日本の伝統的な食文化、甘酒の魅力を現代に伝える
NSGグループが運営する糀甘酒専門店「古町糀製造所」が、2024年7月で創業15周年を迎えました。これを記念して、お客様の商品アイデアを集める「みんなの甘酒プロジェクト」を行い、SNSや店頭での投票などを経て開発、発売した「杏仁豆腐風甘酒」は好評を博しています。今回は、創業以来甘酒の魅力を発信し続けている古町糀製造所について紹介したいと思います。
江戸時代から日本人の健康に寄与してきた甘酒
株式会社古町糀製造所は、新潟の特産品であるお米と米糀を活用した事業を通して新潟を活性化させたいという想いの元、2009年に創業されました。今でこそ「糀」という言葉を見聞きする機会は増えましたが、創業当初はまだ一般的ではなく、また、昔ながらの飲み物というイメージを持たれることが多く、まだ広く一般的に親しまれているものではありませんでした。そのような中、2010年代初頭に糀ブームが起こり、米糀から作られた甘酒が健康意識の高い女性を中心に注目を集め、そして甘酒ブームへとつながりました。古町糀製造所もブームの火付け役の一翼を担い、現在では甘酒の美味しさや栄養価の高さが世間にも浸透し、人気が定着してきているようです。また、甘酒は米糀が糖化された状態であり、その栄養価の高さから飲む点滴とも呼ばれます。江戸時代には食の細くなる夏に好んで飲まれ、また出産前後の母親の間でも積極的に飲まれていたそうです。
このような甘酒の魅力を発信している古町糀製造所ですが、現在は小畑宏樹さんが代表取締役社長を務めています。小畑宏樹社長は、NSGグループの新卒採用における経営者養成コースの一期生として、2017年に株式会社NSGホールディングスに入社し、2021年に古町糀製造所の代表取締役社長に就任しました。「新潟県に縁の深い、米と酒造技術の掛け算によって生まれる糀の力を借りて、新潟県であればこそ生み出すことができる新しい価値をつくっていきたい」との想いを持って経営に取り組んでいます。
様々なコンセプトで新商品を開発
糀甘酒の原料となる米(農業)と米糀(醸造業)は、いずれも新潟県の重要な産業ですが、食生活の西洋化に伴い市場としては縮小傾向の業界です。古町糀製造所は、そのような業界の中においても、これらの素材を現代の消費傾向に合わせてアレンジしてお客様に提供することで甘酒に新たな価値を生み出しています。創業以来累計で30種類以上の新商品を開発しているそうです。例えば、春は越後姫、夏は茶豆、秋はいもジェンヌ、冬はルレクチェといったように、季節ごとに新潟県の農産品にフォーカスした商品は、季節商品としての定番化が検討されるほどに人気を集めています。いずれも甘酒それ自体の美味しさを残しながらも、新しい視点で甘酒を楽しんでいただきたい商品です。
創業15周年を迎え「みんなの甘酒プロジェクト」にチャレンジ
古町糀製造所は創業15周年を機に「新しいチャレンジ」というテーマを設定して、その一つとしてお客様の声を元に開発した「みんなの甘酒プロジェクト」を行いました。これまでも幅広いアレンジ商品を発売してきましたが、新商品を楽しみにされているお客様もいるようで、中には「今度はこういう甘酒を飲みたい」と商品アイデアを投げかけてくださる方もいたそうです。そこで、15周年という節目の年に、お客様の声を集めて新しい甘酒を開発し商品化することにしました。SNSで商品アイデアを公募し、重複を除いた個別の商品アイデア数は200件近くも集まりました。チーズケーキやアップルパイ、みたらし団子などお菓子に関するものが多かったそうです。最終選考として、「杏仁豆腐風甘酒」「青汁甘酒」「コーヒー甘酒」「サングリア風甘酒」の4案に絞り込まれ、SNSや店頭での投票の結果、「杏仁豆腐風甘酒」の商品化が決まりました。
また、「みんなの甘酒プロジェクト」に先駆けて、4月に今までとは違う位置づけの新商品が発売されています。それは、乾杯のシーンを彩るノンアルコールの乾杯用甘酒「甘杯(かんぱい)」です。この「甘杯」はコンセプトやラベル、パッケージデザインがこれまでとは異なります。年齢や体質、ライフスタイル、様々な違いを包み込む乾杯のための甘酒をコンセプトに開発されたそうです。こうした新しいチャレンジが、甘酒それ自体の美味しさはもちろん、消費者の皆さんに甘酒の新しい楽しみ方を広げていければと思います。
伝統的な和の食文化の魅力を新潟から全国へ拡げたい
古町糀製造所は、甘酒の新しい楽しみ方を提供することを通して、米や米糀といった日本の古き良き食文化を現代の消費者に伝え続けています。以前にこのコラムでご紹介した、今代司酒造、小川屋も同じようなコンセプトで伝統的な和の食文化を、日本中、そして世界中の人々に新しい切り口で楽しんでいただけるように取り組んでいます。250年以上の長い歴史のある今代司酒造、明治26年創業で120年以上の歴史のある小川屋に共通することは、伝統を守りつつも、新しいことに挑戦し続けることであり、これらのことが企業の永続には重要なことなのかもしれません。古町糀製造所も、今代司酒造や小川屋のように伝統的な和の食文化である甘酒の守るべきところは守りつつ、時代に合った楽しみ方にも絶えず挑戦することで、この先100年、200年と数多くのお客様に支持されるような企業となることを期待しています。 〆