電池は明治時代にはじめて登場し、今もなお日常生活のさまざまな場面で活躍しています。我が家でも、子供のオモチャや目覚まし時計、テレビ・エアコンのリモコンなどで使っているので、日常のマストアイテムです。

その乾電池を世界に先駆けて発明したのが日本人だということをご存じでしょうか?

発明者は屋井やい先蔵さきぞうという人物です。

「乾電池王」屋井先蔵(Wikipediaより)

先蔵は、幕末の文久3(1863)年、長岡藩(新潟県長岡市)の藩士の子として生まれました。幼いころから機械が大好きで、少年時代に長岡や東京の時計店で働きながら時計の知識・技術を身につけたそうです。

その後、東京物理学校(現東京理科大学)に通って理学一般の知識を学び、さらに東京職工学校(現東京工業大学)への入学を試みたのですが、試験にわずか5分遅刻したことから受験資格を失ってしまいます。

もっと正確な時計があればこんな不幸な目にあわずにすんだのに――。

この悔しさが先蔵の発明の原動力となりました。

世界初の乾電池を発明! でも、お金がなくて……

受験に失敗した先蔵は、会社勤めをしながら独自に研究を重ね、明治18(1875)年、23歳の時に電池で正確に動く「連続電気時計」の発明に成功します。ちなみに、これが電気に関する日本の特許第一号です。

しかし、この連続電気時計に使われていた電池は液体式のもので、冬場には凍結防止の手入れをしなければならないなど、何かと手間のかかるものでした。加えて、薬品が染み出して金具が腐食するという問題点もありました。

そこで先蔵は、メンテナンスのいらない、手軽に使える電池の開発を試みます。

こうして明治20(1887)年に完成したのが、世界初となる乾電池です(正確な発明時期は定かではなく1885年とも)。

完成にいたるまでの間、先蔵は学者にも助言を仰ぎながら、昼は会社で働き、夜は研究のために3時間しか眠らない日々を送っていたと言います。

ただ、当時の先蔵にはお金がなく、すぐに特許申請の費用を捻出できなかったため、日本における乾電池の特許第一号は、高橋市三郎という通信省の電気技師が取得しました。先蔵が特許を取得できたのは明治26(1893)年のことです。

万博と戦争で「乾電池王」誕生

先蔵が発明した「屋井乾電池」は、当初まったく売れなかったのですが、やがて東京帝国大学理学部の先生の目にとまり、地震計の電源として使用されることになりました。そして、明治26(1893)年のシカゴ万博にその地震計が出品されると、地震計以上に乾電池が世界の注目を集めることになります。

さらに、翌年には日清戦争が勃発したことで、陸軍の通信機の電源として大量に注文が舞い込み、「屋井乾電池」は不動の地位を獲得します。従来の液体型の電池とちがい、極寒の戦地でも凍結せずに使用できたことから「満州での勝利はひとえに乾電池によるもの」とまで報じられました。

こうしてその性能の高さが世に知れ渡った「屋井乾電池」は国内外でシェアを拡大。いつしか先蔵も「乾電池王」と呼ばれるようになります。

しかし、一方で後継者には恵まれず、先蔵が昭和2年(1927)に63歳で急逝すると、屋井乾電池もやがて世間から忘れ去られるようになりました。今日、「屋井先蔵」というワールドクラスの偉人が日本の人々にさえあまり知られていないのも、そうした理由からです。

えっ?……ちがうの?

ところで、最後の最後にちゃぶ台を返すようなことを言ってしまいますが、世界で最初に乾電池を開発したのは実は先蔵ではなく、カール・ガズナーというドイツ人科学者だとする見解もあります。というか、海外ではむしろカール・ガズナーのほうがメジャーなようです。

何というか、せっかくの乾電池特許第一号を他の人に奪われたり、栄えある「世界で初めて乾電池を発明した」という称号も立場が危うかったり……踏んだり蹴ったりです。ちなみに、「先蔵」の読み方も資料によっては「せんぞう」になっています。

もろもろ含めて、僕の脳内でなかやまきんに君が「どっちなんだい!?」と叫んでいます。

でも大丈夫。

誰が何と言おうと僕ら日本人にとっての乾電池王はまぎれもなく屋井先蔵ですし、クイズ王は伊沢拓司です。

「クイズ王」伊沢拓司
Author:とある男が授業をしてみた
Source:【リベンジ】伊沢君とセリフ対決した結果が衝撃だったwww
Date :23 September 2019


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